有価証券報告書を読んでも、その名前はどこにも載っていない。東芝の株主総会(7月31日)で車谷暢昭社長に「NO」を突き付けたエフィッシモ・キャピタルのような活発な株主がいる一方で、この投資家は、じっと経営陣を見守っているかのようだ。アメリカの名門・ハーバード大学である。

 東芝の関係者が言う。

「当社の株はゴールドマン・サックスなどの名義を使って保有されているため、本当の株主は分かりにくいのですが、大株主の第3位に『ハーバード・マネジメント・カンパニー』という会社が登場します。ハーバード大学傘下の資産運用会社で、現在、約2千万株を保有しています」

 金額にして約700億円にものぼるが、同大学の運用基金は約4兆円。アメリカ株や債券の他に、全体の2割弱をアメリカ以外の株に投資している。東芝株はその運用先のひとつだ。

 経済評論家の山崎元氏によると、

「ハーバードやイェールといった名門大学では、企業や卒業生からの寄付金を積極的に投資しています。そもそも卒業生に、ウォール街の金融マンが沢山いるのですから、ファンドマネージャーの人選には困りません」

 ちなみに日本で最も基金が多いのは慶応大学の約480億円というから、2ケタ違うのである。

 でも、なぜ「東芝」だったのか。

「ハーバード大学が東芝株を購入したのは2017年12月のことです。当時、同社は債務超過で上場廃止に陥る寸前で、それを回避するために約6千億円の増資を行いました。ゴールドマン・サックスが主幹事を務め、世界中から約60の機関投資家が資金を投じました。その中にハーバード大学がいたのです」(東芝の関係者)

 ちなみに、同大学は大暴れしたエフィッシモ・キャピタルにも資金提供しているといわれ、トータルで東芝に投じた額はさらに大きくなる。

 で、収支決算はというと目下、約100億円の「含み益」。

 学問だけでなく運用も世界一流というわけである。

「週刊新潮」2020年8月27日号 掲載