秋ドラマが始まった。プライム帯(午後7時〜同11時)は13本なのに対し、深夜ドラマ(午後11時〜)は16本もある。深夜ドラマは10年前には2本しかなかったから、激増だ。日曜以外、すべての曜日で放送されている。増えたのには理由がある。

 10年ほど前の深夜ドラマの中には誰の目にも制作費不足が明らかな作品もあった。今は違う。主演の役者の顔ぶれを見るだけで分かる。

 日本テレビ「サムライカアサン」(月曜深夜0時59分)の主演はTOKIOのリーダー・城島茂(50)だし、同じ月曜のテレビ東京「じゃない方の彼女」(午後11時6分)の主演は濱田岳(33)。テレビ朝日「和田家の男たち」(金曜午後11時15分)は嵐の相葉雅紀(38)で、同じ金曜のテレ東「スナック キズツキ」(深夜0時12分)は原田知世(53)だ。

「ギャラが大幅にダンピングされているのではないか」と考える向きもあるかも知れないが、それは違う。仕事に困らない一線級の人たちは自分の安売りはしない。その後のギャラにまで影響するからだ。

 深夜ドラマの制作費は午後11時台とド深夜(午前1時以降)では異なるものの、プライム帯の3分の1以下で1時間あたり約600〜1000万円台が標準だという。その10分の1程度が主演のギャラにまわる。

 1本3000万円〜4000万円以上のプライム帯の制作費と比べると、少ないようだが、深夜ドラマは出演する役者の数が抑えられているし、金のかかるセットもほとんどつくらないから、この金額でも十分やれる。

 第一、この制作費でも10年前と比べたら、アップした。背景には各民放が動画配信サービスに進出したことがある。

動画配信に注力

 日テレは2014年、Huluを傘下に収めた。TBSとテレビ東京、WOWOWは2018年から動画配信のParaviをスタートさせた。フジにはFOD、テレ朝にはテレ朝動画がある。

 広告費低下によって放送事業での収入を伸ばすことが難しい中、各局とも動画配信に力を入れている。バラエティよりドラマのほうが動画配信との親和性が高いこともあって、深夜ドラマは有力コンテンツとして期待されているのだ。

 深夜ドラマは後に動画配信で稼いでくれることが見込めるようになったので、その分、余計に制作費を投じられるようなった。スポンサー料だけで制作費をまかなっていた時代とは変わった。

 動画配信側は品数を増やしたい。制作本数が激増したのも動画配信の有力コンテンツと考えられるようになったから。また、プライム帯と違い、30分作品が多い(16本中13本)のも最初から動画配信が視野にあるためだ。

 動画ユーザーの中心である若者は長時間のコンテンツをあまり好まないとされている。約2時間の映画を早送りで観る若者もいるくらい。

 YouTubeやTikTokなどで短い映像に慣れてしまった影響があるだろう。そんな若者には30分の深夜ドラマはうってつけなのだ。

制作委員会方式でヒット

 テレ東作品を中心に導入されている制作委員会方式も制作費を増やした。この方式の場合、制作費は局以外の企業も負担する。映画の製作委員会方式と相似形だ。1社当たりの負担金が高額でない分、資金を集めやすい。

 つくったドラマがもたらす放送上の利益や動画配信、DVD販売など2次利用の売り上げは制作委員会で分け合う。局の儲けは少なくなってしまうものの、リスクを一身に背負わずに済む。

 制作委員会方式はテレ東が2011年にプライム帯のドラマ「鈴木先生」(主演・長谷川博己)で初めて採用した。当時、他局の幹部の中には「外部の資金に頼るなんて」と鼻で笑う人もいたが、今では当たり前になりつつある。特に大口スポンサーの獲得が簡単ではない深夜ドラマには向く。

 制作委員会方式でつくったから大ヒットした深夜ドラマもある。東京ではネット放送されなかったにもかかわらず、全国的に話題になった2020年1月期の「ホームルーム」(大阪・毎日放送)がそうだ。

 このドラマの制作費は制作委員会が出した。大口スポンサーに頼らなかった。だから、主人公の高校教師(山田裕貴、31)が毎晩、1人暮らしの教え子(秋田汐梨、18)の自宅に忍び込むという刺激的な場面が盛り込めたのだろう。

 この場面は2人の関係性を浮き彫りにする核心部分だったから、絶対に外せない。半面、反倫理的でもあるため、大口スポンサーが存在したら、カットを要求したかも知れない。もっとも、この場面がなかったら、この作品は台無しになっていた。

 動画用に制作・配信され、のちに深夜ドラマとして放送されるケースもある。通常のケースとは順番が逆。フジがFOD用などに制作し、2020年4月から同6月に配信した現代版「東京ラブストーリー」(水曜深夜0時25分)もそう。

 主人公・永尾完治に扮したのは伊藤健太郎(24)。配信後の同年10月、伊藤はひき逃げで逮捕されてしまったものの、不起訴に。事故の相手とも示談が成立している。もはや放送することに問題はない。

 動画配信では既に流された作品とはいえ、放送は初めてだから、これを伊藤の復帰作と呼んでもいいのではないか。なお、ヒロイン・赤名リカは石橋静河(27)が演じた。

注目の深夜ドラマは

 以下、注目の深夜ドラマである。

■日本テレビ系「アンラッキーガール!」(制作・読売テレビ、木曜午後11時59分)
 福原遥(23)主演。くじ売り場のスタッフ(福原)、ヘアメイクアーチスト(若月佑美、27)無職女性(高梨臨、32)はそろってツイてない。この3人が知り合ったことから、ますます不運が続くというコメディ。

■テレビ朝日「消えた初恋」(土曜午後11時30分)
 道枝駿佑(19)と目黒蓮(24)がダブル主演。高校を舞台にした甘酸っぱいラブストーリー。目黒は道枝が自分に気があると勘違いしてしまう。第8回東宝シンデレラオーディションでグランプリを獲得した福本莉子(20)がヒロインに扮する。

■TBS「この初恋はフィクションです!」(月曜〜木曜 深夜0時40分)
 金曜日を除いた平日、15分ずつ放送される異例のスタイル。主演の飯沼愛(18)は同局のスター育成プロジェクト「私が女優になる日_」で応募者約9000人の中から選ばれた。高校を舞台にした青春群像ラブストーリーで、窪塚洋介(42)の長男・窪塚愛流(18)らも出演する。

■テレビ東京「東京放置食堂」(水曜深夜1時)
 片桐はいり(58)主演。舞台は東京の大島。主人公・真野日出子(片桐)は裁判官だったが、人を裁くことに疲れたことから退官し、島へ来た。そこで居酒屋を手伝うことになる。ハートフルな物語。

■フジテレビ系「顔だけ先生」(制作・東海テレビ、土曜午後11時40分)
 神尾楓珠(22)主演。高校の非常勤講師・遠藤一誠(神尾)が主人公。遠藤は子供じみた男で、教師らしいことは一切しない、できない。そんなキャラだからこそ教育現場の諸問題を解決に導く。

 プライム帯のドラマを物足りないと思う人には特にお勧めだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月16日 掲載