残暑が続く列島で、テレビ業界は装いを新たに秋を迎えようとしている。10月は民放各局にとって大切な番組の改編時期。開局65周年イヤーにして苦境にあえぐフジテレビも、新番組で汚名返上を狙うが、アキレス腱はなおもさらしたままのようである。

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 秋の番組編成を発表したフジテレビは、今月4日に東京・台場の本社で行われた記者会見で、局幹部が自虐ともとれる発言をして注目を浴びた。

 現場を取り仕切るフジの中嶋優一編成部長自ら、

「残念ながら、現在フジテレビは一番楽しいテレビ局だと思われていないと思います。下手したら5番目かもしれません。そこで1年かけて一番楽しく、面白いテレビ局にします」

 と話したのだ。実際、在京キー局の雄の座を争う日本テレビにTBS、テレビ朝日はもとより、テレビ東京にさえ水をあけられているのではないか。そんな視聴者の見方をくみ取ったかのような決意表明。はたして勝算はあるのだろうか。

「ぼかぽか」には打ち切り報道が

「秋の改編率はゴールデン帯では3割強。新番組はバラエティー中心でした。時代の寵児だった『とんねるず』と蜜月で、面白いフジの復権を目指す港浩一社長の意向が反映されていましたね」

 そう解説するのは、さるベテランの放送記者だ。

「会見で印象的だったのは、低視聴率に苦しむ昼の帯番組『ぽかぽか』についてでしょう。神田愛花とハライチをMCに起用して、“令和の『笑っていいとも!』を目指す”と大風呂敷を広げましたが、打ち切りを示唆する報道が絶えません。その点を問われた中嶋編成部長は“局内でそのような話は一切出ていない”と断言して擁護していました」

“社長案件”

 テレビ解説者の木村隆志氏に聞くと、

「あの『笑っていいとも!』でさえ開始直後は不評だったように、どんな番組も最初から高い視聴率を取れるわけではありません。港社長の就任は昨年6月ですから、本来『ぽかぽか』のような新番組は秋の改編に間に合わないので、次の春の改編からスタートするのが定石のところ、あえて今年1月に放送開始となりました。これはバラエティーやお笑い色を強く打ち出す局としての方針を勢いづかせる目的もあってのことでしょう。番組が始まってしばらくは、港社長も生放送の現場に顔を出すほど力を入れていたと聞いています」

 まさに社長肝いりの番組というわけで、編成部長が庇うのもうなずけよう。

 だが、局内事情に詳しい業界関係者はこう明かす。

「現場責任者には港社長のご指名でバラエティーに手腕のある人物が選ばれましたが、平均視聴率が2%以下となかなか結果が伴わない。局内でも“こんな視聴率ではスポンサーがつかない”という地方局からのクレームがあると聞きます。帯番組として全体の番組表に占める『面積』が大きいため、低視聴率では地方局の業績を圧迫する一方ですが、“社長案件”である限り、誰も大ナタを振るえません」

小芝風花、永野芽郁に松山ケンイチ

 そこで底上げを図るべく、バラエティーとの両輪で力を入れているのがドラマ番組だという。事実、ここのところフジはドラマ枠を新設し続けているのだ。

「来年の1月期でも挽回しようと調整中です」

 とはフジテレビ関係者。

「木曜22時枠では大奥を舞台にした新ドラマに小芝風花が出演することがほぼ決まり、月9では主演に永野芽郁、月曜22時枠では奈緒と松山ケンイチを抜てきすべく画策しています」

 フジテレビに尋ねると、

「制作の詳細に関してはお答えしておりません。(『ぽかぽか』については)視聴率は上昇傾向にありますが、現状に満足せずこれからも視聴者の皆様により一層ご覧いただけるような番組作りをしていきます」(広報宣伝部)

 今をときめく人気俳優の起用が“社長案件”の尻ぬぐいとならぬよう、今はただ祈るばかりである。

「週刊新潮」2023年9月21日号 掲載