NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の東京編で、ヒロインの永浦百音(清原果耶)は築地の銭湯「汐見湯」に下宿している。銭湯をリノベーションしたシェアハウスという設定だが、撮影には、東京・大田区にある明神湯の外観とその周辺が使われている。女将の大島みつ子さん(69)に話を聞いた。

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 ドラマでは、明神湯の宮造りの外観が連日のように映し出される。この銭湯、開業は1957(昭和32)年だそうだが、中に入ると、昭和のレトロな空間が広がっていた。脱衣場で上を見上げると、折り上げ格天井。風呂場には、富士山のペンキ絵。番台の上には大黒様と恵比寿様が祀ってある。床は掃除が行き届いてピカピカ光っていた。

「朝ドラの影響でお客様から『2階には貸間があるのですか?』と聞かれます。『うちはシェアハウスはやっていません。ドラマの部屋は、スタジオセットです』とお答えしています」

 と語るのは、大島みつ子さんである。

「昨年の秋頃、NHKから銭湯を拝見させてくださいと話がありました。ロケ地はいくつか候補があったようですが、最終的にうちに決まりました。ロケで、清原さんや及川亮役の永瀬廉さんがいらっしゃいましたが、撮影が終わった後、2人で『ありがとうございました』と。爽やかな方々でしたよ。このドラマ、毎朝録画して観ています」

印象に残った森光子

 実を言うと、明神湯は、何度も映画やドラマ、CMにロケ地として使用された、業界では知られた銭湯だ。

「最近では、今年1月から放送された『ウチの娘は、彼氏ができない!!』(日テレ系)で使用しています。主演の菅野美穂さん、浜辺美波さん、岡田健史さん、中村雅俊さん、沢村一樹さん、豊川悦司さんもいらっしゃいました。うちは銭湯の横にコインランドリーを設置しているのですが、ドラマではそこをたい焼き屋にしていました。菅野さんは21年前にもロケで来ていただいたことがあるのですが、当時と全然変わっていないのでびっくりしました」(同)

 菅野美穂の夫、堺雅人も明神湯で映画の撮影をしたことがある。

「堺さんは2012年の映画『鍵泥棒のメソッド』の撮影で来られました。今年、菅野さんがいらした後、堺さんもマクドナルドのCMでお越しになり、『8年前の映画以来、ご無沙汰いたしております。先日は、家内が大変お世話になりました』と挨拶していただきました」(同)

 これまで印象に残った俳優は、2012年に亡くなった森光子さんという。

「リクルートの『とらばーゆ』のCMで訪れた、当時84歳の時にお越しいただいたのです。華奢なのに、あのエネルギーはどこから出ているのか驚きました。私たちになにかと気を使ってくださって、温かい人でした」(同)

 女湯の脱衣場には、レトロなお釜ドライヤーがある。

「カメラマンの蜷川実花さんがうちに撮影に来られた時、お釜ドライヤーにぞっこん。『これ、動かなくなったら、是非ください』と。赤がお好きなんですね」(同)

 銭湯を舞台にした映画『水の女』(2002年)では、

「主演のUA(ウーア)さんは、出番が来るまで女湯の脱衣場にあるソファーに座って、ゆったりと過ごされていたのが印象的でした。生田斗真さんが出演されているアース製薬の『バスロマン』のCMもうちで撮影したのですが、その時のカメラマンが偶然にも『水の女』のカメラマンでした」(同)

 昨年は、サントリーBLUEのCMで川口春奈が明神湯で撮影をしたという。

経営は厳しい

 明神湯には3種類のお風呂がある。

「泡風呂に、熱い湯、それに薬湯です。薬湯は、日曜日はラベンダーを入れますが、それ以外は、その日の陽気によって、森林浴や体の芯が温まるものなど、色々使い分けています」(同)

 料金はこの8月から10円上がって大人は480円。6歳から12歳までが180円。6歳未満は80円だ。大人が小学生以下の子どもを連れてきた場合、2人まで無料になる。営業時間は16時から22時まで。

 ご承知のように、都内でも年々銭湯は減りつつある。

「40数年前に私がここに嫁いできた時は、お客様は沢山いらしたのですが……。経営はなかなか厳しいですね。コロナの影響で、毎日いらっしゃったお客さんも見えなくなりました。ですから、ロケ収入にはずいぶん助けられています」(同)

 番台には、女将さんが座る。

「パートの女性と交代で番台に座っています。北海道で地震が多発したとき、そのうち東京にもと思っていたら、いきなり縦揺れの地震がきたので、女性客に知らせようとあわてて番台から降りようとしたところ、落下してしまいました。手を骨折し頭にコブができましたが、たまたまお風呂にいた元看護婦さんから『早く冷やしなさい』と」(同)

 明神湯は、先代が開業したという。

 ご主人の昇さん(69)はいう。

「息子には、銭湯のメンテナンスのやり方をなにも教えていないので、跡を継ぐのは無理でしょう」

明神湯は、主に薪を燃やしてお湯を沸かしている。そのため湯質は柔らかく、温まりやすいという。

「でもね、薪を燃やすから毎朝窯に溜まったススを掃除しなければならないから大変なんです。薪は、解体業者から仕入れていて、古い家屋の柱を2トントラックにいっぱい積んで持ってきてもらうのですが、夏だと1週間で、冬はわずか4日でなくなってしまいます」(同)

 銭湯の掃除は、息子さん夫婦や中学生の2人の孫も手伝っているという。

「銭湯を維持していくのは大変です。私たち夫婦の体力がなくなれば、そこでお終いだと思っています」(女将)

デイリー新潮取材班

2021年8月31日 掲載