12月の忙しい時期、年賀状の準備を億劫に感じる人も多いだろう。近年は年賀状のやりとりを終了させる「年賀状じまい」の話題もよく耳にするため、「さすがにそこまでは」「いや検討の価値はある」と心が揺れてしまう瞬間もある。そこで気になるのは「年賀状じまい」に関するさまざまなマナーだ。本格的に考えるべきタイミングや、相手を不快にしない書き方など、手紙の書き方コンサルタントの田丸有子さんにその心得を聞いた。

「年賀状じまい」元年は2022年?

――「年賀状じまい」はいつごろから増えてきたのでしょうか?

「年賀状じまい」という言葉自体は比較的新しく、一般的に知られるようになったのは昨年あたりから。「年賀状じまい」に関する記事や文例を掲載するウェブサイトも一気に増え、個人的には2022年が「年賀状じまい元年」だったような印象もあります。

――「年賀状じまい」の一般的な受け止め方は?

 1つめは、相手の方を心配させない「気遣い」でしょう。毎年送っていたのに突然やめてしまうと、何かあったのかとお正月から余計な心配をさせる可能性もあります。2つめは自分のなかで「けじめや区切りをつけるもの」と言えるでしょう。

 まだ一般的な習慣ではありませんが、そのうち当たり前になれば、送る方ももらう方も特別気を遣わなくなると思います。「年賀状じまい」は決してネガティブなことではありませんから。

――実際に行っているのは主にどんな人?

 年を重ねて体力的に辛い、年賀状を送り続けるような人間関係の見直しなど、終活の一環とされている高齢者が多いですね。平均寿命が長くなってきたからこその新しい習慣でしょう。他方、SNSなどが普及し、年賀状以外の“つながる方法”を重視するようになった方が、引っ越しなどをきっかけに行う場合もあります。

いつ、どうやって伝える?

――「年賀状じまい」をするベストなタイミングは?

 きっかけは人それぞれですが、「還暦を迎えたので、ここで年賀状を卒業したいと思います」など、年齢的な節目、人生の大きな節目を迎えた時を、年賀状をやめる区切りとして捉える方もいらっしゃいます。「100歳となったので、来年から年賀状は控えさせていただきます」といった内容で受け取った私の知人は、「とても喜ばしかった」と仰っていました。

 もちろん、「思うところがあって」「体力的にしんどくなってきたので」といった理由も角が立たないので、「年賀状じまい」のタイミングは自身の気持ち次第。まずは、本当に年賀状を送るのをやめたいのかどうか、自身に問いかけてみましょう。

――相手に伝えるベストな方法とタイミングは?

 まずは年賀状に書く方法です。年賀状は年始の挨拶がメインなので、さらりとお伝えするにはいいでしょう。

 年賀状ではなく、「年賀状じまいのはがき」を送りたい場合は年内に、できればお相手が年賀状を書き始める前に発送するのがお勧めです。「喪中はがき」ではないので、写真やイラストを入れても問題ありません。相手への気遣いが感じられるものであればなんでも大丈夫ですから、クリスマスカードに書いて送る方法もあります。

 送られてきた年賀状に対して、「実は今年から年賀状を控えさせていただくことになりました」と返信する方法もあります。その場合は「寒中見舞い」をお送りするタイミングがいいでしょう。

書き添えたほうがいい事柄は?

――「年賀状じまい」の文例を教えてください。

 大前提は受け取る相手の方への気遣いと気配りです。効率的なのは年賀状で伝える方法ですが、正月から相手を落ち込ませる書き方だけは避けたいもの。文例としては以下があります。

「来年からは年賀状を控えさせていただきます」
「今年限りで年賀状を失礼させていただきます」
「本年をもちまして年始のご挨拶を失礼させていただきます」

「年賀状をやめます」という内容ではありますが、紋切型や断定的な書き方ではなく、やわらかい伝え方を心掛けましょう。読む人がなるほどと納得するような、年賀状をやめる理由をひと言書いておくのも気遣いの1つです。

――書き添えたほうがいい事柄はありますか?

「年賀状じまい」に慣れていなかったり、よく知らなかったりする人は、「これでもうお付き合いをしてもらえなくなる」と解釈しがちです。「今後も連絡を取り合いましょう」といったメッセージと共に、メールアドレスや電話番号を書き添えておくと、安心していただけるでしょう。

いただいた側の返事はSNSやメッセージアプリでも

――手書き以外の方法は避けるべきでしょうか?

 さらりとお伝えするなら印刷はがき、形式ばらず、率直にお伝えするならメールという選択肢もあるでしょう。メールなら、今後はメールでやり取りできることも同時に伝えられますよね。送信するタイミングは、相手が年賀状を書く前がいいでしょう。ただしどちらも、お送りする文面には工夫と気配りをしてください。

――「年賀状じまい」をいただいた側は返事をすべきですか?

 特に必要ありませんが、SNSやLINEなどのメッセージアプリで「今後もよろしくお願いします」とお返事するのはいいと思います。また、寒中見舞いや普通のお手紙を送ることも、相手に負担をかけるわけではないので気にすることはないでしょう。

気持ちの整理がつかないまま行うと後悔も

――「年賀状じまい」は段階的に行ってもいいのですか?

 全員に対して同時に行う必要はありません。年賀状でのお付き合いを続けたい相手であれば続けたほうがいいでしょう。年賀状を送り続けても返事が来ないといった、少し引っかかっている相手から行うという考え方もあります。儀礼的に続けている相手も候補になると思います。

「年賀状じまい」は人との付き合い方を考えるきっかけの1つです。結局のところ、自分はその相手とどう付き合っていきたいのか? それは人間関係を整理することにもつながります。今の時代は年賀状以外にもつながる手段がありますから、そもそもどのようにつながっていきたいのかを考える機会にするのも一考です。

 気持ちの整理がつかないまま「年賀状じまい」をすると、後悔する可能性もあるでしょう。迷っている間は出し続けたほうがいいかもしれませんね。

――「年賀状じまい」を撤回して再開しても大丈夫ですか?

「年賀状じまい」は新しい習慣ですから、厳密なルールや定義はありません。堅苦しく考えず、年賀状が来なくなって寂しくなったり、やっぱり書きたくなったりすれば、再開してもいいと思いますよ。

岡崎優子

デイリー新潮編集部