中興の祖

「インフロニア・ホールディングス」が「東洋建設」のTOB(株式公開買い付け)を開始したのは今年3月のこと。インフロニアは、「前田建設工業」と「前田道路」、「前田製作所」が経営統合して設立された持ち株会社。そのTOBに、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(YFO)が待ったをかけた。

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 横槍を入れられたインフロニアがこのまま終わるはずがない。なにせ、身内である前田建設と前田道路の壮絶なバトルの末に統合にこぎつけた経験があるのだ。

「親子喧嘩」と称されるTOBの号砲が鳴ったのは、2020年1月。前田建設がグループ傘下の前田道路にTOBを実施したところ、猛反発を食らったのである。

 そもそも、「前田」の名を冠するようになった前田道路の旧社名は「高野組」。アスファルト舗装工事の草分け的存在だったが、1962年に経営危機に陥り、会社更生法の適用を申請した。再建の支援をしたのが前田建設だ。

葬儀翌日

 再建を果たした前田道路の「中興の祖」と言えるのが、岡部正嗣名誉会長。前田建設の副社長から前田道路へ転出。社長、会長を歴任し、15年から取締役名誉会長として実権を握り続けた。そして心不全のため81歳で他界したのは、20年1月9日のことだった。

 前田道路の幹部によれば、

「名誉会長は前田建設の創業者である前田又兵衛の次女と結婚し、現在の前田操治社長は義理の甥に当たります。つまり、前田一族に属する人物なのですが、前田道路の経営は自主独立を貫きました。前田建設からの仕事をあえて増やさず、売上に占める割合を1%以下に抑えた。なおかつ、自身の後継者には前田建設からの天下りではなく、プロパー出身の社長を起用するという道筋もつけたのです」

 要するに、“親からの独立”を進め、両社の親子関係はかねてから冷え切っていたのだ。岡部名誉会長の通夜、葬儀は1月18日から19日にかけて執り行われたが、その直後の20日、前田社長がわざわざ前田道路に出向き、直接、TOB開始を宣告したのである。

「週刊新潮」2020年2月20日号「MONEY」欄の有料版では、かつての身内同士のバトルについて詳報する。

「週刊新潮」2020年2月20日号 掲載