片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡38

 連載終了がいよいよ近づいてきて、「往復書簡の相手に片寄涼太を選んだ理由」について、小竹が明かす。

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拝啓 片寄涼太様

「もしもし、涼太? 往復書簡の連載がもうすぐ終わってしまうらしいよ」

 と、君に電話しようかと思っていた矢先、君からの書簡が届いた。

 新型コロナウイルスなどという言葉をまだ誰も知らない頃に企画があがり、あっという間にそのウイルスに当たり前の日常を奪われ、コロナ禍ゾワゾワの真っ只中にスタートしたこの往復書簡。

 これが終了するということは、コロナウイルスも収束するのだろうか……と祈りのような願いのような気持ちが胸にふつふつ。

 以前も書いたが、この連載の執筆中に私はやたらと自分の若かりし日々のことを思い出した。人生を変えてしまった大きな出来事からすっかり忘れていたと思っていた些末なことまで。

 私がアメリカ生活を終え帰国して、ホンモノの社会人となったのはちょうど今の君くらいの年齢。

 私はアメリカ生活で吸収したもので頭も心もパンパンで、今よりずっと大袈裟な喜怒哀楽を抱えながら生きていた気がする。

 この連載での君の文章を読むたびに、自分にもそういうことがあったなあ、とか、自分はこうだったなあ、とか、今の君の状況を当時の自分のそれに当てはめる機会が多々あった。

 君からの手紙が着火剤となって思い出の焚き火がどんどん燃えていたような、そんな数か月でした。

 君は、時に素直に時に辛辣にいろんな思いを吐露してくれた。

 前回のワインショップの店主とのやり取りやもっと前のタクシードライバーとのエピソードなど、君が出会った誰かのこと、君がその誰かに対して抱いた心情、そういうものを読むのが私はとても好きだった。

 だってさ、私と君って、食事に行ったり飲みに行ったりしてもあまり他人のことを話さないじゃん?

 仕事で会うときはプライベートであったささやかな出来事の話題なんて絶対に出ないじゃん?

 この往復書簡をやっていなかったら絶対に知らない「君」をたくさん知れたのは、なんかよかった。

 これって先輩的な気持ちではなく、どちらかというと親心の類かも。離れて暮らす君の両親もきっとこの連載をとても楽しんでいたと思う。

 さて、この連載が始まった頃に、「往復書簡の相手に片寄涼太を選んだ理由は追々書き綴る」と記していた私。

 その理由は実にシンプル。私が頻繁に連絡を取り合っていた大勢の後輩(10代20代)の中で、ずば抜けて魅力的かつ正しい日本語の文章を書いていたのが君だったからです。

 普段から仲のいいそんな涼太と一緒に、手紙という名のエッセイの連載をやったら楽しいだろうし、「読み物」としてちゃんと成立するだろうなあと思った次第。

 そしてもうひとつ、一番大事だったのが、片寄涼太には「情緒」があるということ。

 君以外にも、思わず笑ってしまうような楽しいメールを送ってくれる後輩もとても礼儀正しい侍のようなメールを送ってくれる後輩もたくさんいる。

 ただそこに情緒が見え隠れしないと私の心には引っ掛かり続けない。

「何を偉そうに」と思う人もいるだろうが、生業が作詞家なくらいだから、私は情緒があること、情緒に溢れるもの、情緒が滲む文章なんかをやたらと重んじる性格なのである。

 ありきたりな例えだが、咲いた桜を綺麗だと思い、散った桜を儚いと思う、そういう情感を間違いなく君とはズレがなく共有できると長い付き合いの中ですでに知っていたので。

 君の文章力は私の想像より遥かに高く、「えっ、こんなに書けるんだ?」と、正直たじろいでしまったほどだったが、文通相手に選んだ君がこの連載を引き受けてくれたことはもちろん、「本当の手紙」を何通も私に書いてくれたことを嬉しく思う。

 冒頭でも触れたが、この往復書簡は最初から最後までコロナ禍において行われ、君と直接会ったのはたったの1回(七夕か? 彦星と織姫か?)、それもこの連載に関する打ち合わせだった。

 10年前から君に会うときはいつだって美味しいものをいただきながらだったのに、何も飲み食いせずにずっとマスクをしたままで、あの日の会議室の様子は異様な光景として私の脳裏に焼き付いている。

 そう思うと私たちはものすごい時期に手紙を交わしていたのだね。忘れたくても忘れられないね、きっと。

 ちなみに、次回の私から君に送る手紙がこの往復書簡のホントの最終回。

 私は、「返事の来ない手紙」を書くことになる。最後だからこそ、誰も興味がないような私自身のことを綴りたいと思う。

 最後だからと気負わずに、焚き火の火が小さくなるみたいにゆる〜い感じでね。

 さて、片寄涼太、今回のこの手紙への返事が、私が君から受け取る最後の手紙になる。果たして君は何を綴るのだろう?

小竹正人

敬具

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS、25枚目のシングル「雨のち晴れ」が発売中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2021年4月11日 掲載