親の金銭問題、知名度の差、強行婚。どこかのプリンセスの結婚の話ではなく、辻ちゃんと杉浦太陽さんご夫婦の話である。結婚当初は批判が多かったものの、いまや安泰のおしどり夫婦として、好感をもって見られるようになってきたのではないだろうか。

 辻ちゃんこと辻希美さんが、できちゃった婚を発表したのは2007年。19歳の時だった。加護ちゃんこと加護亜依さんとともにモーニング娘。の末っ子ポジションで、「ミニモニ。」として大人気だった辻ちゃん。幼い見た目を売りにしていた現役の国民的アイドルが、できちゃった婚というギャップは大きな反響を呼んだ。結婚の前年には加護ちゃんが喫煙で活動自粛。さまざまな経緯から、当初は祝福よりも批判の声が多かったものだ。開設したブログは何を書いてもネットニュースになり、炎上職人とまで呼ばれていた。特に料理の写真や子育て風景を投稿すると、否定的なコメントだらけになる。「とったばかりのイチゴに練乳をかけるなんて」など、もはや難癖に近い反応まであった。

 夫である杉浦さんは、「ウルトラマンコスモス」への抜擢で注目を集めたイケメン俳優。しかし結婚当初は、まだまだ辻ちゃんの方が全国的な知名度は高かった。それゆえ批判の矢面に立つのは辻ちゃんだったが、杉浦さん自身も過去に誤認逮捕されていたことがスキャンダラスに報じられたりするなど、夫婦そろって白い目で見られがちだった。第2子誕生後には杉浦さんの実父の借金問題で暴力事件に巻き込まれ、警察沙汰にもなった。本人たちがどれだけ頑張っていても、必ず足を引っ張るニュースが出る。世間の風当たりは、つい数年前までまだまだ冷たかった。

 風向きが変わったのはつい最近ではないだろうか。芸能人のゲス不倫が続出し、有名ママタレたちも次々に離婚。アイドルといえばハロプロから坂道系に人気の主体が移り、モーニング娘。OGたちも不倫や事件が相次いでいた。一方で辻ちゃん夫婦はどうせ上手くいくはずないと言われながら、負けず腐らず二人三脚で歩んできた姿がようやく認められるようになった変化を感じる。夫婦でのテレビ出演もコンスタントにあり、2年前に始めたYouTubeチャンネルも90万人超の登録者を持つ。「炎上」ブログ時代とは打って変わって、多くのコメントも好意的だ。毎回炎上ネタにされようとめげずにブログ更新を続ける辻ちゃんの強さも、今は一周まわって頼もしいと評価されはじめた。本来の二人の前向きなタレント性が、15年近く経ってようやく日の目を見るようになってきたのである。

長期戦の覚悟がいる強行婚 ファンだけでなくアンチもつかんで離さないビジネスセンス

 とはいっても、それは辻ちゃんたちの人柄や運の良さ、という短絡的な話でもないだろう。自分の稼ぎを失わないよう、長期戦の覚悟でファンもアンチも増やしてきた辻ちゃんのビジネス力のたまもののように思うのだ。

「そんな結婚やめておけ」という周囲の反対を押し切って結婚するケースはいくらでもある。一般人なら表立って問題はないだろうが、公の場に出る職業はそうはいかない。自分の顧客やファンが収入源なのだから、彼らの支持を失っては結婚どころか生活が立ち行かなくなってしまう。

 辻ちゃんにとっては、それがアイドル時代やママタレント時のファンであり、ブログのアンチ読者であったはずだ。結婚によって一部のファンは離れたものの、より注目度が上がったのは事実である。自身のワガママや相手のトラブルで離婚となれば好感度は落ち、ファンもアンチも失う。が、健気にブログをつづって結婚生活を続けていれば、ファンは応援してくれるし、アンチも離れない。当時の夫は自分より知名度がなく、幼い子どもたちを育てるには頑張るしかなかっただろう。結婚当初はワンオペ育児にもなり離婚寸前までいったと話していたが、もし離婚をしていたら家族だけでなく経済力も失っていたはずだ。

 フリルのついた服やふんわりしたシルエットのスカートなど、常々お姫様然としたファッションを好んでいた辻ちゃん。かつては後藤真希さんのお母様のお葬式で、頭に大きなリボンとバリバリのつけまつ毛をつけて参列し、さすがに非常識だと反感を買った。強行婚に浮かれたお姫様アイドルというイメージも、そうした行動によって色濃くなったのだろう。思えばお姫様とは、単純に王族や貴族の未婚女性だけでなく、世間知らずな女性をからかう時に使うこともある。しかし今の辻ちゃんは、世間知らずどころか世知に長けているようにさえ見えないか。自分がどう見られているかを自覚し、ファンやアンチを裏切らない行動をとり続けられるビジネスセンスとタフさは、並大抵の女性にはつとまらない。もはや内実ともに、プリンセスどころか女帝といった方がしっくりくる安定感。ママタレ界、ひいては芸能界の女帝となる日も近いかもしれない。

冨士海ネコ

2021年9月30日 掲載