6月24日、大塚家具の代表取締役会長にヤマダ電機の三嶋恒夫社長を内定したと発表した。取締役にもヤマダから3人を迎え入れるという。大塚家具がヤマダ家具になる布石と見る向きは多い。なにせ、6月19日に発表された、20年4月期の単独決算では77億円の赤字である。これは大塚久美子社長にとって4期連続、しかも過去最大の大赤字である。ところが、それでも彼女は、社長を辞めるつもりはサラサラないようで……。

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 まずは今期までの決算を見てみよう。

 今期の大塚家具は、これまでの12カ月決算と異なり、16カ月の変則決算だった。それゆえ、赤字を報じた新聞各紙も、過去と“単純比較はできない”と遠慮がちだ。だが、関係者はこう言うのだ。

「例年よりも4カ月も長い16カ月もありながら、売上が前期より25億円も落ちているという厳然とした事実があるわけです。売上が落ちているのですから赤字にもなりますよ」

 業績の落ち込みについて、決算短信でこう説明している。

《店舗販売につきましては、閉店による店舗数の減少と新築まとめ買い需要依存度の高い大型店における入店件数、接客件数の低迷、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防の観点から一部店舗を臨時休業及び営業時間短縮としたこと、また、政府及び各自治体からの外出自粛要請もあり、春の最需要期の取り込みが想定を大きく下回ったことにより売上は低調となりました。以上の結果、売上高は348億55百万円となりました》

「決算短信には、今期の取り組みとして“リアルからバーチャルへの領域拡大の取り組み”や“BtoCからBtoBへの領域拡大の取り組み”など、1頁半にわたって長々と書き連ねているというのに、結論はたった4行。よほど赤字を新型コロナのせいにしたいようですね。でも、大塚家具はこれまでもコロナとは関係なく、売上を落としてきたわけです。今期について言えば、東京都がコロナにより不要不急の外出を避けるよう呼びかけたのは3月25日でした。それから4月末までのおよそ1ヶ月、多く見積もっても2ヶ月間の客足の減少が、なぜ16カ月間の売上減、大赤字の原因と言えるのでしょうか。そもそも、今年2月に公表された今期予想の修正案で、すでに66億円の赤字でした。まあ、そこから2カ月でさらに11億円も赤字が膨らんでいます」(同)

店の顔・1階フロアを明け渡した新宿店

 今期の業績予測の推移と結果を比べてみよう。

「大塚家具は当初黒字化を謳いながら、途中で赤字に修正。結局、最終決算で修正した赤字予想を上回る大赤字ということを繰り返してきました。今期もそれは変わりません。さらに、特別損失の計上にも納得がいきませんね」(同)

 その内容は以下の通り。

《家電売場設備等店舗改装への投資およびECシステムへの投資等について、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき減損処理を行い、2020年4月期決算において累計3億52百万円を特別損失として計上いたしました。》

「家電売場の店舗改装もECシステムへの投資も、去年やると言っていた話です。それが早くも減損になるってどういうことでしょうか。要は利益を生まない資産というわけですから、株主のためにもっと説明しないといけない。そのくせ、同じ19日に、ヤマダ電機とのコラボ店舗を一気に7店同時に開店したり……決算発表と同じ日にやることで、赤字を目立たなくしようとしたんでしょうか」(同)

 そこで、コラボ店舗の新宿店に行ってみた。外観の看板には「IDC OTSUKA」に「×YAMADA」の文字が加わっていた。中に入ると、1階は家電売場と地下1階は家電売場に。2階以上が大塚家具になっていた。家電売場の店員に、商品について質問すると、懇切丁寧に教えてくれる。家電の説明は大塚家具の社員では難しいだろう。試しに訊いてみると、

店員:はい、ヤマダ電機の社員です。

――都内のヤマダの店舗から来たという。すでに名刺は大塚家具の家電担当となっている。ヤマダ電機は新宿には東口店と西口店の2店舗があるが、多すぎないか?

店員:激戦区にしてしまいましたかね。でも、ヤマダ電機はもちろん、他社さんとよりもお安くさせていただきます。ひょっとすると、この大塚家具は、新宿の家電量販店の穴場になるかもしれませんよ。

 テレビ売場には、大塚家具のソファーも置かれてあるが、そこには“売り場は4階”などと表示されている。これが久美子社長の言う、家電と家具を“ワンストップで買える場所”なのだろうか?

