「寺下さん、伝えてほしいことがあるんです」

 9月7日、今治との「伊予決戦」第2ラウンドを前に、報道陣へ公開された愛媛のトレーニング後。MF佐々木匠が珍しく神妙な表情で話しかけてきた。

 先月の弊コラムではMF横谷繁に関する14年前のエピソードを記したが、彼と筆者との付き合いも長い。

 佐々木との最初の出会いは2018年初頭の香川県高松市。J2大分に移籍したFW馬場賢治(現アパレルブランド『MIND PLUS』代表)やJ2岡山に移籍した仲間隼斗(現J1鹿島)に次ぐエースの期待を担い、当時J1の仙台からJ2だった讃岐に育成型期限付き移籍してきた時である。

 入団後最初のトレーニングで仙台のアカデミー組織をくまなく取材し、佐々木も小学校時代から取材している小林健志氏と筆者が旧知の仲であることを告げると、たちまち意気投合した筆者と佐々木。讃岐での在籍は1年間のみだったが、今でいうところの「ぶっちゃけトーク」的なコメントや、MF高木和正(現ベスフォートサッカースクール代表)らとの華麗な連携から奪ったビューティフルゴール。そして讃岐のJ3降格に涙していた姿は今でも目に焼き付いている。

 そして今年、仙台への退路を断った完全移籍で愛媛へやってきた佐々木は、「結婚して子どももできました」。生活面の変化ばかりでなくすべての部分で大きく成長している。ピッチ内では「トップ下が全責任を負う」と公言し、攻守に高い献身性を発揮。伊予決戦のリベンジは間違いなく「ボランチとセンターバックの間が空く傾向がある」(石丸清隆監督)今治の弱点に入り込み、ミドルシュートで先制点を奪った彼の働きなくしてはありえなかった。

 そして、讃岐在籍当時からサポーターと共闘する想いを人一倍語っていた彼。冒頭の「伝えてほしい」は、実はこんな言葉だった。

「僕らは誰1人J2復帰をあきらめてない。サポーターの皆さんもあきらめず一緒に闘ってください」

 佐々木匠の想いは残り10試合となったJ2復帰への確かな道筋となるはずだ。