最近、「クラフトコーラ」商品が続々と増えている。その名を聞いたことがあっても、実際に飲んだことがあるという人は、意外と少ないのではないだろうか。コーラ専門サイト「コーラ倶楽部」代表で、専門メディア「Cola-Fan」の編集長も務める空水りょーすけ氏が、知られざるクラフトコーラの世界を紹介する。

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「クラフトコーラ」と呼ばれる飲み物を、皆さんはご存じですか?クラフトコーラとは、その名の通り「手作りのコーラ」ないし「手作り感のあるコーラ」全般を差します。しかし、はっきりとした定義が存在するわけではありません。多くは柑橘類や砂糖、スパイスやハーブ類にこだわって丁寧に作られたコーラで、その味わいは新鮮で深みがあり個性的で、「生のコーラ」という表現がぴったり。そして、そんなクラフトコーラがこの数年で爆発的に増加をしています。

 なかでも今年6月の勢いはすごいものがありました。これまで比較的小規模に作られることが多かったクラフトコーラですが、大手企業から続々と商品が登場したのです。6月半ばにカルディコーヒーファームが「ドライクラフトコーラ」を売り出したのを皮切りに、20日には高級スーパーの成城石井から「成城石井クラフトコーラ」、21日にはポッカサッポロフード&ビバレッジから「THE CRAFT COLA」。そして22日には、あのペプシコーラも「ペプシ〈生〉」という、どこかクラフトコーラに寄せた商品を販売しています。なぜこんなにも、クラフトコーラが続々と登場するのでしょうか?

 ブームの様相を呈しているクラフトコーラですが、火付け役は、「伊良(いよし)コーラ」と「ともコーラ」という二つのクラフトコーラブランドです。どちらも2018年に誕生し、現在まで業界内に君臨し続ける「二大巨頭」です。そして、この二大ブランドの登場以降、クラフトコーラの開発が北海道から沖縄まで全国的に行われました。そして現在、私が調査する限りでは300種類を超えるクラフトコーラが誕生しています。

コーラが「誰でも作れる」ことに気づいた

 クラフトコーラという言葉が登場する以前、コーラの製造販売は工場をもつ飲料メーカーが殆どでした。というのも、工場で大量生産したコーラを安定的に供給するためには、安価な甘味料や香料、そのほか添加物の使用が欠かせません。使用の是非はともかくとして、こういった業務用の原料は、小規模な生産者はなかなか入手しにくかったのです。

 また、レシピの問題もありました。コーラのラベルの原材料の表を見ても、「甘味料、香料、酸味料、着色料」と書かれているだけで、コーラを作るのに何が必要なのかは分かりません。ゆえに、飲料メーカーのコーラの真似をすることは非常に難しかったのです。もちろん、自家製コーラのレシピというものは当時からネットにありましたが、一般的ではありませんでした。そのため「コーラは作るものではなく買うもの」と誰もが思っていたのです。

 そんな時代にコーラを自作しようと思い立った方が、先述した伊良コーラ代表のコーラ小林(小林隆英)氏です。小林氏は偶然ネットで『100年以上前に書かれたコカ・コーラのレシピ』を発見し、「感動するほどの究極のコーラを作りたい」との想いから、コーラづくりを究めることにされたそうです。そうして作られた伊良コーラが評判になるにつれ、クラフトコーラも認知されていき、「コーラって手作りできるんだ」と気づく人が増えていきました。

 クラフトコーラの原材料は、飲料メーカーのものとは異なり、主にきび糖やてんさい糖等の砂糖、レモンやライム等の柑橘類、ドライのスパイスやハーブが使われます。これらはスーパーでも入手しやすく値段も手頃です。最近ではクラフトコーラ用にスパイス類を小分けにした商品も販売されています。このように、誰でも簡単にコーラが手作りできる環境が急速に整備されていきました。今ではネット上にクラフトコーラのレシピが散見され、youtubeでは製造過程を撮影した動画も投稿されるようになりました。

