スタート時は苦戦

 ニュース番組「Live News it!」(フジテレビ系列・平日・16:50)と言えば、カトパンこと加藤綾子アナ(34)のMC起用が大きな話題となった。しかし4月に放送が開始すると、評判の割に視聴率は今ひとつ上がってなかった。

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 人気者であるはずの加藤は、なぜ夕方のニュースで苦戦を強いられているのか、放送担当記者が解説する。

「民放キー局が夕方に放送するニュースは、ゴールデンタイムの番組へ“導線”となる役割もあるため、各局とも力を入れます。視聴率トップとして君臨しているのは日本テレビの『news every.』(平日・15時50分)で、例えば午後5時53分から始まる『第3部』は10月14日に14・7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)という高視聴率を記録しています」

 2位争いは苛烈で、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」(平日・16:50)とTBSの「Nスタ」(平日・15:49)が7%台でデッドヒートを演じている。そしてフジテレビは出遅れが目立っていた。

「そのためフジは、鳴り物入りで『Live News it!』をスタートさせました。ところが蓋を開けてみると、基本的には4〜5%台をうろうろするのが定位置。日テレはもちろん、テレ朝やTBSを抜くこともできなかった。理由として、加藤アナのファンは男性が多く、主婦層がメインである夕方のニュースとは相性が悪い、というのが定説になっています」(同・放送担当記者)

 4月以降、ネットニュースでは「カトパン不振」という報道で盛り上がった。ところが10月末になって突然、1社が「カトパン好調」と報じたのだ。旧来型の「カトパン不調」という記事も依然として配信されているため、余計に違いが際立っている。論より証拠、記事のタイトルをご紹介しよう。

◇10月29日:NEWSポストセブン「フジテレビの攻勢、カトパンの夕方ニュースが番組最高視聴率」

◇11月3日:まいじつ「加藤綾子“リストラ要員”浮上…フジテレビ決断!? 小倉智昭とともに」

 ちなみに「まいじつ」は「週刊実話」を刊行する日本ジャーナル出版が運営するニュースサイトだ。片方は「攻勢」で、片方は「リストラ」なのだから、まさに真逆と言える。果たしてどちらが正鵠を射ているのか。あえてフジテレビではなく、ライバル局であるTBSの関係者に訊いた。

 すると「『Nスタ』でMCを務めるホラン千秋(31)も、番組スタッフも、『1番怖いのはカトパン』という見方で一致しています」という答えが返ってきた。つまり「NEWSポストセブン」の記事が正しいのだ。

なぜ主婦が“カトパン”を?

「『NEWSポストセブン』は10月23日に番組最高の視聴率7・5%を記録したことを取り上げていましたが、即位の礼が行われた10月22日も『バイキング』(平日・11:55)、『直撃LIVE グッディ!』(同・13:45)と3番組合同の特番を組んで7・1%でした。もともとフジテレビの皇室報道はファンが多いことで知られています。その効果もあったのでしょうが、私たちは冬場に起きるHUTの上昇分が、カトパンの『Live News it!』に流れていると分析しています」

 ここでHUTという専門用語が出てきた。英語の「households using television」を略したもので、「テレビを見ている世帯」が直訳だ。

 正確に定義すれば「今オンエアされているテレビ番組を、テレビで見ている世帯視聴率」となる。パソコンでテレビを見ていたり、テレビでも録画分を視聴していたりすると、HUTにはカウントされない。

 つまり「寒くなると家でテレビを見る人が増え、その人たちは『Live News it!』の加藤綾子を選ぶことが多い」というわけだ。「まるで『風が吹けば桶屋が儲かる』じゃないか」と分析を疑問視する向きも少なくないだろう。だが、先のTBS関係者は「推測でも何でもなく、厳然たる事実です」と動じない。

「冬場の視聴率を動かすのは、30代から40代の主婦層。保育園児や幼稚園児から高校生くらいまでの子供を持つお母さんです。彼女たちは夏場の午後5時は明るいため、習い事や買い物のため外出しています。ところが冬場は、日が暮れてくるので用事は早めに片付け、午後5時には家で子供や夫のために夕食の準備をします。その時にテレビの電源を入れるわけです」

 では逆に、春夏秋冬、365日、必ず午後5時のニュースを見る層といえば、「65歳以上の男女」だという。広告業界では「M3」(50歳以上の男性)や「F3」(50歳以上の女性)に分類される世代だ。

