テレビ東京の「土曜スペシャル」といえば、旅やグルメをテーマにすることが多い単発企画枠だ。代表作といえば、なんといっても太川陽介・蛭子能収の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」だろう。テレ東でなければ思いつかない名コンビだったが、近頃はお笑い芸人ばかりが起用されている。“らしさ”はどこへ行った?

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 この頃の「土スペ」と言えば、

6月18日「ニューヨークの入浴旅」絶景温泉もとめ新緑の伊豆半島へGO!

6月11日「大久保・川村の温泉タオル集め旅5」新緑!栃木の秘湯へ行こう

6月4日「千原ジュニアのタクシ―乗り継ぎ旅11」ジャニーズWEST参戦

 確かに、人気のお笑い芸人を起用した企画が増えている。民放ディレクターが言う。

「5月には、見取り図の『日帰り詰め込み旅』、4月には、ぺこぱが太川・蛭子コンビを引き継いだ『ぺこぱのローカル鉄道寄り道旅』、3月には、『かまいたちの名所名物先取り旅』も放送されました。今や人気芸人頼みの旅番組ばかりとなり、視聴者からは“テレ東らしからぬ人選”“安易な企画”といった不満も上がっているそうです」

 もっとも、旅番組に人気芸人を起用するのは、他のテレビ局もやっているはず。

「テレ東だけは違っていました。太川・蛭子コンビだって、他局では思いもつかないキャスティングです。意外なタレントを起用する目の付けどころ、アグレッシブさがテレ東のウリでした。人気タレントに頼らず、テレ東らしさを生かした企画で勝負してきたわけですが、ここへきて人気芸人頼みの旅番組となったことで他局との違いながなくなり、残念に思っている視聴者も出てきています」

テレ東伝説

“らしさ”といえば、テレ東伝説だろう。例えば、1991年1月17日、湾岸戦争で多国籍軍がイラクに爆撃、いわゆる「砂漠の嵐作戦」を開始した際には、NHKはじめ各局が生中継に切り替えたが、テレ東だけは「楽しいムーミン一家」の放送を続けた。

 毎年、テレ東が独占中継している夏の風物詩といえば「隅田川花火大会」だ。2013年は大雨のため開始から30分で中止されたが、大雨洪水警報と雷注意報、さらには竜巻注意報が発令される中、必死に中継する高橋英樹・真麻親子。それを横目に、ゲストの樹木希林が爆笑。最終的には、前年と前々年のダイジェスト版を放送することで乗り切った。

 とにかく、一度編成したらなかなか変えないイメージが強いのがテレ東だった。

「中でも『いい旅・夢気分』に代表される旅番組は、テレ東の独壇場でした。目黒祐樹や丹波義隆、荻島眞一といった主役級ではない役者を旅人にして、視聴者が旅をした気分になれる“情報”がメインでした。しかし、他局も同じような番組を作り始めると、差別化を図るためにバラエティ化を始めたのです。ゲーム性を取り入れたり、ルールを設けたり、集団化して対決させたり……」

 太川陽介・蛭子能収の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」はその延長線上ににある。

Zで懲りた?

「いわゆる旅バラエティ番組も次々と登場し、ちょっとしたブームになりました。すると次に重要視されたのが旅人です。誰が何をするのか、ここ数年のお笑いブームで、旅人に芸人が欠かせなくなったのです」

 テレ東もそれに乗ったということか。

「本来なら俳優やアーティストの意外な一面を掘り起こすのが得意なテレ東ですが、当たり外れが大きい。芸人と違って計算ができないということでしょう。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』で、それを思い知らされたのでしょう」

 太川・蛭子コンビが番組を卒業し、新シリーズの旅人として起用されたのが俳優の田中要次と小説家の羽田圭介だった。

「太川・蛭子と比較され、いまひとつと言われることが少なくありませんでした。今年1月に新作が放送されたのが最後です。現在はBSで再放送されているだけです」

 田中・羽田も斬新なキャスティングではあったが、

「ある種の賭けみたいなものですからね。当たれば大きいのですが、外れるとショックも大きい。人気芸人を使ったほうが楽なんですよ。今後も『土スペ』は芸人を起用していくのだと思います。ぺこぱとかまいたちは、すでに第3弾まで放送されているのでシリーズ化されました。見取り図とニューヨークも、あと1、2回はチャレンジするのではないでしょうか」

 新たな芸人旅人も探しているのだろうか。

「次は錦鯉でしょうね。年内には登場すると見ています」

デイリー新潮編集部