ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第14回は、意外にも時代劇と縁のあった西城秀樹(1955〜2018年)だ。

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 2022年、デビュー50周年となる西城秀樹。18年に世を去ってからも多くのファンから熱烈に支持され、特集番組やコンサートの模様が放送されるなど、その存在感は今も光り続ける。

 ご本人に事務所でインタビューした際のことも強く印象に残っている。「お待たせしました」(といっても、時間通りでした)と、ゆったりしたソファに腰かけた秀樹。その背後には、あの「ヤングマン」のまぶしい衣装が飾られている。スターの輝く笑顔って、こういうものなんだなあと実感したものだ。

 映画・ドラマでの活躍は、「寺内貫太郎一家」や「愛と誠」など現代劇について語られることが多いが、西城秀樹は時代劇にも縁が深い。

 20代のアイドル時代は、「時代劇コント」に出演することも多かった。たとえば、秀樹が宮本武蔵を演じたコントでは、下男(あのねのねの清水国明)に「明日は巌流島で佐々木小次郎との決闘なのに、のんきに本を読んでいいのか、いったいどんな本を読んでいるのか」と問われ、秀樹武蔵は難しい顔をしてひとこと。「サザエさんじゃ」。ちなみに、派手な格好の宿敵・小次郎を演じていたのは細川たかし。昭和の歌手は、ギャグもできて当たり前だったのだ。

役者でも熱演

 その後、30代に入ると本格的な時代劇に出演。舞台でも89年にミュージカル「坂本龍馬」に主演している。

 88年と90年にTBS系で放送された大型時代劇「妻たちの鹿鳴館」と「三姉妹」は、秀樹の代表作となった。

 山田風太郎原作の「妻たちの鹿鳴館」は、鹿鳴館で開かれる舞踏会を前に、文明開化の頃の元勲と夫人たちの人間模様を描いたドラマだ。秀樹は黒田清隆(すまけい)の家の馬丁・源八役で、黒田の後妻・滝子(佐久間良子)とは幼なじみの仲。黒田は内閣総理大臣にまで上り詰めるが、私生活では深酒をしては周囲を苦しめる。滝子を密かに思っていた源八は、長年の思いを告白、彼女と心を通わせるが、やがて悲劇が……。秀樹は下帯一丁で恋に命をかける男を熱演した。

 大佛次郎原作「三姉妹」は、幕末、倒幕派の勢いが増す中、幕府側の会津藩ゆかりの武士に嫁いだ三姉妹、むら(若尾文子)、ゆき(大原麗子)、るい(浅野ゆう子)の物語。秀樹は次女・ゆきの夫・三沢半之丞(林与一)の弟・青江金五郎役だった。妾腹ゆえに疎まれ、事件に巻き込まれて遠島なった金五郎が、ご赦免で戻るが、彼を憎む役人(伊東四朗)の悪だくみで、ゆきとの不倫を疑われ、兄と決闘することに。しかし、兄は暗殺者の銃弾に斃(たお)れる……。維新の嵐の中で、愛する人と別れる三姉妹の運命と、波乱の人生を生きる金五郎の苦悩が胸を打つ。秀樹は龍馬を思わせる髪型とワイルドなスタイルから、維新後は落ち着いた大人の男に。どちらもよく似合っていた。

 両作品とも、プロデューサー・石井ふく子、演出・鴨下信一というTBSの看板コンビによる大作だ。

幻となった大河主演

 そして、いよいよ時代劇で初主演したのが、92年の「徳川無頼帳」(テレビ東京系)だった。徳川三代将軍家光(志垣太郎)の時代。江戸・吉原を舞台に、謎めいたふたりの風来坊が、うごめく悪人や陰謀と闘う。

 風来坊のひとりは、家康の六男で家光の叔父の松平忠輝。もうひとりは、徳川家の剣術指南役の座を追われた柳生十兵衛(西城秀樹)。ふらりと吉原に現れた十兵衛は、美形の花魁・浮橋太夫(成田和未)に心惹かれたが、太夫の側には廓幻之介(千葉真一)という男がいた。ふざけた名を名乗ったその男こそ、実は江戸最大の遊里に潜伏する忠輝。家光は、影の者たちに忠輝を抹殺させようとしていたのだった。「人はこのわしを鬼っ子と呼んでおる」という幻之介と、柳生一族のはぐれ者十兵衛は意気投合。「ここは江戸であって江戸ではねえ」と語る豪儀な吉原の総名主・京屋庄左衛門(ハナ肇)ともに刺客たちと戦うことになる。

 映画「柳生一族の陰謀」、「魔界転生」、ドラマ「柳生あばれ旅」シリーズなどで長年、十兵衛を当たり役としてきた千葉は、制作発表の席で「この役は君に譲った!」と秀樹とがっちり握手。秀樹は、暴れん坊イメージの千葉十兵衛とは一味違って、折り目正しい印象の十兵衛となった。撮影現場が当時JACの本拠となっていた日光江戸村で、次々登場する敵方のアクションはものすごい迫力。十兵衛は高度な殺陣を求められた。「勉強することが多く、ヒデキじゃなくて刺激的な日々」とダジャレも披露している。

 80年代には大河ドラマ主役のオファーもあったという。それは実現しなかったが、シンガーとしても時代劇に参加している。95年の「江戸の用心棒II」(日本テレビ系)の主題歌「心の扉」だ。

 浪人姿の高橋英樹が悪を斬る!という痛快時代劇の王道路線。7話以降、エンディングにこの楽曲が流れたのだった。アーティストとしての功績はここでは書ききれないが、「寺内貫太郎一家」で共演した小林亜星さんに取材した際、「秀樹はシンガーとしての実力が桁外れ。もっともっと評価されていい」と何度も繰り返していた。「心の扉」は、作詞・荒木とよひさ、作曲・浜圭介、編曲・芳野藤丸。しみる大人の恋歌である。

ペリー荻野(ぺりー・おぎの)
1962年生まれ。コラムニスト。時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」部長を務める。著書に「ちょんまげだけが人生さ」(NHK出版)、共著に「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」(講談社)、「テレビの荒野を歩いた人たち」(新潮社)など多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月8日 掲載