デビュー曲公開初日に、動画再生回数1千万超え。各音楽配信サイトで1位を総ナメにしたガールズグループNiziU。日韓共同プロジェクト「Nizi Project」で選抜されたメンバーたちは、みな才能豊かでキュートなことこの上ない。さらにプロデューサーのJ.Y.parkことパク・ジニョン氏から繰り出される JYP語録は、多くの大人のハートも撃ち抜いた。

 握手会もない、視聴者投票さえもない。そんなアイドルの卵たちが、なぜここまで人気を得たのか。可愛らしいルックスと、10代にして豊かな表現力。そうした「完成度の高さ」を挙げる人もいるだろう。あるいは、一生懸命に課題に取り組む「健気な姿勢」に心打たれた人も多かったに違いない。舞台上ではまぶしいほどのパフォーマンスを見せつつ、自分の実力に悩む少女たちの「ギャップ」。デビュー曲の“縄跳びダンス”という「キャッチーさ」。ありとあらゆる成功要因はあったが、私が一番大きな理由と感じたのは、「自己肯定感を育むストーリー」である。日本人、特に若者は自己肯定感が低いという。そんな風潮に、この企画はガチッとハマったのではないだろうか。

 日本のアイドルは、他メンバーと競うことをエンタメ化されていた。誰がデビューするのか、誰がセンターになるのか。「ASAYAN」では鈴木亜美が視聴者投票で選ばれ、モーニング娘。たちは、オーディションの様子をずっと密着された。そしてAKBの総選挙である。そこにあるのは、他メンバーと比べられ続けるというプレッシャーだ。容姿やパフォーマンス、審査するプロデューサーへのアピール力やファンへの態度。あらゆる点を「あの子よりもブス」「あの子はメンバーで一番神対応」とジャッジされ続ける。それは年若い彼女たちにとって、自己肯定感が揺さぶられ続けることだったのではないか。

 自分よりもファンやプロデューサーを優先する、自己犠牲が求められる日本のアイドル。恋愛禁止というルールを破ったからと、泣きながら坊主になったメンバーもいた。象徴的なのが元 AKBの前田敦子による「私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」という名言だ。あの一言でファンならずとも多くの視聴者に衝撃を与え、前田は押しも押されもせぬセンターになった。

 けれどもそういう日本のアイドル界に、一石を投じたのがNizi Projectだったように思うのだ。

NiziUヒットに見るジャニーズとの共通点と欅坂の終焉 鍵を握るのは「自己肯定感」

 JYP氏は「カメラの前でできないと思うことはプライベートでもするな」と最終メンバーたちに伝えている。「誠実・謙虚・真実」を掲げ、自分自身を律し続ける大切さを説いていた。けれどもそこに、自己犠牲という匂いはない。順位はつけるが「ライバルに勝ったか」ではなく、「過去の自分に勝てたか」で常に判断していた。

 誰かのマネはいらない。見ている人のために、媚びず惜しまず自分らしさを出せ。でもたとえ落選しても、悲観することはない。なぜなら一人一人が特別だから、と語りかける JYP氏。まさに日本アイドルの最高峰、SMAPの名曲と同じ価値観である。そういえばジャニー喜多川氏も、個性を見抜く名プロデューサーだったといえる。オーディションでは目立たずとも、「ユー、かっこいいね」「ユー、面白いよ」と持ち味を見出し、数々の人気ジャニーズアイドルが世に出ることとなった。

 前より自分らしさが出ていた、過去の言葉にとらわれずよく頑張った。JYP氏にそう語りかけられた候補者たちは、みるみるうちに輝きを増していった。自己肯定感の大切さを示すプロデューサーは、日本のアイドル界にはいなかったように思う。

 むしろ歌詞では綺麗ごとを歌わせながら、メンバーの自尊心を削り続ける実態が、ファン離れを加速させたグループもいるだろう。先日は欅坂46がグループ名改名と再出発を発表して話題となった。「大人に騙されるな」「異端だろうと我が道をゆけ」というメッセージは、若者層の共感を得るのに成功したといえる。けれども、かつてグループの顔であった平手友梨奈の変化は尋常ではなかった。不動のセンターとしての重圧なのか、笑顔どころか表情さえ出さなくなっていった彼女。きっとグループにいる自分自身を、最後まで愛せなかったのではないか。いじめ疑惑も報道されるなど、歌詞の世界観以上に暗い側面が取り沙汰され続けたグループでもあった。

 ただでさえ生きづらい世の中だ。絶望や自己犠牲を軸にするアイドルは、見ている方ももう息苦しいのかもしれない。ひるがえってNiziUのデビューシングルが「Make you happy」というのは象徴的である。自分を愛せる女性たちだからこそ、何色にも規定されない幸せな輝きを放つ。まるで虹のように。だから、見た人たちは笑顔になる。

 自己犠牲で成り立つアイドル時代はもう終わった。欅坂のメンバーたちが見る景色の先にも、色とりどりの光があふれることを祈りたい。そしてNiziUも、国境を超えた大きな虹をかけ続けてほしい。

冨士海ネコ

2020年7月26日 掲載