日本の芸能人は大変だなあと思う。やたらと品行方正を求められるし、自分の魅力や才能を前面に押し出すと叩かれがちだし。よく使われるのは「あざとい」という言葉だ。魅力や才能が秀でている人なのに、それをアピールできない矛盾。あ、まるで人のせいにしているけれど、私も「あざとい」という言葉を多用している。押しが強くて、やり方が露骨で抜け目がない人にモヤッとすることもあるからな。にんげんだもの。

 令和元年も残りわずか、「あざとい」が裏目に出たドラマを2作。奇しくも両方テレ朝。定番御三家が視聴率を稼いでいるから、他の深夜枠は多少ぶっとんで突っ走ってもよかろう。でも、思ったよりも熱を帯びなかったのが「おっさんずラブ・in the sky・」と「時効警察はじめました」だ。

 両作品とも続編というか、新装開店というか、待望のドラマでもあった。新メンバーも加入し、あの世界観と熱狂をもう一度、と思っていた。テレ朝もそう思っていたのではないか。開けてみたら、コアで執拗なファン以外はついていかず。

「おっさんずラブ〜」は前作の戸惑いや逡巡がスコーンと抜かれ、BL街道まっしぐら。主演の大人気ひっぱりだこ俳優・田中圭もようやく体が空いたと思ったら、あざとさとともに帰ってきちゃった。「こうすれば女性は喜ぶだろう」仕草が多いのなんのって。ええ、喜びます、喜ぶけれど、カワイイの供給過多には「あざとい」も付随するものだ。

 田中は確かもっとクズなストレート男子だったはずが熱血バイセクシャル優等生に。恐ろしくカワイイテロリスト・千葉雄大に、割りばしペンですっと描いたような爽やかさ(で腹筋バキバキ)の戸次(とつぎ)重幸、微笑が多弁な山崎育三郎が新規参入。吉田鋼太郎はババ抜きのババ状態さぁ。しかも鋼太郎オンステージしかしアローンさぁ。ラブコメに振り切った潔さは評価に値する一方で、何かが失われた気もする。過ぎたるはなお及ばざるが如し感が強い。

「時効警察〜」はマッハで切り替わる映像と上滑りを敢えて計算ずくで入れ込み、相変わらずの独自路線。新規メンバーの吉岡里帆と磯村勇斗は、本編よりもAbemaTVの「とくべつへん」のほうが面白かったりして。豪華なゲストを投入したものの、ネームバリューでしか客を呼べない、つまり内容で惹きつけることができずに終わってしまった感。オダギリジョーと麻生久美子がなんだか楽しそうだったし、ふせえりと岩松了の盤石のウザさも、個人的には酒の肴に最適。

 文句つけとる割に毎回楽しみにしていたのだが、思ったほど熱は上がらなかった。たぶん面白さよりもあざとさの浸潤のほうが速かったのだ。後からじわじわとくる面白さに比べると、鼻につくあざとさというのは瞬時に体内を巡るからな。

 行列のできる名店が新装開店した途端、「味が落ちた」「前の方がよかった」と文句をつけつつ、密かにしかも執拗に食べに行き続ける厄介な客のようなもんだ、私は。素直に「好き」と言えばいいものを。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2019年12月26日号 掲載