“嫌韓世論”より高いハードル

 記事は、次のようなリードから始まった。《超極秘裏に綾瀬はるかのハートをつかんだのは、韓国人男性だった――》。意外な組み合わせに、読者はみな驚いたという。

***

 女性週刊誌「女性セブン」の7月16日号は、《綾瀬はるか(35)結婚決めた「韓流タレント(34)」極秘2年交際》とのタイトルで、3ページの特集記事を《熱愛スクープ》と銘打って報じた。

 記事によると、《芸能関係者》が綾瀬はるか(35)について、《「実は昨年末頃から、綾瀬さんが東京五輪後に結婚するという話が出回っていました」》と説明している。そのお相手として報じられたのが、ノ・ミヌ(34)だ。取材した記者が言う。

「女性セブンによると《交際が始まったのは、2年ほど前》だそうで、《綾瀬さんの活躍を知っていたミヌからのアプローチで、共通の知人が引き合わせた》と経緯を伝えました。しかし綾瀬さんの所属事務所であるホリプロは、セブンの取材に『友人ですがそれ以上の関係ではありません』と完全否定。ノさんは母親が経営する個人事務所に席を置いており、編集部が母親を取材すると、『突然のことで戸惑っていますが、私生活については私の口から話すべきところではない』と答えたそうです」

 女性側は否定するも、男性側は曖昧な回答――なかなか興味深いが、スポーツ紙や民放キー局はホリプロを気づかっているようだ。

「ワイドショーもスポーツ紙の芸能面も、女性セブンの記事を一切、後追いしていません。どうしたって世論は『綾瀬さんの所属するホリプロが報道しないよう要請したのだろう』と受け止めてしまいます。そしてホリプロが女性セブンを相手にしないという姿勢が伝わるほど、『それなら記事は事実なんじゃないか』と世間から思われてしまったようです」(同・記者)

 沈黙するスポーツ紙や民放キー局とは対照的に、ネット上のニュースサイトは活況を呈している。独自の視点で女性セブンの報道を解説する記事も少なくないが、SNSなどで蔓延する“嫌韓”と結びつけたものも散見される。

 ならば韓国は、どのような報道になっているのか。現地の状況を把握するためにも、まずは女性セブンの誌面に掲載された「サブタイトル」に触れておこう。

「サブタイトルは《国際的な格差婚に関係者からは交際反対の声。まるで『愛の不時着』だ!》となっています。もっとも『格差婚』について具体的に触れた部分と言えば、《ミヌの知人》という人物の《芸能界では綾瀬さんの方が知名度も収入も圧倒的に上ですから、結婚すれば完全なる“格差婚”》というコメントだけなのですが……」(同)

 なぜ女性セブンは、わざわざ「格差婚」と言及しながら、記事では具体的に報じなかったのだろう。韓流ブームに詳しいライターの児玉愛子さんが解説する。

「ノ・ミヌさんは韓国で人気があるとかないというレベルではなく、ほとんど話題にならないというレベルの人です。それをあけすけに書くことを、女性セブンさんは躊躇したのかもしれません。韓国の芸能界を仕事でウオッチしている私も、全く気に留めていませんでした。友人の韓国人女性も、多くが『ノ・ミヌって誰!?』と驚いています」

訴訟トラブルの過去も

 韓国の有力日刊紙である朝鮮日報の報道が面白い。日本語電子版の芸能ニュースサイト「エンタメコリア」に7月1日、「日本のトップ女優・綾瀬はるかと熱愛説、ノ・ミヌってどんな人?」という記事を掲載したのだ。

 この見出しだけで、韓国におけるノ・ミヌの知名度は想像がつくわけだが、念のために彼の経歴を振り返っておこう。

 2004年に「The TRAX」というロックバンドのドラムス奏者として芸能界デビュー。ちなみに日本デビューのシングル曲はYOSHIKI(54)がプロデュースした。

 06年にバンドを脱退し、俳優に転身する。ウィキペディアの「ノ・ミヌ」では出演作として映画が3本、テレビドラマが14本、記載されている。

「韓国では『女性より綺麗な美男子』というキャッチフレーズで売り出されたこともありました。確かにルックスのレベルは高いと思います。容姿端麗で歌も演技も、という面に注目すれば、日本におけるGACKTさん(47)のキャラに似ているかもしれません。とはいえ、ノ・ミヌさんはドラマでも脇役が中心ですし、演技力が注目されたというようなこともありません。『以前からノ・ミヌの名前は知っていたよ』という韓国人女性が1人いましたが、彼女はロックファンでした。あと『名前を聞いたことがある』という韓国人女性もいて、『なぜ知ってたの?』と訊くと、『何となく名前を知っているだけ』という答えでした。昨年、4年ぶりにドラマ出演したからかもしれません」(同・児玉さん)