地域をPRできる

 いわゆる「ご当地商品」として売り出しやすいことも、クラフトコーラブームの一因でしょう。先述の「ともコーラ」は、天然由来の材料を使用した完全無添加が特長で、ブランドを手掛ける調香師の古谷知華氏は、2019年から「ご当地クラフトコーラプロジェクト」を展開。これまで多くの地域で地元の生産者の方々と協力し、その土地土地の農作物を使用したクラフトコーラを開発しているのです。

 例えば「高知クラフトコーラ“sawachina”」には、県産の柑橘類や和ハーブなどが使用されています。「sawachina」という名前の由来は高知の郷土料理の「皿鉢(さわち)料理」に由来し、色々な料理を一つのお皿に乗せて楽しむ食文化を、クラフトコーラで表現しようとしているのです。sawachinaはシリーズ化しており、現在3種類の異なる高知の味をコーラで感じることができます。

「ぎふコーラ」は地域の薬草文化を未来へと守り続けることを目標とし、岐阜県の旧春日村で採れたよもぎ・かきどおし・どくだみ・ヤブニッケイなどの薬草が使用されています。薬草の存在感を楽しみながらも、コーラ全体の調和は取れているバランスの取れた味でした。

 この他にも、全国には様々なご当地クラフトコーラが存在し、地産の農作物を使用したり、地域課題解決へ挑戦したりしています。似たような例として「地ビール」が思い浮かびますが、地域をPRするアイテムとしては、老若男女が楽しめるコーラは適任といえるでしょう。

需要は十分にある

 すでにクラフトコーラを飲んだことがある人には、「高い」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかたもいるかもしれません、最近は安価な商品も登場しているとはいえ、クラフトコーラの価格のボリュームゾーンは、だいたい500円前後。自分で炭酸水を用意し希釈(大体3〜4倍)するシロップタイプの商品もあるのがクラフトコーラの特長ですが、こちらは、200mlの瓶で1000〜2000円程となります。一般的な感覚としては、たしかに「高い」と感じることでしょう。しかし、この価格にふさわしい価値があり、なにより高い需要があるのです。クラウドファンディングサービスで様々なクラフトコーラのプロジェクトが企画され、続々と成功を収めているのがその証拠でしょう。

 瀬戸内の魅力を詰め込んだ「瀬戸内三豊コーラ」は、今年3月8日にCAMPFIREで先行販売向けのクラウドファンディングをおこない、わずか1日で目標金額の70%を達成するという驚異的な記録を打ち立てています。最終的には目標金額の2倍以上となる103万3300円の支援が集まりました。

「Jiu 慈雨」というクラフトコーラを販売する福島の合同会社SHINRAも、今年5月22日にMakuakeで新規ドリンクのプロジェクトを開始し、三時間足らずで目標金額を達成しました。支援募集は今も続いており(7月4日まで)現時点で150万円を超える支援がなされています。このように、「高くても、良いものを飲みたい」と考える需要が確かに存在するのです。

 また、新発売のクラフトコーラが、すぐ売り切れたり品薄になったりすることが多いです。カルディの「ドライクラフトコーラ」は発売後ずっと品薄状態で、私も入手するのに苦労をしました……。このように、新しい種類のクラフトコーラを発見した時には、既に売り切れているということもよくある話です。

 むしろ、個人的な感想をいえば、すでにクラフトコーラファンの需要に、供給が追い付いていないように感じます。そんなところに、大手から続々とクラフトコーラが登場したわけです。より広く存在が知られるようになるであろう今後は「クラフトコーラ不足」が懸念されます。というのも、先述したようにクラフトコーラは「大量生産・大量消費」の真逆に位置しており、簡単に増産できるものではないからです。 

最近の世相も追い風に

 昨今のノンアルコール飲料の普及も、クラフトコーラにとって追い風かもしれません。欧米では「ソーバーキュリアス」と呼ばれる、あえて飲酒をしないという選択をする人々も登場するようになりました。また、アルコールハラスメントという言葉も世間に浸透し、飲みの席でもノンアル需要は増加してます。