「さっそく大塚家具は26日に<大塚家具 家具と家電での住まいのトータル提案 好調な滑り出し>というリリースを発表しましたね。家電が売れているようです。しかし、新宿の場合など、同じヤマダ電機との食い合いになっている可能性もあります。むしろ、大塚家具は来店した全ての客の最初に目に入る1階フロアをヤマダ電機に明け渡してしまった。それほど苦しい状況なんだなと思わざるをえません。テレビの報道番組でも、“まるで家電量販店のようです”と言われていましたが、『ヤマダ家具』になる日もそう遠くはないのでしょう」(同)

 その上、代表取締役会長と取締役3名をヤマダから迎え入れることとなった。

「昨年3月末に社外取締役に就任した、ハイラインズの陳海波社長は退任するようですね。久美子社長は『中国市場に打って出て、大塚家具の再生を果たす』と言っていたのに、1年あまりで退任とは……。株式の過半をヤマダに握られ、役員も迎えた。ヤマダ家具となる布石、不可逆的な大きな一歩でしょう」

大塚家具の今後

 それでも、久美子社長は「経営が間違っていた」とか、「退任します」などと言うつもりは全くないようだ。

「ヤマダから会長を迎え入れたとはいえ、久美子社長はまだ代表権を手放していません。決算短信には毎年のように、《約3兆円の国内家具マーケットにおける当社の市場占有率は未だ低く、成長余力は十分に見込める》とあります。市場占有率が低いから成長できるなんてことは、競合他社でも、新規参入者でも、誰にでも言えることです。成長余力があるかどうかは、着実な経営方針があるかどうかです。この5年間、久美子社長の経営方針は、中国とか、中古家具とか、家電とか、ブレまくりでしたが、赤字を出し続け、社長を継続することだけブレませんでした。通常、営業赤字は2年続いただけで、ビジネスモデルが完全に毀損しているということで、経営者失格と見なされます。彼女は赤字が2年続いて3年目に入った時に『3期連続赤字ならレッドカードです』とテレビで語っていました。しかし、3期連続で赤字となった際には、『(社長を)辞めるとか、そんなことを考えている場合じゃない』と変わっていた。開き直りも甚だしいというか、これが通用するなら、一生責任を取らなくても済むということです」(同)

 7月30日の株主総会を、彼女は切り抜けられるのか。

「ヤマダから会長はじめ役員を迎え入れたことで、市場では大塚家具の株価も上がって歓迎ムードです。そのための人事でもあるのでしょう。“好調”を謳ったリリースも株主総会に向けてのものかもしれません。これまでも、業績が落ちる中、横ばい以上なら“戻り基調”と株主総会で訴えてきましたからね。ただし、普通に考えて、4期連続で赤字なら、5期目をどうするか方策を出さなければならない。にもかかわらず、決算短信にも来期の業績予想は“不確定な要素があるため”出していません。5期連続となりかねない重要な局面にもかかわらず情報開示をしていないわけです。しかも、この5月からは店舗売上高の月次開示もやめてしまいました。小売業として月次を開示しないなんてあり得ないことです。もはや大塚家具は、単独で存続することは難しいので、ヤマダが救済するしかないでしょう。住宅メーカーのエス・バイ・エルがヤマダホームズになったように、大塚家具も完全子会社化されてヤマダ家具になる可能性は高いでしょう。もしくは合併により、新宿店の看板から“IDC OTSUKA”の看板だけが外されるか……」(同)

 昨年12月にヤマダの出資により、大塚家具のキャッシュは58億円に膨らんだ。だが、4月決算では36億円となり、4カ月で22億円が目減りしたことになる。大塚家具は4期連続の赤字に加え、営業キャッシュフローもマイナスとなり、7月末の有価証券報告書の提出後、2年間の上場廃止猶予期間に入るという。来期はどうなるのだろうか。

「大塚家具に限りませんが、コロナ禍が続く限り環境は悪いでしょう。大塚家具はこれまで、環境が良くても売上を落としてきたわけですから、環境が悪化したらさらに落ちることになる。ヤマダから経営陣が加わったとはいえ、大塚家具の成長余力というより、縮小余力がどこまであるのか、もはや凡人には計り知れぬレベルです。来期、利益を出せなければ、さすがの久美子社長もおしまいでしょう」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年7月1日 掲載