人類はギリシャ神話の時代から「不倫」を繰り返し描いてきた。かくも馴染み深い題材だけに、物語は手垢のついた展開となりがちだ。しかし今夏、同じテーマを扱いながら、一風変わった趣の作品が女性たちに支持され、静かなブームとなっていた。彼女たちは一体、何にハマったのか。

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 この夏もまた、テレビでは相も変わらず不倫を主題としたドラマが盛況だった。テレビ東京系の「にぶんのいち夫婦」に「ただ離婚してないだけ」、MBS・TBS系の「サレタガワのブルー」といった具合に……。

 ただ、SNSなどで女性たちの話題をさらっていたのは、テレ東系の「うきわ ―友達以上、不倫未満―」である。8月から毎週月曜23時OA。9月27日に最終回を迎えたが、深夜枠ながら話題を集め、ネットには終了を惜しむ“うきわロス”なるワードもあふれた。

 話の筋は以下のごとし。東京のとある社宅に広島から若い夫婦(妻役を門脇麦)が転居してくる。お隣には上司夫妻(夫役を森山直太朗)が暮らしていて、門脇は森山と交流を持つように。やがて、門脇は夫の不倫を、また森山も妻の不義を知り、門脇と森山はともに“配偶者に裏切られた被害者”として悩みを共有。お互いに惹かれ合っていく――。

名付けられない関係性

 ポイントは、通常の不倫モノと違って主役同士(門脇と森山)が最後まで決して深い仲にならない点だ。

 ライターの吉田潮氏に感想を聞くと、

「門脇の素朴さと森山の朴訥とした演技が良かった」

 と評し、次のように言う。

「たとえば芸能人が不倫を働いたら、ネット界隈ではどこまでも叩いていいとされているのが今の時代の風潮ですよね。でも、浮気って本当は、みんな多かれ少なかれ一度はしてみたいと思っているものかもしれず、少なくともそう思う人たちがいるから番組はヒットしたのでしょう。『友達以上、不倫未満』というサブタイトルも、見る側にしてみれば、禁を破ってはいないというある種の免罪符として働いたのでは」

 社会学者で作家の鈴木涼美さんは、作品が描く“不倫未満文化”を分析。

「たとえ不倫してみたいと思う人でも、家庭や命を捨ててまで浮気したいというケースは多くないはず。また女性は友達以上、恋人未満といった“名付けられない関係性”に惹かれる傾向がある。番組はそうした視聴者の気分をうまくすくい上げたんだと思います」

「週刊新潮」2021年10月7日号 掲載