 とはいえ、現状では、ソフトドリンクメニューがそれほど充実していないお店も多くあります。「UMAMI COLA」代表の山田貴久氏は、膵炎を患った関係でアルコール類が一切飲めなくなりました。グルメでもある山田氏は退院後に様々なお店に行き、そこでノンアルコールドリンクの選択肢の少なさに気づいた経験が、「UMAMI COLA」開発の理由の一つになっているそうです。

「アルコールが入っていないからこそ美味しい」という、新しい価値観を開拓しようという野心をもった人々が、クラフトコーラ業界に集まってきているようにも感じています。そういった人々は決してお酒が苦手なのではなく寧ろ大好きであり、それ以上に新たな飲料の開発に挑戦しようとする熱い心を持った人々なのです。

 飲食店での酒類提供が自粛要請されたもとで、一時的に自家製のクラフトコーラを出すbarも見かけるようになりました。ゴールデンウイーク中だけの期間限定のつもりで販売したクラフトコーラが好評で、現在でも販売を続けているお店もあります。酒類の規制で清涼飲料が発展するという現象は、禁酒法時代のアメリカと非常によく似ていると思います。

「クラフトビール」や「クラフトジン」など、素材や製法にこだわったアルコール飲料が、その地域で愛されていました。そして今度は、老若男女問わず楽しむことができる「クラフトコーラ」の番なのです。

お勧めのクラフトコーラ3選

 最後に私のお勧めのクラフトコーラをご紹介したいと思います。

【その1 UMAMI COLA】

「UMAMI COLA」は、新潟の有名な酒蔵、八海山の麹甘酒がベースとなったクラフトコーラです。エルダーフラワー、ホーリーバジル、シークヮーサー等が核となったシロップはとても香り豊か。お米由来の優しい甘さとコーラ感との相乗効果は想像以上で、とても滋養強壮に効果がありそうです。私は仕事柄、沢山の種類のコーラを飲むのであまりリピート購入はしないのですが、「UMAMI COLA」だけは何度も飲んでいます。

【その2 TOBA TOBA COLA】

「TOBA TOBA COLA」は、鹿児島県喜界島在住のご夫婦が丹精込めて作られているボタニカルクラフトコーラです。喜界島の在来柑橘種である島みかんが使われ、その酸味の強い香りが極上です。クラフトコーラでよく使われるきび糖も、TOBA TOBA COLAには喜界島産のきび粗糖が使われています。コーラの語源となった「コーラナッツ」も使われていますよ。

【その3 カカオ生コーラ】

「カカオ生コーラ」は京都の食品ブランド「SIZEN TO OZEN」が発売しているクラフトコーラです。コーラナッツの代わりにカカオを使用しているのが特長です。とにかく濃厚で、カカオと柑橘類とスパイス類の合わさったコクのあるシロップは唯一無二の個性を発揮しています。スモーク瓶にシックなデザインなのでプレゼントにも最適です。

 以上お勧めをした3種類のうち「UMAMI COLA」と「TOBA TOBA COLA」は、赤坂のカフェ「CAFE SANS NOM AKASAKA」で飲むことが可能で、店内ではシロップ瓶も販売しています。ぜひ一度、足を運んで飲み比べてみてください。

 勿論、全国に何百種類もあるクラフトコーラは、どれもこれも魅力に溢れています。ぜひ皆様も見かけたらお手に取ってみてください!

空水りょーすけ
コーラ専門サイト「コーラ倶楽部」代表、コーラ専門情報メディア「Cola-Fan」編集長。10年ほど前にコーラ趣味を志し、現在まで様々なコーラを飲んできました。「コーラとは何か?」という疑問の答えを見つけるために活動しています。Twitter(@soramizuryosuke)

デイリー新潮取材班編集

2021年7月1日 掲載