9月20日の夜、人気女性アイドルグループ・欅坂46の新グループ名が“櫻坂46”になることが電撃的に発表された。

 今年7月に行われた初の無観客配信ライブで欅坂46から新しいグループ名に改名することが発表された。新グループ名を巡って熱心な予想合戦が展開されている中での突然の出来事だった。ちなみに坂道シリーズと呼ばれ、姉妹グループでもある乃木坂46と日向坂46、そして前グループ名の欅坂46もすべて港区にある坂道からその名が命名されており、当然、新グループ名も港区にある坂道から命名されることが有力視されていた。

 それだけに、この新グループ名の由来となった櫻坂も港区にある坂道だろうと思うが、今回はそうではない。

 いや、正確にいうと港区には「桜坂」と「さくら坂」がある。まず、桜坂は1カ所あり、区の公式ホームページ掲載にされているのは赤坂1丁目11番と12番の間にある坂である。六本木通りから、東京全日空ホテル(現:ANAインターコンチネンタルホテル東京)の北側脇を東に向かって登る坂道といえば、ピンとくる方も多いのではないか(福山雅治の大ヒット曲である『桜坂』は大田区にある坂なのでこちらの桜坂とは無関係である)。この坂は明治中期に新しく作られた道筋で、港区のホームページによると、坂下に戦災まで大きな桜の樹があったことからこの名が付けられたとされる。

 とはいえ、現在も坂道の両脇にはアークヒルズが建設された際に植えられた多くの桜の樹が春満開の時期に咲き誇っており、美しい光景が広がっている。

 かたや、さくら坂は港区の公式ホームページには掲載されていないが、2カ所存在している。一つは赤坂サカス内に作られた長い坂道で、多くの桜がこの坂に沿って植えられており、坂の中腹にある赤坂ATCシアター前でサカス坂と交差する作りとなっている。

 気になるのがもう一つのさくら坂だ。六本木ヒルズ完成に伴いできた坂道で六本木ヒルズの敷地南側を通るメインストリートとしてはもうお馴染みのけやき坂が存在するが、そのけやき坂にある途中の“角を曲がる”とさくら坂が現れるのである。

 ちなみに『角を曲がる』とは欅坂46の絶対的センターとして君臨し、今年1月23日にグループからの脱退を発表した平手友梨奈の代表的ソロ曲なのである。つまり、けやきからその先のさくらへ――という意味である。平手を中心とした欅坂を超える、超えろという思いが感じ取れるのだ。

 念のため言っておくと、このさくら坂も六本木ヒルズ建設に伴い新たに作られた。長さ約330メートルの緩やかな坂でけやき坂の南側を平行する形となっており、坂途中の南側には“さくら坂公園”がある。

 街路樹として桜の樹が植えられ、春には美しい花をつけることで知られている。港区には桜にまつわる3つの坂があったが、新しいグループ名はこの3番目に紹介したさくら坂が由来だという。

 だが、ここで一つの疑問が浮かぶ。なぜそのままのさくら坂ではなく、“櫻坂”になったのか。

画数

 実は櫻坂の画数は総画28画なのだが、これが現メンバーの数と同じ“28”になるのである。恐らくそこにつなげた、一致させたかったのであろうと推測される。こうして欅坂から櫻坂へと改名し、新たな出発を図ることとなったワケだが、実は改名はこのグループにとって初めての出来事ではないのだ。世間一般の人はあまり知らない事実だろうが、2度目の出来事なのである。かなり初期からの熱心なファンにとっては今や当たり前の話なのだが、乃木坂46に続く“坂道シリーズ第2弾”として最初にメンバーを募集した際はやはり港区に実在する坂道・鳥居坂の名前を冠した“鳥居坂46”というグループ名でオーディションを開催していた。ちなみに鳥居坂46になった経緯はこうである。乃木坂46のアンダーメンバーがアンダーライブを行っていたZeppブルーシアター六本木近くの港区麻布にあった鳥居坂にちなんで名付けられたのである。

 そのため、鳥居坂46もこのZeppブルーシアター六本木からライブ活動をスタートさせる予定だったのだ。ところがオーディション最終合格者のお披露目の場で“鳥居坂46”から“欅坂46”への改名が発表されることとなったのである。これは余談だが、理由は漢字の見た目も発音したときのゴロも鳥居坂よりは欅坂のほうが遥かに良かったためだとか。もし、鳥居坂46のままでも売れなかったとまでは言わないが、欅坂46ほどの爆発的人気は得られなかっただろう。それほどグループ名は大切なのである。

 思えば、欅坂46の末期にはメンバーの卒業や脱退が相次いだ。新曲のCDリリースも19年2月末を最後に途絶え、末期的な状況が続いていた。

 そんな暗闇の中から心機一転を図るには、アイドルらしい“明るいイメージ”“爽やかなイメージ”のグループ名がやはりふさわしい。確かに欅は秋の紅葉が美しい樹木だが、秋はどこか物悲しさも感じさせてしまう。その秋の樹木から春の明るさ、温かさの象徴ともいえる樹木・桜を冠したグループへと彼女たちは生まれ変わる。

 櫻坂46、それでも春だけでなく1年中満開が続くグループになれることを願っている。なにせ桜は日本を代表する、象徴する花の名前でもあるのだから。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月29日 掲載