厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果(令和元年)によると、肥満の割合は、男性33.0%、女性22.3%に上る。これは、BMI(体重(kg)/身長(m)の2乗で算出される肥満ややせの判定に用いる指数)が25以上の者を指し、男性に関しては、平成25年以降、その割合が増加しているという。
 むろんひとくちで肥満と言っても、その程度は様々であろう。ぽっちゃりと表現するのか、デブと表現するのかによっても印象は異なるが、ここでは敢えてデブという表現を使い、その魅力を解説する。

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「デブのデブによるデブのためのファッション&ライフスタイル情報」を配信するウェブマガジン『Mr.Babe』の編集長の倉科典仁氏に話を聞いた。

「“日本人男性の3人に1人がデブ”といっても、街には標準体型の人が溢れ、痩せていることが美徳という空気があります。だから、太っていることにコンプレックスを持っていて、恋愛にも消極的なデブが少なくありません。ですが、太っていることだけが理由で、異性にモテないということはないと思います。デブでも、身なりに気を遣ってポジティブな人は、恋愛でも上手くいっているんです」

 ポジティブなデブ「ポジデブ」になるためには、ファッションが重要だと倉科氏は言う。

「デブの人が服を選ぶのはすごく難しい。例えば、お腹が出ているからとお腹周りに余裕がある3Lサイズのシャツを着ると、裾が長すぎて不格好に見えるんです。身長に合わせて裾は短く、ほど良いゆとりのあるシャツがあれば、デブの人でもファッションを楽しめる。そうすると、ジャストフィットなファッションアイテムを着られる喜びや楽しさが生まれ、人との出会いにも前向きになれるはず。他にも、汗をかきやすい人が多いので、臭いを抑える機能が欲しいといったデブ特有のニーズもあります。そこで、我々はファッションブランドなどの衣料品メーカーとタイアップし、デブ向けの商品開発もしています。少しずつではありますが、最近はデブでもお洒落に着こなせる服が増えてきました」(同)

デブはモテる

 不景気になると、ぽっちゃりした女性がモテるという話があるという。癒やしを求める気持ちが高まり、丸みを帯びた体型に安心感を覚えるから、という理由らしいのだが、癒やし効果のあるぽっちゃりした男性の人気も根強いという。

「特に、結婚を意識し始める20代後半くらいの女性は、いわゆるイケメンでモテる男性より、安心感のあるデブに惹かれるということが多いようです。結婚して長い時間を共に過ごすなら、性格や経済的な安定が重要だと考えるのでしょう。だからこそ、学生時代や若い頃にはモテなかったデブの男性も、諦めずに内面を磨きつつ身なりにも気を遣って欲しい。ネガティブにならなければ、ウサギと亀のようにいつか立場が逆転して、デブでも素敵なパートナーと出会えると思います」(同)

 倉科氏は、2015年に日本初のぽっちゃり系メンズのファッション誌として『Mr.Babe』を創刊した。ちょうど同じ頃、アメリカでもぽっちゃり男性人気が話題になったという。

「2015年1月に、アメリカのクレムゾン大学の学生が『Why Girls Love The Dad Bod(なぜ女の子はお父さん体形が好きなのか)』というコラムを発表したのです。ダッドボッド(Dad Bod)というのは、いわゆるビール腹のようなぽっちゃりした体型を指します。このコラムは大きな話題になり、アメリカにダッドボッド好きの女性が多いことが証明されたのです」(同)

 撮影のオフシーズンにパパラッチされ、「激太りした」とも言われた俳優のレオナルド・ディカプリオがダッドボッド好き女性の憧れだと言う。

「デブの男性は触れた時に柔らかく、癒やし効果があるだけでなく、おおらかでさっぱりした性格の人が多い気がします。一緒にいるだけで女性はスリムに見えますから、ダイエットしなければならないというプレッシャーからも解放されるんです」(同)

100キロ超のモデル

「Mr.Babe」のサイトでは、「ビッグサイズマスクの現状と夏のマスク問題。最新のデブマスク事情は?」、「『アロハシャツ』がデブに似合う理由とは」など、デブに特化した情報を発信している。

「かくいう私も、身長174cmで、体重は85キロくらいあります。以前は『メンズナックル』というホストなどが登場する渋谷系の雑誌の編集長をやっていたので、モデルやスタッフはスタイルの良い人ばかりでした。そんな雑誌の編集長がデブで良いのかと、負い目を感じることもあった。それが今は、80キロ台なんて全然デブじゃないって馬鹿にされるくらいです。現在、『Mr.Babe』には20人くらいのモデルがいますが、その内8割くらいが体重100キロを超えています。そういう“プロのデブ”には、なかなかなれるものじゃないんですよ。たくさん食べるからといって誰もが100キロを超えられるというわけではなんです。やはり、体質や骨格の問題なのでしょう」(同)

 ポジティブなデブになるには、適度なエクササイズをし、健康上の問題がないことが前提だという。

「サンドウィッチマンの伊達みきおさん(46)や渡辺直美さん(33)など、ぽっちゃりで好感度の高い芸能人は多い。そういった方は、ぽっちゃりしているから人気が高いというわけではなく、ご本人のキャラクターや芸が愛されているわけです。だから、デブの人も、「どうせ自分はデブだから…」と体型を言い訳にせず、逆に自分の体型を肯定して、愛せるようになれば、ますますその人らしい魅力にあふれるようになり、人間関係も円滑になると思います」(同)

デイリー新潮取材班

2021年7月26日 掲載