ただでさえややこしい話が、より混迷を極めている。昭和のヒットメーカー・平尾昌晃が亡くなって3年。後妻と息子たちの確執は終わりを見せないが、新たに発覚したのは、故人の口座から消えた2億円!

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 平尾には3度の結婚歴がある。最初の妻との間に長男、2番目の妻との間に次男と三男をもうけ、死の4年前、マネージャーだった女性と結ばれた。今回の裁判の原告は、その3番目の妻だ。

 故人の会社「平尾昌晃音楽事務所」の取締役を務める男性に巨額の横領があった。損害賠償せよ――。東京地裁にそんな訴状が提出されたのは、2020年の7月である。

「彼は、事務所の元顧問税理士の甥で、伯父を引き継ぎ、事務所の会計処理に携わるようになりました」(事務所関係者)

 しかし、平尾の死後、後妻が遺産相続のため、口座などから金の流れを調べたところ、この取締役により、しばしばATMの1回の上限である50万円が引き出されていることが発覚。3年間でその額は1億4500万円に上った。

 また他にも、後妻の与り知らぬところで、彼の口座に毎月50万円が振り込まれていたり、彼の父宛に1千万円が送金されていたりしたことも露見。こうした「被害額」は1億8500万円に及ぶという。

 平尾といえば、この季節に思い出すのは、紅白歌合戦のフィナーレで「蛍の光」のタクトを振っていたこと。

 が、その裏で、内から食い物にされていたのか。

“一緒に死のう”

 後妻の訴えに対し、取締役は、金銭を引き出していた事実は認めたものの、平尾の命に従っただけ、と反論。そして、仰天の主張を行っている。

 裁判資料を引くと、生前、平尾が伯父に対し、〈給与と印税を現金で受け取りたい、自由になる現金が欲しいとの要請〉をし、伯父の指示に従って、自らは金を手渡していただけ、と。なぜ内密にしたかといえば、〈昌晃は原告(=後妻)から日頃から殴られたり、蹴られたり、罵詈雑言を浴びたり、一緒に死のうと言われたり、非常に怖い。現金を受け取っているのを知られたら、どんな目に合うか分からない〉から、と主張しているのである。

 事実なら、平尾は一方でDV被害者ということにもなる。

 改めて、当の取締役に尋ねたが、「裁判になっていますから」と取材拒否。

 一方の平尾の後妻は、

「(DVなんて)あるわけがない。平尾は生前から、主治医の先生に月1回見てもらっていましたから、もし(DVが)あればそこでわかるでしょ。カルテにも何にも、そんなことは一切書いてないんですから。もちろん喧嘩もありましたけど、私たちは最期まで仲良くやっていた。私の腕の中で死んでいった人ですから、後は法が裁いてくれますよ」

 そもそも、平尾ばかりかこの伯父も既に亡く、額も異常な高額に上ることからして、取締役の主張は「死人に口なし」の荒唐無稽なものにも聞こえるけれど、

「横領については、冗談じゃない、と思っていますよ」

 と、平尾の次男・亜希矢氏は感想を漏らす。

「はじめは(後妻も)グルだと疑ってたんですけどね。でも、DVの話は、私も親父に頼まれたことがある。(後妻が)殴ってくるから何とか言ってくれ、と。だから親父も逃げ場がなくなって、彼を信頼し、口座を預けてしまったんじゃないでしょうか。問題は彼女(=後妻)にもあるんですよ」

 場外乱闘も始まって、遺族の“迷曲”は新年も流れっぱなし。

「週刊新潮」2020年12月31日・2021年1月7日号 掲載