荒稼ぎ

「そごう・西武」の労働組合が雇用維持と事業継続を求めて決行した百貨店ストは、無駄骨に終わった。一夜明けた9月1日、「セブン&アイ・ホールディングス」が米投資ファンド「フォートレス・インベスト・グループ」に子会社であるそごう・西武を売却したためだ。

 ***

 M&Aアナリストによると、

「フォートレスは8500万円でそごう・西武の株式を譲渡されたわけですが、買収資金としてメガバンク3行から総額2300億円のつなぎ融資を受けていました。セブン&アイは、それを元手にそごう・西武の負債などを一掃した。一方で、フォートレスは家電量販大手“ヨドバシホールディングス”に、西武池袋本店やそごう千葉店、西武渋谷店の土地や建物の一部、加えて、そごう・西武の子会社の株式を3000億円で売却しました」

 その売却代金を、つなぎ融資の返済に充てる段取りだった。さすがはハゲタカ、一瞬にして、差し引き700億円もの荒稼ぎを企てたのだ。買収が完了すると、「最大限の雇用維持に向け、セブン&アイとともにそごう・西武の経営陣を支援してまいります」とコメント。併せて、ヨドバシと連携し、今後、西武池袋本店を中心に店舗改装費用として600億円を投じることも明らかにした。

「当面、そごう・西武の全国10店舗は維持される見通しです。しかし、それがいつまで続くかは保証がありません」

百貨店離れ

 そもそも、セブン&アイがそごう・西武を子会社化したのは06年6月のこと。

「百貨店からスーパー、コンビニまでを網羅する戦略でした。そごう・西武を傘下に収めたセブン&アイは連結売上高で5兆3300億円を突破。イオンを抜き、小売業として首位の座に躍り出ました」

 しかし、消費者の百貨店離れは加速していった。1991年に、百貨店全体の売上高は9兆7130億円を記録したがバブル崩壊以降は減少続き。新型コロナの蔓延が始まった20年は、緊急事態宣言による営業時間の制限も加わり、4兆2204億円という低水準だった。

「そごう・西武は23年2月期まで4期連続の赤字で、経営不振を脱することができませんでした。セブン&アイの井阪隆一社長は大株主である米アクティビスト“バリューアクト”から切り離しを強硬に迫られた。挙げ句、昨年2月にそごう・西武の売却に向けた1次入札を実施しました。それには、“ゴールドマン・サックス”といった外資系投資銀行や投資ファンドなど10社以上が名乗りを上げたのです」

 最終的にセブン&アイから優先交渉権を得たのは、最高値の買収額を示したフォートレスだった。

「週刊新潮」2023年9月21日号「MONEY」欄の有料版では、フォートレスの目論見とそごう・西武の行く末について詳報する。

「週刊新潮」2023年9月21日号 掲載