元SMAPの稲垣吾郎(47)、草彅剛(46)、香取慎吾(44)がジャニーズ事務所を離れ、自分たちのチーフマネージャーだった飯島三智氏(62)が代表の新事務所「CULEN」に移籍してから約3年半が過ぎた。3人の活動は順調、同社も安泰。同事務所から独立したスタッフの成功は初めて。剛腕と呼ばれる飯島氏の実像を浮き彫りにする。

「やっぱり飯島さんは良い仕事をするよ」

 ある芸能事務所の幹部がこう漏らしたのは1月26日。前夜に放送された香取主演の「アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜」(テレビ東京)の世帯視聴率が、7・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したからだ。

 テレ東はネット局が少ない分、制作費が他局より抑えられている。それなのに堂々の数字。ジャニーズ事務所の後輩・関ジャニ∞の大倉忠義(35)が主演する「知っているワイフ」(フジテレビ)の第3話までの平均世帯視聴率は約6・5%だから、それより上なのだ。反響も大きく、ツイッターの国内トレンドで1位になった。

 このドラマへの香取の出演を決めたのは飯島氏。というより、3人の主要な仕事は全て飯島氏が決める。CULENの代表兼ゼネラル・プロデューサーと言って良い。

 テレビ界の飯島評はこうだ。

「企画書も脚本もその良し悪しを即断できる人。企画書を見た途端、共演者は誰が良いかまで、スラスラと口にする。とにかく仕事が出来る」(フジ制作スタッフ)

 「アノニマス」も例え主役であろうが、凡作になると踏んだら、香取にやらせなかっただろう。

 役柄は警視庁の刑事。ネット上で他人を傷付ける匿名の犯人たちを追う。第1話では自殺したモデルをSNSで誹謗中傷した犯人を捕らえた。刑事ドラマはうんざりするほどあるが、斬新かつ今日的なストーリーだ。香取の演技も良い。やさぐれた雰囲気を色濃く漂わせながら、強さとやさしさも併せ持つ男を好演している。

 昨年9月に公開された草彅の主演映画「ミッドナイトスワン」はヒット。孤独なトランス・ジェンダー役の草彅は迫真の演技を見せ、日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を得た。エグゼクティブ・プロデューサーとして制作指揮を執ったのは飯島氏だ。

 草彅は2月14日にスタートするNHKの新大河ドラマ「青天を衝く」にも出演し、最後の将軍・徳川慶喜に扮する。慶喜は吉沢亮(26)が演じる主人公・渋沢栄一が仕えていた人物であり、主要キャストの1人である。

 草彅は昨年末、交際4年半の一般女性と入籍。仕事が順調だったからでもあるのではないか。誰でも仕事がうまくいかない時期は結婚を先延ばしにしがち。芸能界も同じである。

 稲垣が二階堂ふみ(26)とW主演し、同11月に公開された映画「ばるぼら」もまた好評を博した。稲垣は破滅してゆく耽美派の小説家を演じ、ハマリ役だった。

 また、稲垣が司会を務めるNHKの教養番組「不可避研究中」は2年目に入った。パーソナリティーを務める文化放送の「編集長 稲垣吾郎」は5年目を迎えている。

 CULENの3人は現在、順風満帆。同時に飯島氏も成功を収めたことになる。

 飯島氏の古巣であるジャニーズ事務所は1962年に創業された老舗であるものの、振り返ると独立したスタッフによる新会社が花開いた前例はなかった。出身者が数々の有力芸能事務所を作り上げた渡辺プロダクションやホリプロなどとは違う。

 背景には故・ジャニー喜多川さんが天才肌だったことがあるはず。スカウトや育成はジャニーさんの感性によるものだったので、周囲からすると、技術やノウハウの習得が難しかっただろう。また、テレビ局の目が独立組に厳しかったこともあるはずだ。

 だが、飯島氏にはジャニーさんも認めたほどの卓越した能力があった。まず眼力である。前述の通り、企画書や脚本が読め、スタッフの能力も見通した。

「飯島さんは誰が優秀で、誰と一緒に仕事をすれば良いのかをすぐに見抜く」(前出・フジ制作スタッフ)

 権力者に擦り寄るのとは違う。例えばSMAPのCDデビューから1年後の1992年、フジの新進ディレクターだった荒井昭博氏(58)=現BSフジ常務=の才能を見抜き、まだ売れてなかったメンバーたちを託した。

 これに対し荒井氏はSMAPを「夢がMORI MORI」(同)のレギュラーに起用した。その5年後メンバーの持ち味を知り尽くした荒井氏は「SMAP×SMAP」(1996年)、を立ち上げ、30%を超える視聴率を獲得した。

「アノニマス」の濱谷晃一プロデューサー(44)も才人として名高い。「フルーツ宅配便」(2019年)など味わい深いドラマを生み続けてきた。高校時代は偏差値29だったものの、一浪して慶応大に入ったと公言するアンチ優等生だ。

 幅広い人脈も飯島氏の強み。CULENを立ち上げ、2017年9月に3人が移籍してくると、約2年以上もジャニーズ事務所に忖度したテレビ局からパージされたが、財界人たちが応援団になった。だから3人はCMには絶え間なく出た。財界人たちには同事務所に忖度する理由がない。

 笹川陽平・日本財団会長(82)が一貫して全面支援しているのは有名な話。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社表(63)からも高く評価されている。

 孫氏はSMAPがソフトバンクのCMに出たことから飯島氏と知り合い、仕事への真摯な取り組み方を絶賛した。飯島氏がCULENを興した際には、芸能界内で「出資したのは孫さんではないか」と、まことしやかに言われたほどである。

 テレビ局、芸能関係者をアッと言わせたのは在京キー局から全く声が掛からなかった2018年12月のこと。RKB毎日放送(福岡)で3人がテレビに電撃復帰した。番組は彼らをメインとするバラエティー番組「略してブラリク」だった。

 TBS系の同局は九州の有力局であるものの、地方局なのでジャニーズ事務所との関係はないに等しい。3人の起用に障壁はなかった。なぜか飯島氏は同局幹部との間に太いパイプがあったので番組は実現した。やはり飯島人脈は強力なのだ。

 それだけにとどまらない。ローカル番組だったものの、全国で見られた。飯島氏はメルカリと組み、同社のサイトを使えば、どこでも見られるようにしたのだ。番組を見るには、メルカリの会員登録が必要だったので、同社にとっても良い話だった。これも飯島人脈が背景にあった。

 飯島氏の成功を多くの芸能事務所関係者たちが予想していたが、外れた読みもある。「飯島さんはジャニーズ事務所内で不満を抱いているタレントたちを受け入れる」という声が強かったのだ。けれど3人のマネージメントに専念している。3人にもっと大きな成功を掴ませたいのか、それとも古巣との衝突を避けたいのか……。

 木下工務店などを擁する木下グループの総帥・木下直哉氏(55)の信頼も厚い。木下氏は同社の創業家とは関係がなく、一代でグループを築き上げた。

 映画文化にも関心が高く、独立系の中堅配給会社・キノフィルムズの代表でもある。稲垣が主演した2019年の映画「半世界」、香取が主演した同年の「凪待ち」、そして「ミッドナイトスワン」はキノフィルムの配給なのである。

 ちなみに木下氏は昨年11月に他界した前東映グループ会長の故・岡田裕介さんと親しい関係にあった。映画界の革命児的な存在と言われている。

 飯島氏は財界人に応援されているからCMに強い。木下氏らに信頼されているので映画にも強い。パージされていたテレビにもほぼ復帰した。
 やはり剛腕である。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月1日 掲載