番組の“好ましい昭和臭”

 9月29日の午後7時、テレビ朝日系列で「芸能人格付けチェック」(朝日放送テレビ制作)がオンエアされた。その後、ビデオリサーチから関東地区の世帯視聴率(註:以下同)が発表されると、テレビ業界に衝撃が走ったという。

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 民放キー局で、バラエティ番組を制作しているスタッフが明かす。

「平均視聴率は15・3%、まさに圧勝でした。私たちが驚いた理由の1つに、あのGACKTさん(47)が出演していなかったことが挙げられます」

 この番組のMCは浜田雅功(57)だが、常に浜田以上の注目を集めるのがGACKTだ。

 何しろ、GACKTは個人の連勝記録を今も更新している。今年1月1日の放送でも無敗で、連勝の数を62に伸ばした。

 今回は19人のゲストが出演。ネットメディアはその中から、唐沢寿明(57)、仲間由紀恵(40)、剛力彩芽(28)の名前を紹介することが多かったようだ。

 出演者は7チームに分かれ、「松茸の味」や「バイオリンの音』で本物と偽物を見分けられるか競った。

「率直に言って、いかにも秋の番組改編期における番宣用特番という印象の強いキャスティングでした。

 特に唐沢さんと仲間さんのチーム『24 JAPAN』と、池田美優=みちょぱさん(31)を筆頭に4人が参加した『トリニクって何の肉!?』チームは完全な番宣でした」(同)

番宣でも高視聴率

 前者は、アメリカの人気テレビシリーズ「24」のリメイクで、10月9日から放送予定となっている。

 後者は朝日放送テレビが制作し、毎週火曜の午後9時から放送されているバラエティ番組だ。

「これに加えてGACKTさんが不在なのですから、そんなに視聴率は取れないだろうと思っていました」(同)

 ところが蓋を開けてみると、真逆の結果。テレビ業界から驚きの声が上がったのも当然だろう。

「芸能人格付けチェック」は朝日放送テレビにとって看板番組の1つだ。もちろん、社の総力をあげて制作される。

 当初は浜田雅功がピンでMCを勤めた「人気者でいこう!」(1997〜2001)の1コーナーに過ぎなかった。

人気のピークは今年!?

 1999年3月に初めて放送されると、よほど手応えがあったのだろう。番組最終回を迎えるまで、不定期で放送された。

 それが2005年1月3日、いきなり正月特番として復活を果たした。視聴率は10・2%。及第点の評価を得た。

「2006年は1月3日に放送され、視聴率は15・1%。そして2008年から1月1日の特番として定着します。

 復活から計算しても、もう15年も続いている“長寿特番”です。ところが、意外にも最高視聴率は今年のお正月に記録した21・2%でした」(同)

 正月に21・2%、9月に15・3%を叩きだしたということは、どうやらこの番組は“最高潮期”に達したようなのだ。

 番組の魅力は──王様は裸だ、の言葉に尽きるという。

“昭和”の魅力

「故・梅宮辰夫さん(1938〜2019)、高橋英樹さん(76)、石田純一さん(66)という面々はセレブ、食通といったイメージがあります。

 ところが3人が番組に出演すると、ワインなら100万円と500円の違いが分かりません。バイオリンなら数十億のストラディバリウスと、子供の練習用との音色を聞き分けることができません。

 もちろん出演者は赤っ恥をかきます。視聴者はそれを見て『王様は裸だ!』と快哉を叫ぶというわけです」(同)

 高視聴率をあげている背景の1つに、朝日放送テレビが持つ“伝統”も大きく関係しているという。

「かつてのテレビマンは、『こんなことをやったら面白いだろう』というアイディアを、徹底的に突き詰めていったものです。

『芸能人格付けチェック』にも同じ精神が溢れています。つまり昭和のバラエティ番組が持っていた最良の部分を、いまだに失っていないのです」(同)

きめの細かい演出

 朝日放送テレビのヒット作を、具体的に見てみよう。

 ごく一部を列挙してみると、「てなもんや三度笠」(1962〜1968)、「プロポーズ大作戦」(1973〜1985)、「探偵!ナイトスクープ」(1988〜現在:金・23:16)、「パネルクイズ アタック25」(1975〜現在:日・13:25)──こんな具合だろうか。

「スタッフが『面白い』と思ったことを徹底的に突き詰めた」という説明が、腑に落ちる番組ばかりだ。

「朝日放送テレビの番組は独りよがりなものが少ない。いいアイディアを変にいじり回さず、分かりやすい形で出します。これが視聴者ファーストの精神でしょう。

 格好つけず、エンターテイメントに徹しているのが、視聴者に人気の理由だと思います」(同)

 番組では、細かいところにも、しっかりと工夫が凝らされている。

「例えば浜田さんは、2つある控え室の扉を開けることで、正解者と不正解者を明らかにします。

 その際、扉を一瞬開けては閉めたり、両ドアのノブを回したりと、様々なやり方でもったいを付けます」(同)

クラッシック一辺倒の選曲

 この演出、「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系列・木・19:58)の「グルメチキンレース・ゴチになります!」と似ている。

「2人残ったどちらが最下位になるか、料理を作ったシェフなどは、ことさらもったいを付けて盛りあげます。

 両番組とも、どれだけ効果的な演出かは、言うまでもありません」(同)

 BGMも計算され尽くしているという。徹底してクラッシックの名曲ばかり使っているのだ。

「浜田さんが扉を開ける時は、リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)の『ドン・ファン』。他にもカール・オルフ(1895〜1982)の『カルミナ・ブラーナ』。

 マヌエル・デ・ファリャ(1876〜1946)の『三角帽子』、ピョートル・チャイコフスキー(1840〜1893)の『序曲「1812年」』という具合です」(同)

「YAHOO!知恵袋」を見ると、「芸能人格付けチェック」の「かかっていた曲を教えて下さい」という質問がずらりと並んでいる。

 BGMが、しっかり視聴者の心に刺さっていることがよく分かる。

スタッフも強力

 おまけに番組を支えるスタッフも強力な布陣だ。構成を務めるのは高須光聖氏(56)と、何と浜田雅功も「濵田雅功」の名前で参加している。

「髙須さんはダウンタウンの2人とは幼なじみで、その縁で放送作家になったというエピソードは有名です。

『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系列・日・23:55)を筆頭に、ダウンタウンの人気番組の多くに参加しています」(同)

 よく考えてみれば、大晦日に放送される恒例の「笑ってはいけないシリーズ」(日本テレビ系列)にも、髙須氏は参加している。

 何のことはない、高須光聖=ダウンタウンの3人は、大晦日と元旦のテレビで、視聴者を釘付けにしているのだ。

 秋の特番で高視聴率が出たのも、ある意味では当然なのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2020年10月7日 掲載