“嵐の活動休止中の嵐メンバーの活動”

 2021年11月3日、嵐はCDデビューから22周年を迎える。昨年いっぱいで活動を休止しているので、その中で初めて迎える記念の日でもある。この活動休止の間の嵐の変化について、『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)の著者、霜田明寛氏が綴る。

 1999年のデビューから22年。今年の記念日は活動休止中とはいえ、嵐は過去のライブの映画化である「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」の公開というファンへのプレゼントもしっかり用意してくれている。

 思えば、昨年の今頃は、年末の活動休止に向けてのカウントダウンが始まり、休止に向けての特番が組まれたり、歌番組の「最後の出演」などが喧伝されたりと、嵐ムードが濃くなっていった頃だった。

 あれから1年。おかしな言い方だが、“嵐の活動休止中の嵐メンバーの活動”もそろそろ1年を迎える。この1年で彼らは何をし、どんな変化が起きているのかを振り返ってみたい。

 やはり大きなトピックとなったのは、本来なら2020年に嵐としてやるはずだったNHKのオリンピック・パラリンピックのナビゲーターの仕事だろう。再集結か、と騒ぎ立てるメディアもあったが、結果、櫻井翔と相葉雅紀の2人が務めるかたちとなった。

増えたジャニーズの後輩とのからみ

 この例が示すように、活動休止後の活動は、嵐のメンバーは2人までしか一度に集合しないのが基本だ。大野智を除いて4人とも芸能活動を継続はしているが、4人や3人でメディアに登場することはない。

 ソロでの俳優仕事はといえば、櫻井翔は4月クールに「ネメシス」、相葉雅紀は10月クールに「和田家の男たち」とオリンピックを挟むかたちで連続ドラマに主演。

 二宮和也は来年に主演映画「TANG タング」が公開予定。松本潤は年末に主演映画「99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE」が公開されるほか、23年には大河ドラマの主演が控えているなど、それぞれ順調だ。

 とはいえ、こうした個々の俳優活動は嵐のグループ活動とも並行して行われていたものだ。

 一方、今年、目に見えて増えたのが、ジャニーズの後輩とのからみだろう。

 2020年に嵐5人がCMキャラクターを務めていたアサヒ飲料「三ツ矢サイダー」のCMは、相葉・櫻井の2人に、Hey!Say!JUMPの山田涼介とSnow Manの阿部亮平と目黒蓮を加えたかたちの5人体制に“引き継ぎ”。

 嵐の冠番組だった「VS嵐」は、相葉雅紀がMCを引き継ぎ「VS魂」に。レギュラーメンバーには風間俊介、佐藤勝利(Sexy Zone)、藤井流星(ジャニーズWEST)、岸優太(King & Prince)、浮所飛貴(美 少年/ジャニーズJr.)と、相葉と同世代の風間に加え、ジャニーズの若手グループから4名の後輩が集結。

ジャニーズの歴史でレアケース

 テレビ番組やCMは、このように嵐全員でやっていたものを、嵐のメンバー(1〜2名)+後輩(3〜4名)という新たなチームで引き継ぐかたちが目立つ。

 さらに、“引き継ぎ”ではないものの、二宮和也が立ち上げたYouTubeチャンネル「ジャにのちゃんねる」は、二宮以外のメンバーに中丸雄一(KAT-TUN)、菊池風磨(Sexy Zone)、山田涼介(Hey! Say! JUMP)と、これまた嵐のメンバー+ジャニーズの後輩たち、といった構成だ。

 実はジャニーズの歴史において、このようにグループの垣根を越えるのはレアケースだ。

 97年に阪神淡路大震災のチャリティーとしてKinKi Kids、TOKIO、V6のメンバーで結成されたJ-FRIENDSや、2005年にKinKi Kidsの堂本剛とTOKIOの国分太一によるユニットで主演映画も制作されたトラジ・ハイジなどがあるが、いずれもチャリティー目的や主演ドラマ・映画などが絡んで、期間も限定的なかたちがほとんどだ。

 このように、1年でこんなに同時多発的に、しかもCDリリース等が絡まないかたちで起こるのは珍しい。これは、嵐という国民的アイドルが、一度バラバラに活動せざるを得ない現状によって生まれた、思わぬ副産物だったと言えよう。

“疑似グループ活動”での楽曲発表も

 嵐メンバーの“疑似グループ活動”は、もちろんファンにとっては完全な代替とはならないであろうが、彼らの魅力のひとつであった“男性同士の仲の良さ”が、垣間見えるものとなっている。

 各“チーム”は、それぞれ嵐のメンバーが最年長ではあるものの、体育会系のような“引っ張っていく”感じでもなく、嵐メンバーが他のメンバーと魅力を“引き出しあっていく”雰囲気で、安心して見ていられる空気感も引き継がれている。

 40代に差し掛かろうとする嵐のメンバーが、20代の後輩たちに、決して権威を振りかざすことなく、先輩でありながらもときに同年代の仲間かのように振る舞うのは、理想の職場像のようでもある。

 嵐にしか興味がなかった層も、これによって後輩ジャニーズたちの魅力に気づくきっかけになるだろう。なにより嵐のメンバーには、後輩の魅力に気づいてもらおうという姿勢が見える。

「ジャにのちゃんねる」はデビュー前のジャニーズJr.にも言及されるなど、その名の通り二宮のチャンネルでもありながら、しっかりとジャニーズのチャンネルでもある。壮大なジャニーズの世界への、YouTube上に置かれた自然な入り口としての役割を果たしているといっていいだろう。

 10月7日放送の「VS魂」では相葉雅紀が「このメンバーでFNS歌謡祭出よう」と、同番組のレギュラーメンバーでの主題歌プロジェクトも始動。CDデビュー前であるジャニーズJr.の浮所まで巻き込んでのこの“疑似グループ活動”での楽曲発表も実現するかもしれない。

“嵐を巻き起こす”のがよく似合う

 総じて、このような嵐メンバー+後輩ジャニーズの活動は筆者の目には革新的にさえ映る。

 近年の国民的アイドルであり、“いい子”のイメージを持っている方々には意外に映るかもしれないが、そもそもの嵐は革新的なグループだった。

 櫻井翔による自作のRAP詞で本格的にジャニーズ楽曲にHIPHOP要素を取り入れたという音楽的側面はもちろん、まだ大ブレイク前だった2000年代前半、決して規模の大きくない、単館系の主演映画を自社レーベル発信で制作するなど、いわゆるサブカルチャー的な動きも多くとっていた嵐。

 櫻井翔も10代の頃の自分を「ジャニーズに新しいものを取り入れたいという意気込みがあった」(『ザ・テレビジョン』2012年10月27日号)と述懐している。

 その後、2007年の大ブレイクを経て、奇しくも東日本大震災の前年から5年連続で担うことになった紅白歌合戦の司会など、嵐の背負うものが大きくなればなるほど、そのような革新的な要素は目立ちづらくはなっていったものの、やはり根底にはその魂が眠っていたのだろう。

 伝統を引き継ぎながらも、新しいものを創造し続けるジャニーズ事務所全体とも、この姿勢は親和性が高いはずだ。

 やはり、嵐は“嵐を巻き起こす”のがよく似合う。嵐メンバーが、ジャニーズ内で巻き起こす嵐が、今度は新たな国民的アイドル誕生のきっかけになるかもしれない。

霜田明寛
1985年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。就活・キャリア関連の著書を執筆後、4作目の著書となった『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)は5刷を突破。 また『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』の編集長として、映画監督・俳優などにインタビューを行い、エンターテインメントを紹介。SBSラジオ『IPPO』凖レギュラー。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月23日 掲載