 対照的に、韓国でも綾瀬はるかの人気は極めて高いという。

「綾瀬さんは韓国人女性の間でも人気があって、現地でも大きな芸能ニュースとして報じられています。『これでは格差婚ではないか』という懸念も多く、私の周囲でも『信じられない!』という声がほとんどです。例えば人気ドラマ『愛の不時着』で主演を務めたヒョンビン(37)が綾瀬さんのお相手なら、結婚報道を歓迎したでしょう。友人の韓国人女性は『これなら松坂桃李(31)のほうが何百万倍もよかった!』とLINEに送ってきたくらいです」(同)

 念のために申し添えれば、綾瀬はるかと松坂桃李は2015年に熱愛報道が行われている。

 話をノ・ミヌに戻せば、無名の彼にとって、韓国における大きな報道は千載一遇のチャンスとなるはずだ。

「韓国も日本と同じように、テレビではトーク番組が人気です。俳優や歌手でも、本業よりトーク力で視聴者の関心を集め、スターとなった芸能人もたくさんいます。ところがノ・ミヌさんは、かつて自身が所属していた韓国の大手芸能事務所を相手に訴訟を起こし、敗訴したという過去があります。これが今後、悪影響を及ぼす可能性があるかもしれません」(同)

 韓国のエンタメ情報サイト「wowKorea」(日本語電子版)は18年6月、「歌手兼俳優ノ・ミヌ、SMエンタに提起した1億ウォン台の損害賠償訴訟で敗訴」の記事を配信した。

 この記事は《韓国歌手兼俳優ノ・ミヌが、前所属事務所であるSMエンタテインメントに提起した1億ウォン(約1000万円)台の損害賠償請求訴訟で敗訴したことがわかった》と報じたものだ。

 ノ・ミヌは《2015年11月「SMが2004年デビュー後、2006年に脱退するまで、マネジメントをしっかりとしておらず、脱退後、放送局のプロデューサーや制作会社に自分(ノ・ミヌ)の芸能活動を妨害した」として、1億5000万ウォンの損害賠償訴訟を提起した》のだが、最高裁判所がノ・ミヌ側の上告を棄却し、敗訴の判決が確定したのだ。

母親の存在

「バンドの脱退から、数年の間をおいて提訴に踏み切るという経緯も、あまり印象はよくありませんでした。テレビドラマや映画に出演していることから、完全に干されていたわけではないのでしょう。とはいえ、SMエンタテインメントといえば大手中の大手です。今回、ノ・ミヌさんが初めて大きな脚光を浴びたからこそ、SM側がテレビ局や映画会社に『彼を出演させないように』と“圧力”をかけてくる可能性も否定できません」(同・児玉さん)

 ノ・ミヌの母親は日本で歌手活動をしていたこともあり、母子共に日本語が堪能だという。当然ながら日本のトーク番組も食指を伸ばしておかしくないが、民放キー局がホリプロに忖度するかもしれない。

「ノ・ミヌさんが、お母さんが経営する個人事務所に所属しているということも、結婚のハードルになるかもしれません。というのも、韓国では家族の絆を重んじるため、日本人女性は韓国人男性を『マザコン』と思ってしまうことが珍しくありません。ただでさえ韓国人は日本人より母子の絆が深いのに、ノ・ミヌさんとお母さんは仕事上のパートナーでもあるわけです。晴れてゴールインされたら、ご自身が芸能活動をしていたことから、綾瀬さんの活動に理解を示す良き義母になられるかもしれませんが、綾瀬さんが嫁姑の問題で苦しまれる、という可能性もあります」(同)

 恋愛はハードルが高くなればなるほど燃え上がるというのは、それこそ「愛の不時着」のテーマでもある。女性セブンのタイトルも、それを意識したのだろう。

 だが結婚は逆であり、高いハードルを乗り越えられないケースも少なくないとも言われる。果たして2人の今後は――?

週刊新潮WEB取材班

2020年7月7日 掲載