テレビ業界で“家政婦”と言えば、古くは市原悦子の「家政婦は見た!」(テレビ朝日)に始まり、松嶋菜々子の「家政婦のミタ」(日本テレビ)、松岡昌宏の「家政夫のミタゾノ」(テレ朝)、今年は大森南朋の「私の家政夫ナギサさん」(TBS)という新種も現れた。いずれもドラマの登場人物と相場が決まっていたが、現在、大人気なのがリアル家政婦のシマさんである。

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 本名はタサン志麻。フランスのミシュラン三つ星レストランでの修行を経て、帰国後は老舗のフレンチレストランなどに15年勤務。ところが、堅苦しい日本のフランス料理に違和感を感じ、15歳年下のフランス人との結婚を機に退職してしまう。

 以来、フリーランスの家政婦として働き始めて5年、今や予約の取れない家政婦として大人気なのである。民放プロデューサーが言う。

家政夫の志麻とは

「彼女の魅力は何といっても料理です。本格的なフレンチを長年学んでいますから、技術はお墨付き。それに加えて、発想力の豊かさです。一般人から見たらありえない組み合わせの素材で、食べたことのない料理を作ってしまう。しかも、冷蔵庫を眺めて即座にメニューを思いつき、2週間分の作り置き料理を3時間で作ってしまうんです。その手際も素晴らしいのですが、それを味わう芸能人の表情が明らかに違う。テレビを見ていても、食べてみたいと思わせる料理なのです。さらに、彼女の偉ぶらず、あくまでも控えめなところも好感が持てます。見た目もかわいらしいですからね。彼女が最初にテレビに出演したのは日テレの『沸騰ワード10』だったと思います」

 17年2月の放送だった。すると翌18年5月にはNHKが「プロフェッショナル 仕事の流儀」で彼女を取り上げた。日テレとNHKの奪い合いは、今年の11月に入って激化しているという。

 2日深夜、まずはNHKが「プロフェッショナル 仕事の流儀」の再放送版「プロフェッショナル選」で「家族のために、母のように 家政婦・タサン志麻」を再放送。

 それを受けるように6日の「あさイチ」(NHK)は、ラテ欄に“タサン志麻 伝説の家政婦”と掲げて、プレミアムトークのゲストに迎えた。

 同日夜、今度は日テレ「沸騰ワード10 2時間スペシャル」で、彼女は井ノ原快彦らを相手に15品目を振る舞った。

NHKの本気度

「6日の『あさイチ』の視聴率は11・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)と、かなりいい数字を取りました。そして夜の『沸騰ワード』は12・4%と同時間帯では首位に。すでに彼女は『沸騰ワード』では準レギュラー扱いになっており、芸能人に料理を出す企画はこれが第23弾でした。日テレとしては、NHKがわざわざ宣伝してくれたとほくそ笑んでいるでしょうね」

 ところが、敵もさる者。NHKは、9日、10日と2日続けて、現行で日本一の長寿番組「きょうの料理」(Eテレ)に志麻さんを登場させたのである。

「驚きましたね。これまでも、“料理愛好家”としてグッチ裕三が出演して話題になったこともありますが、彼女の職業は“家政婦”です。もちろん、肩書きは“料理家”となっていましたが。NHKはテキスト版の『きょうの料理11月号』(NHK出版)でも彼女で16ページもの特集を組みました。相当入れ込んでいるようです」

 ついに料理番組が取り上げたとなれば、他の番組だって黙っていないだろう。「キユーピー3分クッキング」(日テレ)や「くいしん坊!万才」(フジテレビ)、「おかずのクッキング」(テレビ朝日)、「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」(テレ朝/朝日放送)も狙っているはずだ。

「3分クッキング」など、志麻さんならホントに3分で作ってしまいそうだ。

「バラエティだって彼女を狙っていると思いますよ。もちろん、志麻さん自身はタレントになりたいなど思っていないでしょう。『婦人公論』のインタビューにも、“テレビ取材の話がきたとき、最初は抵抗がありました。勤めていた店を裏切るような形で辞めているので、関わった人すべてに顔向けできないという気持ちは、いまも変わっていません”と答えていましたし、“生まれ変わっても家政婦”とまで言っていますから。しかし、テレビマンたちは諦めませんし、大手プロダクションも狙っているはずです」

 彼女は本業の家政夫の仕事が忙しくて、プロダクションが入る余地などないのでは。

「忙しい人だからこそ、スケジュール管理は重要です。例えば、“今でしょ”の林修先生は当初はどこへも所属せずにテレビに出ていましたが、業界では御法度のWブッキングをやってしまったことからプロダクション入りを決めたと聞きます。大阪府知事になる前の橋下徹も同様です。忙しすぎて、自分で予定を管理できなくなるんです。現在、彼女がもっとも出演しているのは『沸騰ワード』です。MCはバナナマンですから、彼らの所属するホリプロが有力でしょうが、プロダクションによる取り合いが勃発する可能性もあります」

週刊新潮WEB取材班

2020年11月15日 掲載