2022年1月、「新婚さんいらっしゃい!」の司会者が桂文枝から藤井隆に代わることが発表されたことが大きな話題になった。文枝は1971年の番組開始から50年以上にわたってこの番組の顔として知られていたからだ。文枝とこの番組は切っても切れない関係にあると思われていた。そこに新風が吹き込まれることになったのだ。アシスタントも山瀬まみから井上咲楽にバトンタッチされた。

 文枝が番組を降板することが報じられたときから、後任が誰になるかというのは世間でも噂になっていた。その中でも「藤井隆待望論」が持ち上がっていた。そして、実際に彼が大役を務めることになったので、この人選にはほとんどの人が納得したはずだ。

 個人的にも藤井の抜擢には深く納得した。彼はこの番組の司会者にふさわしい3つの要素を備えていると思うからだ。

 1つ目は「誰に対しても礼儀正しく、好感度が高い」ということだ。芸人というのは、ときには笑いのためにあえて他人を悪く言ったり、厳しい言葉を投げかけたりすることがあるものだ。それが行き過ぎると、一般の人に嫌われたり避けられたりしてしまうことがある。

 だが、藤井にはそのようなイメージがほとんどない。常に礼儀正しく謙虚な姿勢を崩さないので、共演者にも視聴者にも好かれている。たとえ笑いのためであっても人を傷つけるような発言をすることがほとんどないので、安心して見ていられる。今まで以上に「人を傷つけない笑い」が求められている時代だからこそ、藤井に白羽の矢が立ったのだろう。

 2つ目は「愛妻家である」ということだ。藤井は2005年に女優の乙葉と結婚した。藤井がバラエティ番組などでプライベートについて積極的に語る機会は多くはないが、ときどき漏れる言葉からは、家庭を大事にしていて、癒やし系キャラの乙葉と子供と充実した家庭生活を送っていることがうかがえる。結婚10周年の2015年には夫婦で「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた。

 仲睦まじい新婚カップルが出演する番組だからこそ、司会者にも清廉潔白で家庭的なイメージがあるのに越したことはない。この点では、男性芸人の中でも藤井ほどこの番組にふさわしい人はいない。

「他人のいいところを発見」する能力

 3つ目は「相手の良さを引き出す能力がある」ということだ。藤井はこれまでに多岐にわたる芸能活動を行っており、その中の1つに「音楽プロデューサー業」がある。

 藤井は2014年に自身の音楽レーベル「SLENDERIE RECORD」を立ち上げて、プロデューサーとしての活動を本格的に始めた。このレーベルには藤井本人以外にも早見優、鈴木京香、レイザーラモンRG、椿鬼奴などの豪華な顔ぶれがアーティストとして名を連ねている。藤井は彼らの魅力を引き出すための楽曲制作やアートワークなどのトータルプロデュースを手がけてきた。

 そんな藤井は、他人のいいところを発見して、そこを伸ばしていくということに長けている。これは一般人を毎週ゲストに迎える「新婚さんいらっしゃい!」の司会者にとって、間違いなく重要な資質であると言えるだろう。

 実際、4月に始まった藤井司会の『新婚さんいらっしゃい!』では、彼の能力が存分に生かされている。新アシスタントの井上と共に、温かみがあって明るい雰囲気を作っているので、新婚カップルの一般人も話がしやすい。

 藤井は、話題によって真面目に話を聞くモードと明るくふざけ気味に振る舞うモードを巧みに使い分けているので、どう転がっても番組は見ごたえのあるものになる。

 品の良い芸風を貫く藤井が仕切る「新婚さんいらっしゃい!」は、新しい時代のバラエティ番組としてこのまま定着していくのではないか。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部