J.Y. PARKがプロデュース

 未来のK-POPアーティストを発掘する共同ガールズグループプロジェクト「Nizi Project(通称:虹プロ)」の最終メンバー9人が6月26日に確定、今秋にデビューすることが決まった。韓国の大手芸能事務所JYPエンターテイメントとソニーミュージックによる、テレビの公開オーディション番組は日本人中心にダイヤの原石を発掘したことになるわけだが、K-POPの鎧をまといつつ世界を席巻する日は来るだろうか。

 グループ名は「NiziU」。これはプロジェクト名である「Nizi(虹)」と「Need YOU(君が必要)」を組み合わせた造語だ。日本人メンバー中心に構成されたNiziUは、果たして目論見通りに世界進出できるのだろうか。成功への試金石となる挑戦とプロデュース力に基づいた戦略がある。

 TWICEの日本での成功でK-POPに関心のある人は、J.Y. PARKの名を聞いたことがあるだろう。

 J.Y. PARK本人は音楽プロデューサーとして名を轟かせるよりも先に、1990年代の韓国では人気R&B歌手として知られていた。アーティストとしての彼の活動名はパク・ジニョン。

 韓国の名門・延世大学に通いながら、ユニット「パク・ジニョンと新世代」で1992年にデビューするも泣かず飛ばす。その後はキム・ゴンモのバックダンサーを務めるなど下積み生活を経て、1994年に再デビューを果たす。

 当時の韓国ではまだ馴染みの少なかったR&B歌手として再デビューすると、時代が彼に追いついたのか、R&B独特の歌唱法とセクシーダンスが話題となり、一気にスターダムへと駆け上がる。

 そんな彼が自身の音楽をより広めるためにプロデューサーとして後進を育てたいというのは自然な流れであり、2000年代に入るとピ(Rain)やWonder Girlsなど、世界に通用するアーティストを育てたことで、その名を知られるようになった。

 そして、満を持して日台韓の少女たちによるユニット「TWICE」をデビューさせると韓国だけでなく、日本をはじめとするアジア、世界へと彼らを進出させていく。パク・ジニョンプロデュースというブランドが世界の音楽シーンで俄然注目を集めるからこそ、アーティストを目指す若者は彼の下に集まって来るのだ。

テレビの公開オーディション番組に魅せるエンターテイメントを加味した

 公開オーディション番組は、日本でも「スター誕生!」や「君こそスターだ!」など、昭和の時代には数多くあり、歌手デビューの受け皿となっていた。一方、それまでの韓国では、大学音楽祭や江邊(カンビョン)音楽祭などに入賞することがプロの歌手への登竜門だった。

 しかしながら、それらの番組やイベントは次第に廃れていき、芸能事務所が個別にオーディションを行ってはいたものの、テレビ番組として一般に広く認識される存在ではなかった。

 韓国でもプロの歌手を目指す公開オーディション番組は続いていたが、ダイヤの原石を探すというよりは、歌唱力がある、いわゆる歌がうまい人材を発掘する性格が強かった。

 だが、国民(視聴者)がプロデューサーとなって、各事務所の練習生101人からユニットメンバーを選抜する公開オーディション番組「PRODUCE101」が2016年にスタートすると状況が一変。自分の推しメンを選抜メンバー11人に残すために、視聴者が応援するというインタラクティブ性が受けて、その後は雨後の筍のように類似の番組が現れた。

「Nizi Project」も公開オーディション番組ではあるが、スケールが違う。TWICEを育てたJ.Y. Parkがプロデュースするブランド価値から、番組制作が発表されると俄然注目された。

 前述したように、世界に通用するK-POPアーティストを育てて来た彼だからこそ、番組シーズン1のオーディション(練習生)だけで1万人の少女が応募した。シーズン2では最終練習生として残った13人が渡韓して厳しいレッスンを受けた結果、9人の最終メンバーが発表されたのだ。

 だが、この9人。これまでのK-POPユニットとは毛色が違っていた。

日本人メンバー中心に固めた「NiziU」は新たなモデルケースとなる

 今もそうだが、BTSなど男性ユニット全盛の韓国において、TWICEをはじめ、IZ*ONEなど、外国人メンバーを加えた少女ユニットが頭角を現してきたのは、ひとえにプロデュース力であり、ジェンダーの要素は大きくない。

 韓国ではデビューまで練習生として長い時間徹底的に育成し、完成品としてデビューさせるのがこれまでのパターンであった。

 ところが日本では、AKB、古くはおニャン子クラブなど、芸能人として完成したタレントよりも、推しメンを見つけて応援して育てていく方が日本人受けする。そのため、秋元康らによる日韓合同プロジェクト『PRODUCE 48』では、日本からのAKBメンバーが、完成度が高い練習生出身の韓国人候補生に水を開けられる結果となった。

 NiziUのメンバーは韓国での厳しいレッスンを受けたとはいえ、練習生として年季の入った他の韓国ユニットと比べれば実力のほどは未知数である。

 世界で通用するアーティストを目指すからには、ファンが推してくれるからという甘えは存在しない。世界のショービジネスは実力第一主義なのだ。

 これまで英語の歌でなければアメリカの音楽界は成功しないと言われてきたが、韓国語で歌っている「カンナムスタイル」が受け入れられたように、歌をトータルでひとつと考え、言語の壁はなくなりつつある。

 だが、考えてほしい。「カンナムスタイル」を歌ったPSYは英語が堪能であり、アメリカ現地でのコミュニケーションに問題はない。もちろん、英語を話せるメンバーもいるし通訳を介すれば済む話であるが、言葉ができることはひとつの武器になる。

 それだけではない。J.Y.PARKが大物音楽プロデューサーとはいえ、音楽業界関係者以外での知名度の問題がある。要は知名度を上回る歌を発表すればよいのだろうが、プロモーションなどを含め、成功へ至るまでの課題は山積しているといえる。

 これまでガラパゴスだった日本の音楽界に、アジア人でも世界に通用する音楽が作れる示したK-POP界の重鎮J.Y.PARKが、J-POPとは違った形でNiziUを進化させることができるのか、今後の動向が注目される。

土田真樹
1989年より韓国に留学。高麗大学大学院を経て文化情報誌ソウルスコープに就職。映画担当記者として活動する傍ら、キネマ旬報、スクリーン、AERAなどをはじめとするメディアに寄稿する他、韓国映画日本語字幕制作、劇場用パンフレットに解説を執筆するなど、多岐にわたって韓国映画情報を日本に向けて発信している。近年は日本映画、韓国映画の製作にも参加しており、最新作は日韓合作映画「ゴーストマスク〜傷〜」(監督:曽根剛)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月7日 掲載