片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡31

 激動の2020年を経て、片寄の中で新しく芽生えた考え方。あるいは、「ニューノーマル」の初夢について。

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拝啓 小竹正人さま

“時代が変わる”という言葉を最近かなりよく耳にします。確かに世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスは、今までの当たり前を完全に忘れさせるほど、新しい当たり前を生み出しました。

 俗に言う「ニューノーマル」とやらです。

 また占星術の観点からも、昨年は約220年ぶりに「土」の時代から「風」の時代に激変した年などと言われているそうです。

 小竹さんはどなたかから耳にされましたでしょうか?

 まあどんな謂われがあるにせよ、2020年という時間を経験して価値観が変わったという方は、少なくないのではないかと思います。

 僕自身もそうだったのですが、そんな僕がふと日常生活のなかで思いついた新たな価値観の"種"を、こっそりここに綴らせていただきます。

 ある冬の日の午前中に、行きつけのコーヒー屋さんに行きました。

 いつものようにその店のバリスタさんがその場でドリップしてくれる、香りの素晴らしいホットドリップコーヒーを買って店を出ました。

 コーヒー屋を出てふと向かいのビルのほうを見ると、そのビルの前にはひとりの警備員の方が立っていました。

「こんな寒い朝からご苦労さまです!」と心のなかで思うと同時に、「もしいきなりこの警備員さんに、この僕がいま握っているコーヒーを渡したらどうなるんだろう?」とふと思いました。

 見ず知らずの人から、買いたてのコーヒーをいきなり渡されたら、自分ならかなり驚くだろう。職務中なので…と言って、受けとらない可能性のほうが高い。

 ましてやこのコロナ禍で、見知らぬ人からもらったものを口にするなんてことは、全くもって“ノーノーマル”な話です。

 ですが、もしかするとこんな小さな思いつきのなかに、新しい時代の価値観のヒントがあるのかもしれないな、なんて思ったのです。

 僕はあのコーヒー屋さんを出たときに何故そんなことを思いついたのか、とまず考えました。

 冷たい風に刺されながら、ずっと立ったまま仕事をなさっているその方の大変さが一瞬で伝わってきたのだと思います。

 そんな方に少しでも温まってほしい、コーヒーの香りに癒されてお仕事を頑張ってほしい、多分そういう想いだったのだと思います。

 つまりこの瞬間、自分が飲みたいと思って買ったコーヒーよりも、寒空の下で警備のお仕事をなさっている警備員さんに渡すコーヒーのほうが、同じコーヒーでも価値があるように感じたのです。

 僕がふと思いついた新しい価値観の"種"。

 それは「支えたり助けたり応援したいと思う誰かに向けて、小さな心遣いを込めてお金を遣ってみよう」的な感じですかね。

 ですが、もしそうやって多くの方々が誰かを想ってお金を遣っていって、そんなサイクルの社会ができたら、きっと争いごととか妬みごととかとっても減るんだろうなあ。

 そんなに都合のいい話あるわけないと言われるかもしれないですが、“時代が変わる”と言われる今だからこそ、そんなニューノーマルの夢を見ても許されますよね。

片寄涼太

敬具

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS、25枚目のシングル「雨のち晴れ」が発売中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2021年2月21日 掲載