「バチェロレッテ・ジャパン」をご存知だろうか。ある女性との結婚をかけて、十数人の男性が争うリアリティ番組である。前作までは「バチェラー・ジャパン」という、高スペック男性を女性が取り合う様子が好評を博した人気シリーズ。今回はその女性版というわけである。

 番組 MCを務めるのはナインティナインの二人とSHELLYさん。栄えある第1回のバチェロレッテは、福田萌子さんという才色兼備のスポーツトラベラー兼モデルだ。安藤美姫と木下優樹菜を足して二で割ったようなお顔立ちで、予告編やポスターでは高飛車なイメージだった。けれども番組が始まってみれば、実に聡明でチャーミング。常に参加者を気遣い、涙ながらに自分の思いをまっすぐ伝える姿勢に、多くの女性ファンもついたようだ。

 しかし、どうにもAmazonプライムの番組レビューは荒れている。理由は岡村隆史さんの発言の数々という。

 バチェロレッテの堂々とした振る舞いを引き気味に眺め、「常に上(の立場)にいる」「強すぎると思う」と評する様子に、前時代的との批判が集まった。初回では「こういうふうにして女性をモノにするんやっていうのをこれで勉強したいなと思ってる」と発言。収録当時にはすでに自身の結婚準備が進んでいただろうから、まあ一つのリップサービスとも受け取れなくもない。が、ここに「女性をモノ扱い」と不快感を感じた人も多かったようだ。

 岡村さんは17人の男性参加者に対しても手厳しい。「ジャパンと言ってるのにジャパンじゃない」と外国人参加者を揶揄し、美容男子には「美意識高い男性は中身が薄い」とバッサリ。感極まって泣く参加者には「あの人なんなの」と小バカにした態度を見せる。相方の矢部さんやSHELLYさんが、その都度フォローに追われていた。

 先日めでたく結婚発表をした岡村さんだが、それまでの女性観には残念ながら疑問符がついていた。コロナ禍での「お金に困った美人が風俗嬢になるだろうから、それまで楽しみに待とう」という旨の発言は大炎上。2010年の出演番組では、結婚相手に求める3条件に、新垣結衣似、お花屋さんかパン屋さん、バージンと語っていた。以前にハニートラップまがいの散々な目に合い、女性への不信感や警戒心は相当なものだったと聞く。吉本、そしてお笑い界という極度の男社会も含め、さまざまな背景によってアンバランスな女性観が作られていったのかもしれない。

裏テーマは結婚より男性の成長譚 一番伸びしろがあるのはMC岡村さん?

 一方で「岡村さんの言っていることも男としてはわかる」と擁護する声もある。萌子さんみたいな女性は男性にモテない、だから番組の魅力がないというレビューも見受けられた。

 しかしバチェロレッテのメインは、恋愛の駆け引きだけではない。男性側の成長譚が裏テーマだろう。堂々とアピールする自信のない男性、見た目を取り繕うことにしか心を砕けない男性は早々に落とされる。といっても前述のレビューの通り、萌子さんがタイプ、と言い切れる男性がほぼ見当たらなかったのは確かだ。みな自身やビジネスの売名に出演した、というのが透けて見えた。好きだからというより、周りの男に負けるのはムカつくから萌子さんにアピールする。そんな手段と目的がチグハグな状況が初期には生じていた。

 そうした男社会はまさに、岡村さんが置かれていた世界そのものである。他の男よりも強い男であることを見せつけ、自分が勝者として女性を「手に入れる」という価値観。より有名で、より金を稼ぐ仕事が良いという基準。すぐ泣く男や美容男子、外国人は茶化してもいいとする空気。

 しかし萌子さんは、真逆の世界の扉を開いた。うわべの強さを横に置き、本当のあなたはどんな人?と、むしろ男性のコンプレックスや弱さを引き出すのである。俺はデキる男というプライドに満ちた殻を砕かれ、ゆで卵のように心をひんむかれていく男性たち。でも彼らが今度こそ、本当の意味で彼女に惹かれていく様子が分かる。まさにバチェロレッテの真骨頂。萌子さんの人間力の成せるワザである。

 彼女のやりとりを、岡村さんは「強い」「普通の男は逃げる」と怖がり、拒絶する。けれども画面越しに、女性観や人生を心の中で問う瞬間もあったはずだ。逆に言えば、彼のように頑なな女性観を持つ男性ほど、伸びしろがあるものなのだろう。そういう点で、岡村さんは18人目の参加者として番組に呼ばれたのかもしれないとさえ思うのだ。

 この原稿執筆時には、最終回を残すばかりのバチェロレッテ。萌子さんが最後に選ぶ男性も気になるが、岡村さんが最後にどんな感想を残すかも気になる。最大の炎上を経て、最愛の伴侶を得た岡村さん。「支えられ婚」と報告した彼本来の繊細さや優しさが、最後の最後で見られたらいいなと思う。萌子さんに感化された、18人目の祝福すべき男性として。

冨士海ネコ

2020年10月29日 掲載