本宮泰風(48)が主演している仁侠Vシネマの長編シリーズ「日本統一」の第43弾が1月25日にリリースされる。今、最も人気がある仁侠Vシネマだ。本宮は松本明子(54)の夫で、原田龍二(50)の実弟。涼しい顔立ちの二枚目で、仁侠Vシネマ界のスターである。

 NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の初回(2020年1月19日)が放送された後、SNSにはこんな書き込みが相次いだ。

「野盗の頭領役がカッコイイ。誰が演じていたの?」

 それが本宮泰風だった。身長1メートル85センチの体は引き締まっていて、身のこなしは敏捷だから、確かに野盗役はよく似合った。

 もっとも、目下のところ本宮の持ち味や魅力が存分に発揮されているのは仁侠Vシネマに違いない。

 2013年にシリーズ第1弾がリリースされた「日本統一」で山口祥行(49)とダブル主演中。横浜の不良青年だった氷室蓮司(本宮)と田村悠人(山口)が、神戸に本部のある日本最大のヤクザ組織「侠和会」の盃を受け、ヤクザ界の日本統一を目指すという物語だ。

 2人は徐々に味方を増やし、敵は次々と倒していった。登場人物はほぼ全員がヤクザだが、「少年ジャンプ」的な物語が繰り広げられている。

 仁侠映画の金字塔「仁義なき戦い」(深作欣二監督)は全5作だったものの、こちらは既に42作もリリースされている。その上、まだまだ終わりそうにない。このままのペースだと、100作は優に超えそう。登場人物も多く、まるで「三国志」のような物語となっている。

「仁侠Vシネマ界なんて、下火だろう」と思う人もいるだろうが、さにあらず。近年、動画配信各社がこぞって売り物にしているため、1990年代以来のブームが起きている。作品の性質上、地上波では決して見られないところが大きなセールスポイントだろう。

「日本統一」を配信しているのはNetflix、Hulu、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ、dTVなどで、有名動画配信会社のほとんどが扱っている。人気も高く、例えばNetflixでは「今日の映画TOP10」の邦画部門で上位の常連だ。

 仁侠映画と仁侠Vシネマに付き物の抗争が描かれた作品だが、それだけではない。組織内の醜い出世争い、ヤクザ同士の嫉妬などもスケッチされており、一方的にヤクザを礼賛する作品にはなっていない。

 ほかにもヤクザが経済行為に介入する際の手口や、ヤクザと政財界人の癒着の構図などもリアルに描写されている。近年の地上波のドラマからは排除されてしまいがちな社会の裏側や闇の部分を見せてくれる。これが魅力の1つだろう。

 また、地上波は後部座席のヤクザの親分までシートベルトを律儀に着用する。暴力シーンはほとんど消えた。もちろん、「日本統一」は違う。ヤクザの生態を生々しく再現。敵対組織の人間や裏切り者は容赦なくいたぶる。かつての「仁義なき戦い」と同じである。

本宮と山口をVシネマ界の大スターに

 氷室は次々と実績を挙げたことから、現在では侠和会のナンバー2である若頭になっている。頭脳明晰で常に冷静である一方、情に厚い男なので、組織内の信望は厚い。田村は本部長に昇進。イケイケの性格で、抗争になると、俄然張り切る。「静」と「動」の名コンビだ。

 2人の上に立つ侠和会の会長は川谷雄一。演じているのは「顔面凶器」の異名を持ち、Vシネマ四天王の1人である小沢仁志(58)。氷室と田村を組幹部に引き上げたのは川谷だった。

「日本統一」という作品自体、小沢が本宮と山口をVシネマ界の大スターに引き上げようと考え、やはりVシネマ四天王である哀川翔(59)、白竜(68)と話し合い、企画したものだという。ちなみに四天王の残る1人は竹内力(56)だ。

 このため、「日本統一」には哀川も出演。丸打連合丸打組二代目三田組組長・秋本輝政役を演じた。だが、既に物語の中で死亡しており、画面から去った。

 白竜も二代目侠和会会長役で出演していたものの、途中でヤクザを引退したため、もう登場しない。過去には千葉真一(81)や故・梅宮辰夫さんら仁侠映画界のスターや故・津川雅彦さんも出演していた。

本宮は「芸能界喧嘩最強の男」

 小沢らが見込んだ本宮という役者がどんな男かというと、都内のミッション系高校に通っていたころは硬派で、洋ランを着ていた。長ランではない。丈がやたら長く、まるでロングコートのような学生服だ。

「当時まわりにはいっぱい不良グループとかありましたけど、僕は昔から群れるのが好きじゃなかった。だから喧嘩は売られればヤルってスタイルでしたね」*1

 高校時代はよく東京・渋谷センター街に行っていたという。洋ランを着て、不良学生もいるセンター街を歩いたら、「喧嘩買います」と宣言しているようなものなので、さぞ絡まれたことだろう。

 もっとも、メチャクチャ強かったので、自分がケガをするようなことはなかったらしい。今でも滅法強く、本宮とスパーリングをしたことのある総合格闘家の船木誠勝(51)が、「今すぐデビューできますよ」と太鼓判を押したことがあるくらい*2

 やはりVシネマ界のスターで、この作品にも登場する中野英雄(56)は本宮のことを「芸能界喧嘩最強の男」と評する。週刊誌で「芸能界で一番強いのは誰だ」という特集が組まれると、本宮は必ず名前が挙がる。

 なにしろ、オリンピックを目指してボクシングを真剣にやっていた時期があり、今も総合格闘チーム「アスプロスドラーゴ本宮塾」の塾長を務めているのだ。兄の原田龍二も猛者として知られるが、「弟とは喧嘩したくない」と漏らしているという。頭が良いだけでなく、腕っ節も強いという設定の氷室はハマリ役だったようだ。
 
 高校卒業後は専門学校へ進んだ。原田から何度も芸能界入りを勧められていたが、断り続けた。だが、1994年にスカウトされて、高岡早紀(48)主演の単発ドラマ「恋の宝石箱第1夜/シュプールは行方不明」(日本テレビ)でデビュー。原田も出演しており、兄弟共演となった。

 小沢らVシネ界の先輩のみならず、水谷豊(68)にも可愛がられており、このため「探偵 左文字進」(TBS)や「相棒」(テレビ朝日)など水谷の主演作にゲストとしてたびたび登場。飾り気のない硬派な性格で、実直なところが先輩たちを引き付けるようだ。

 その上、涼しい顔立ちの二枚目だから、女性にもモテた。夫人の松本明子も1996年にドラマの収録現場で一目惚れ。ぞっこんになった松本が猛プッシュを続け、2年後の1998年に結婚している。

「日本統一」の話に戻る。なぜ、ウケているかというと、その理由の1つは仁侠映画が消え、ドラマもマイルドになり、アウトロー物語やピカレスクロマンがVシネマ以外ではほぼ壊滅状態だからだろう。

 何もヤクザに憧れていたり、興味があったりする人ばかりが見ているわけではない。かつての仁侠映画もそうだった。いつの時代もアウトロー物語、ピカレスクロマンには一定のニーズがある。

 また、仁侠映画、仁侠Vシネマには人間社会の一端が凝縮されている。例えば悪意や裏切りが渦巻いているところ。表の社会も一皮剥くと、同じなのは説明するまでもない。だから面白い。

 氷室はヤクザ社会を統一し、本宮は大スターになれるのか。

*1 実話ナックルズ 2010年12月号
*2 時代劇マガジン 2005年2月号

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月24日 掲載