「この世代は視聴習慣が固定化しており、なかなかチャンネルを変えないという特徴があります。テレ朝の『スーパーJチャンネル』が得意とする層で、夕方から始まるドラマ『相棒』の再放送や、正午から始まる『徹子の部屋』からずっとテレ朝を見ているわけです」(同・TBS関係者)

 もちろん視聴率トップの日テレ「news every.」も、TBSの「Nスタ」でも、「65歳以上の男女」という“常連客”に支えられている。ただ、この両番組は「スーパーJチャンネル」より若い視聴者層も取り込み、それを強みとして日々のニュース戦争を戦っている。番組の雰囲気からも頷ける指摘だ。

 しかし、だからこそ大きな疑問が残る。なぜ「夏は夕方のテレビを見ない」という30代から40代の主婦層は、冬になると“カトパンのフジ”を選ぶのだろうか。

相撲の影響

 高齢者の多い「スーパーJチャンネル」を見ないのは分かる。だが「news every.」や「Nスタ」が若い視聴者層も取り込んでいるのは先に見たとおりだ。わざわざ視聴率の低迷している「Live News it!」を選ぶのはなぜなのだろう。

「加藤綾子さんに男性ファンが多いのは事実ですが、実は30代から40代の主婦層でも、カトパンに親近感を持つ女性が少なくないのです。彼女たちは2009年から始まった『ホンマでっか!?TV』(水曜・21:00)や、12年から16年までメインMCを務めた『めざましテレビ』(平日・4:55)をリアルタイムで見てきました。この層が『Live News it!』を選んだと考えられます」(同・TBS関係者)

 似た例が、日曜朝のニュース番組だという。30代から40代の主婦層は、朝から晴れていると家族で行楽に出かけてしまう。するとM3とF3に人気の高い「サンデーモーニング」(TBS系列・8:00)が視聴率を独占する。

 ところが雨が降ると、行楽は中止。家に閉じこもらざるを得なくなる。普段はテレビをつけない彼女たちは、「サンデーモーニング」ではなく、中山秀征(52)がMCを務める「シューイチ」(日本テレビ系列・7:30)にチャンネルを合わせる。かつて中山がMCを務めていた『ラジかる!!』(05〜06年・日本テレビ制作・15:55)や、その後番組の『ラジかるッ』(06〜09年・同・9:55)を見ていたからだ。

 季節の変化に加え、NHK総合が放送する大相撲中継も、夕方のニュース戦争に大きな影響を与えるという。

「11月10日から始まった九州場所は24日まで続き、年が明けて1月12日から26日までは初場所が開かれます。“常連客”である65歳以上の男女は、ごっそりNHK総合に移動します。高齢者層の多い『スーパーJチャンネル』の視聴率は確実に下がりますし、『news every.』でさえ2ケタを割ってしまいます。TBSも保守的な視聴者層が多いため、『Nスタ』も苦戦するでしょう。ところが、カトパンを支持する30代から40代の主婦は、相撲に興味のない人が大半です。これは『Live News it!』にとってプラス要因でしょう」(同・TBS関係者)

 ライバル局である日テレ、TBS、テレ朝にとって怖いのは、「カトパンの番組進行が上手になってきた」事実だという。

「番組スタート時は酷いものでしたが、加藤さんも『めざましテレビ』のMCとして生放送を切り盛りした経験を持っています。慣れるに従い、番組が落ちつき始めているのが分かります。大相撲中継などで視聴習慣が壊れた視聴者が、何かの拍子にフジにチャンネルを合わせてしまい、『あれ!? 「Live News it!」ってニュース番組、意外に面白いじゃないか』と感心し、新しい視聴習慣を確立されてしまうことが、ライバル局にとっては最悪のシナリオというわけです」(同・TBS関係者)

 最新の状況では、「スーパーJチャンネル」の数字が下がっているという。メインMCの渡辺宜嗣アナ(64)や林美沙希アナ(29)が、精彩を欠いているとの指摘が出ているようだ。

「テレ朝が減らした数字は、基本的にはTBSの『Nスタ』に流れています。2位争いの枠組みに変化は起きていないのですが、11月4日の視聴率速報によると、『Live News it!』の視聴率が6・3%となっています。上昇気流に乗っていることは間違いありません。カトパンは“夕方のニュース戦争”における台風の目になりそうです」(同・TBS関係者)

週刊新潮WEB取材班

2019年11月12日 掲載