10月29日に終了したNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」にモネこと永浦百音役で主演していた清原果耶(19)が、単独インタビューに応じ、大役を終えた現在の心境を語った。知名度は既に全国区であるものの、まだ20歳前。女優としての今後の展望なども明かした。本人は謙虚な言葉に終始したものの、実際には大きく飛躍したようだ。

コロナ禍の影響を受けた撮影

「なにより大きいのは観てくださった方々への感謝の気持ちです」

 清原に現在の胸の内を問うと、晴れやかな表情で視聴者へのお礼を口にした。

 第104作目の朝ドラだった「おかえりモネ」は5月17日に始まり、10月29日に終了した。全120話、計30時間の物語だった。

「無事に予定どおり放送されて本当に良かったです」

 既定のことなのにホッとしているのは新型コロナ禍下での撮影だったから。ドラマ界は昨年4月から新型コロナ禍の影響を受けている。特に長丁場の朝ドラは深刻なダメージを受けた。

 昨年度上期の「エール」は撮影が同4月から同6月まで中断。このため、同下期「おちょやん」の放送開始は通常より2カ月遅れの同11月30日に。「おかえりモネ」も始まったのは1カ月半遅れだった。清原が放送の行方に気を揉んだのも無理はない。

毎日SNSで反響をチェック

 放送スケジュールが変わると、さまざまな面で支障が出る。視聴者に見どころを知ってもらうための宣伝スケジュールも変わってしまう。大問題だが、「おかえりモネ」は始まった当初から話題に事欠かない朝ドラとなった。

 まずモネと青年医師・菅波光太朗(坂口健太郎、30)の恋物語。SNS上には不器用な菅波を応援する言葉で溢れた。いわゆる「#俺たちの菅波」である。

 東日本大震災時に津波を見なかったモネと見てしまった妹・未知(蒔田彩珠、19)の断絶への反響も大きかった。モネと及川亮(永瀬廉、22)ら幼なじみたちによるストレートな青春群像も耳目を集めた。

「毎日、SNSで作品を観てくださった方の反応を確認させていただきましたが、それぞれの楽しみ方があったという印象がありますね」

 もちろん話題の中心には常にモネがいた。自信作になったのではないか。

「いえ……。この作品に限らず、自分で自信作だと思ったものはありません」

 謙遜ではない。作品に不満があるわけでもない。清原は自分に課している仕事のハードルが高いのである。

現場では何も考えない

 全く新しいタイプの朝ドラだった。まず説明調のセリフ、ナレーションがほとんどなかった。より見応えある作品にするためだ。事実、映像への評価は極めて高い。

 説明調のセリフなどがないから、清原は目での演技、表情での感情伝達が求められた。難しい演技だ。もっとも、もともと演技力には定評のある清原だから、難なくこなした。それどころか「名優たちと一緒に仕事をしたこの1年でさらにうまくなった」と評判だ。

 東日本大震災から10年という長いスパンを切り取り、さまざまな人々の思いをそれぞれ丁寧に描いたところも新しかった。描かれた1人は津波の際に祖母・雅代(竹下景子)を置いて逃げてしまい、ずっと思い悩み、姉のモネに救いを求めていた未知。モネはそれをしっかりと受け止め、慰めた。姉としても社会人としても努力して成長したのである。またヒロイン像としても新しかった。誰とでも穏やかに接し、一度も怒ったことがないところなどだ。一方で天気予報士試験の勉強など努力は惜しまなかった。

 1980年代に故・松田優作さんらの映画をつくった後、北海道大文学部教授をしながら映画評論を行っている阿部嘉昭氏(63)は早くから清原を高く評価していた。約1年前、筆者の取材に対し、「清原さんは自分が置かれた場面で何をすれば良いのかが本能的に分かる人」「場面ごとに表情が微妙に違うのも魅力」などと評していた。

 この言葉を清原に伝えると、「ありがたいです」と言い、少し照れた。

 阿部氏の指摘どおり、たしかに現場では何も考えないという。もっとも、本能的に自分のすべきことが分かっているわけではなかった。演技に入る前に脚本を繰り返し読み、監督との打ち合わせも重ね、現場では何も考えなくても動けるようにしているのだ。それが清原のルーティン。努力を惜しまない。

「現場の雰囲気を第一に優先していたいものですから」

実年齢を超越する演技

 幅広い年齢を演じられてしまうのも清原の特徴の1つ。2019年度前期の朝ドラ「なつぞら」では、実際には17歳だったのに、離婚間近の30代の母親に扮した。無理をしている感じがなく、リアルだった。ご覧になった人ならご記憶だろう。

「おかえりモネ」では18歳から24歳までを演じた。やはり違和感を抱かせなかった。見た目は18歳と24歳ではかなり違っていた。どうして実年齢を超越できてしまうのか?

「私は30代を生きた経験がありませんし、母親になったこともありません。でも、分からないなりに想像したり、監督と話し合ったりして、『その年代に見えたらいいな』って思い、演じています。だから『違和感がない』と言ってもらえると、すごくうれしいです」

 やはり背景にあるのは努力だった。

次作、そして20歳の目標は

 清原は既に新しい場所に移っている。ヒロインを務めている映画「護られなかった者たちへ」が大ヒット上映中だ。

 東日本大震災から9年後に仙台市で2人が殺された事件を軸に物語は展開する。「おかえりモネ」と同じく、震災が物語に絡む。

 2人の被害者は全身を縛られ、餓死させられた。なぜ、そんな殺され方をしたのか……。

 殺人の容疑者として追われる主人公を佐藤健(32)、彼を追う刑事を阿部寛(57)が演じる。清原は佐藤を実の兄のように慕う正義感の強い女性に扮している。モネとは全く異なるキャラクターだが、なりきっている。特に後半30分の清原の演技からは目を離さないほうがいい。文字通りの熱演と評判だ。

「ありがとうございます」

 ここでも「自信作では?」と問うたが、やっぱり否定された。もちろん作品が不満というわけではない。清原という女優はもっと高みを目指しているのだ。

 さて、年が明けたら20歳になる。目標は?

「健康第一です。大きな目標を持つより、その時いただいたお仕事を全うするということを一番大事に生きていきたいと思っています」

 たしかに役者は体が資本。健康を損ねては準備や稽古が台無しになってしまう。目標が、地に足が着いているところが清原らしい。

 では、女優として長く生きていく中での大目標は何か。過去の報道では清原と故・原節子さん、あるいは吉永小百合(76)と結び付ける記事が多く、「清原も大女優になる」などと書かれている。

 清原自身の大目標も大女優になることかと思ったが、まったく違った。やっぱり堅実なものだった。

「役とか作品に出会うことというのはすごく運命的なことだと思っているんです。その作品に私が参加すること、その役を私が演じることによって、見てくださった方の心に何か残るようになれば良いなと思っています。たぶん、これからもそう思い続けます」

 今、視聴者は「おかえりモネ」ロスを味わっている。一方、清原にとって「モネ」は大切な宝物になりつつある。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年11月3日 掲載