弁済計画

 大王製紙元会長、井川意高(もとたか)氏の逮捕は、父、井川高雄元顧問ら創業家一族も大王製紙から排除される結果を招いた。井川氏の手記『熔(と)ける 再び』では、当時の社長による「クーデター」があったことも明かされている。

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「週刊新潮」2022年7月14日号「MONEY」欄に続けて、井川氏が語る。

「不正借り入れの事実を知った父の逆鱗に触れ、私は職を辞する以外にありませんでした。2011年の8月下旬、社長だった佐光正義に辞表を提出した。兼務していた関係会社の会長を除き、大王製紙の会長のみを9月16日付で辞任する旨を記したものでした」

 検察側から、弁護士を介して「むやみに事件化するつもりはない。9月末の中間決算までに弁済すれば逮捕は見送る」と伝えられていた。

「辞任から10日後の9月26日、借り入れ先の関係会社7社へ、同時に返済をする段取りを整えました。ただ、キャッシュで全額は用意できず、保有する関係会社の株式で代物弁済することにした。その日の午前10時からの取締役会で弁済計画が承認される予定でした」

 しかし、〈朝9時過ぎに、関係会社7社から一斉に私に電話がかかってきたのだ。「(略)現金でお貸ししたものは、現金で返していただくのが本来だと思います」〉(『熔ける 再び』より)

 井川一族排除というクーデターを目論む佐光氏の策略だった。

千慮の一失

 この策略が功を奏し、井川氏は逮捕された。そして、「中興の祖」と呼ばれた高雄氏をはじめとする一族の排除へと続くのである。

〈大王製紙社長に佐光正義を選任したことは、高雄にとって痛恨の「千慮の一失」(賢者が千件に一件だけ犯す過ち)だった。その過ちを悔い、佐光の体に取りすがってともに地獄の底まで堕ちよう。父はそこまで思い詰めていたのだ〉

 父の無念を晴らすべく、井川氏が講じた手段が『熔ける 再び』の出版だった。

「6月29日開催の大王製紙の株主総会を目掛け、その2日前に手記を公にしました。すると、佐光自ら“取締役再任案”を撤回した。本来、決算で過去最高益を計上し、鼻高々だったはずです。なのに、社長を経て、21年4月から務める会長の座を明け渡しました」

「週刊新潮」2022年7月21日号「MONEY」欄の有料版では、大王製紙から創業家一族が排除されたクーデターの内幕と、佐光氏の取締役再任案撤回について詳報する。

「週刊新潮」2022年7月21日号 掲載