こじるりこと小島瑠璃子さん、「キングダム」の舞台である中国への留学を発表。コロナ禍で延期になっていたが、移住も見すえて仕事をセーブしていたそうだ。「後輩の井上咲楽に仕事を奪われている」との報道もあったが、「もっと大きなステージで活躍するために、あえて仕事を減らしているんだ」とアピールしておきたかったのかもしれない。

 彼女の留学について、冷ややかに見る目は少なくない。泉谷しげるさんは、仕事に嫌気がさしたための言い訳ではと述べ、ほんこんさんは政治情勢への見通しが甘いとYouTubeでコメント。ネットニュースでも、彼らと同じ視点で苦言を呈す声が寄せられている。

 チャレンジ精神は買うが成功するかは未知数。「キングダム交際」で相当イメージダウンもあった。しかし、あのこじるりである。勝つための戦略なしに動かない人ではないだろうか。事実、中国語は4年前から学び始め、かなりのレベルに達しているという。中国で最も知名度が高い日本人と呼ばれる矢野浩二さんとも、中国語で語らう動画を公開。現地の反応はそこまで多くはないが、一生懸命に中国語を話そうとする姿に、「とてもかわいい」「いい感じ」との書き込みもいくつか見受けられた。

 自己主張の強さ、メンツ主義、爆買いイメージ、コネ文化……中国人の性格を表す際、よく上がるワードだ。もちろん一概にくくれないものの、こじるりを表すワードとしたならば、ほぼ重なるのではないだろうか。「筋トレの意味がわからない」「付き合う前に(性交渉を)致さないと怖い」などと豪語し、炎上してもしおらしく謝ったりはしない。ジャガーを乗り回して高級ホテルに滞在する様子を公開し、中国で顔が利く矢野さんにもいち早く接触する。旬の人とつながる嗅覚の鋭さとフットワークの軽さは有名だ。

 思えば彼女が叩かれ始めた時期は、中国語を学び始めた頃と同じである。それまでは頭の回転の良さとはつらつとした可愛さで大人気だった。Twitterでも出演番組の宣伝や共演者からの差し入れなど、炎上要素がひとつもない「いい子」の顔を絶対に崩さなかったのに。キングダムの作者対談あたりから、だんだん「黒るり」の顔を前面に出すようになってきたのだから面白い。語学だけでなく、中国でサバイブできるキャラクターも特訓していたかのようである。

「ただのお遊び」と何が違う? 渡辺直美、なかやまきんに君、光浦靖子……留学で成功する芸能人の共通点

 芸能人の留学が叩かれがちなのは、成果が見えにくいからではないだろうか。例えば前田敦子さんに吉高由里子さん、佐藤健さんなど、短期の語学留学をするタレントは多い。が、彼らの英語力がアップしたかどうかはわかりづらい。息抜きついでにハクをつけに行ったのね、と見られがちだ。古くは吉田栄作さんや郷ひろみさんの渡米、数年前はピース・綾部祐二さんのニューヨーク留学も話題になった。吉田さんや郷さんの演技や歌は今でこそ再評価されているが、当時は結構バカにされていた記憶がある。綾部さんはいまだに英語もおぼつかないと明かしている。

 逆に言えば、一芸が花開いた苦労人の留学は好意的に受け止められる。たとえばなかやまきんに君や光浦靖子さん。どちらももともと留学は夢だったそうだが、芸人としての不安もあったからだと言う。それでも芸に一途であることも、好感度が高い理由だろう。きんに君は筋肉芸、光浦さんは手芸という武器を貫いた。片やボディービル大会で優勝し、片や美術館に展示されるほどの進化を遂げている。なお光浦さんは一時帰国の際、料理を学ぶカレッジへの入学を考えていると語り、前向きに進み続ける姿勢は憧れと称賛を集めた。

 世界的インフルエンサーとなった渡辺直美さんも、売れっ子の時にダンス留学を経験。そしてビヨンセ芸を貫いて大成した人だ。過去には「中国の紅白歌合戦」と呼ばれる音楽番組にも出演している。こじるりも歌手を目指すという報道もあったが、渡辺さんほどのインパクトや芸達者ぶりは想像がつかない。でもだからといって、彼女の留学は失敗するだろうと断じるのは早計だと思うのである。

狙うはタレントではなく実業家路線?「保険」になりうる日本社会の不穏な傾向

 中国で人気がある有名人といえば、山下智久さんや齋藤飛鳥さん、浜崎あゆみさんなどが挙がるという。日本のドラマや音楽をきっかけに知る人が多いそうだ。やはり一芸と人目を引く容姿であること、語学力より「わかりやすさ」が成功要因であることは疑いようがない。

 一方、こじるりの主戦場はバラエティー。日本語と日本文化でできた特殊な環境で地位を築いてきた人だ。大陸系の美女は高身長で色白な人が多く、健康的で小柄なこじるりとは美の基準も違うという指摘もある。ただ、それはすべてタレントとして活動することを前提にした場合の不安要素だ。

 こじるりの武器は一貫してコミュニケーション力である。それは国を問わず、ビジネスで最も発揮されるのではないだろうか。タレントやインフルエンサーがあふれる中、つたない中国語を話す健気さだけで突破できるとは本人が一番思っていないだろう。タレント活動はあくまでも手段で、目的は現地ビジネスのノウハウ獲得と人脈づくりと考えた方がしっくりくる。外国籍ゆえのハードルの高さも、もちろん織り込み済みのはず。だからビジネス拠点としての日本は捨てないし、第二の人生の「保険」も考えていることだろう。

 日本のジェンダーギャップ指数は中国よりも下の116位。その発表後、政財界では元タレントや元女子アナを議員や社外役員に擁立する動きが加速した。経済拡大する中国に比べ、「日本はもう終わり」など、暗い話題でコンプレックスをあおるニュースも多い。

 世界から見た日本の地位向上に、一定の実績を残した女性タレントはうまいこと使える。そういう傾向が強まる中、中国ネットワークを持つこじるりが帰国したらひっぱりだこになるのは確実だ。数年後に政財界の大物とほほ笑む彼女の姿がもう見える。天下の大将軍ならぬ、天下の大実業家として凱旋帰国する日を待ちたい。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部