57歳からの再婚を目指して、婚活サイト、結婚相談所、婚活パーティーに挑んできたフリーライターの石神賢介氏、経験したうえで一つの結論に到達する。それぞれのサービスにはメリット、デメリットがあり、向き不向きがある、ということだ。その適性を知らずに挑戦しても空振りに終わる可能性は高い……。

(文中の紹介文、登場人物はプライバシー保護の観点から一部を変更してあります)

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 婚活パーティーに参加して再認識したことがあった。

 婚活のメインストリーム、つまり婚活サイト、結婚相談所、婚活パーティーの3つのなかで、僕に関しては婚活パーティーが向いている。“ライブ”だからだ。そして、ある程度ハンディをカバーできる。

 57歳で、バツイチで、フリーランスの記者は、婚活市場では概ね不利だ。ジジイで、バツイチで、経済的に不安定。3つもハンディを抱えている。

 婚活サイトと結婚相談所は、プロフィールからスタートする。容姿のいい、いわゆるイケメンで、年収2千万円で、年齢が20代から30代前半あたりならば、プロフィールの時点で有利な立場で女性にアプローチできるだろう。

 しかし、僕の場合は、その第一歩のプロフィールに、ハンディが明記されている。その時点で女性にははじかれる可能性が高い。それでは会えない。リングに上がることなく、敗北しているのだ。

 一方、婚活パーティーは最初から対面だ。リング上から始まる。男女ともプロフィールにある記述よりも、自分の目で見て会話した第一印象で相手を判断するだろう。57歳という年齢も、ある程度カバーできる。静止した写真ではジジイでも、声を発し、表情が変化し、身振り手振りがあると、実年齢よりもいきいきと見せることができる。

「ウヌボレるな」とツッコまれそうだが、僕の場合は職業的なアドバンテージがあるように感じたのだ。フリーランスの記者なので、日常的に初対面の相手と会話をしている。だから、女性の容姿がよほど好きなタイプで緊張しまくらない限り、婚活パーティーではひるまない。営業職や、プレゼンテーションの機会が多い職種の人もたぶん同様に有利だと思う。

 実際に青山の婚活パーティーでは、サナエさんを含めて3人から交際のリクエストをもらえた。10人のうち3人、野球にたとえれば、3割バッターだ。この時点で、婚活サイトでは5人にアプローチしてマッチングは1人、結婚相談所では20人にお見合いを申し込んで会えたのは1人。苦しいスタートだった。だから、なおさら婚活パーティーにアドバンテージを感じた。

 では、婚活サイトや結婚相談所が向いているのはどんな人だろう……。

 まず、たとえばコンピュータ関係や研究者など人と接することが少ない仕事に就いているケースだ。コミュニケーション能力に自信がなくても、プロフィールの閲覧から始まる婚活サイトや結婚相談所ならばカバーできる。

 メールのやり取りが多い仕事ならば、婚活サイトを通してメッセージを何度も交換して、心の距離を十分に近づけてから会えばいい。

 高収入の男性はどんな婚活ツールでも有利だが、婚活サイトや結婚相談所では特にインパクトは強い。女性は男性に経済力を強く求めているからだ。

 ただし、女性側は、婚活サイトや結婚相談所に登録している男性に、高収入、イケメン、高学歴、婚歴なしの男性を見つけたら、すぐに飛びつかずに、慎重に検討したほうがいいだろう。そんな好条件の男性がシングルでそうそう残っているわけがないからだ。“優良物件”は周囲の女性が放っておかない。残っている背景には、借金、ギャンブル、暴力……など、何かしら婚活をしている理由がある可能性も否定できない。独身証明書を提出していない婚活サイトならば、妻帯者がナンパのために登録している可能性も疑うべきだろう。

 婚活は、時間とコストをかけられるならば、機会は多いほうがいい。結婚相談所も婚活パーティーも、全部やるべきだ。どこにチャンスがあるかわからない。

 でも、どれか一つから始めるならば、自分に合うツール、アドバンテージを感じるツールを選ぶべきだろう。

婚活パーティーは自分に適した“街”を選ぶ

 次に参加した婚活パーティーは、元女優の受付嬢や華道の先生など、参加者のバリエーションが豊かだった。

 会場は恵比寿。あくまでも個人的な印象だが、東京できれいな女性がもっとも集まっている街は、恵比寿と広尾ではないだろうか。すれ違う女性の多くがおしゃれで、ついふり返ってしまう。

 実は、恵比寿や青山のパーティーを選んだことには理由があった。40代で参加していたときにも感じたことだが、パーティー参加者には街によって明確な特性ある。

 ビジネス街の会場だと、男女とも企業に勤めている参加者が多い。東京を例にすると、丸の内周辺の八重洲や銀座や新橋の会場には会社員が集まりがちだ。きちんとした安定した仕事に就いている人は、自分と同じ収入の安定した仕事に就いている人を求める。価値観が近いからだ。こうした会場で、フリーランスの記者という職種はハンディがある。

 一方、青山や恵比寿には専門職が多くいる。美容系、ファッション系、メディアなどだ。フリーランスの記者でもオープンに接してもらえる。

 丸の内や八重洲や新橋のパーティーと、青山や恵比寿のパーティーでは、参加者の服装やヘアスタイルも明らかに違う。男性参加者の場合、前者は、カチッとしたスーツ姿、週末は安心や安定を感じさせる“お父さん”のような服装が多い。後者は、平日も週末もダメージの入ったデニムだったり、シャツの袖のボタンをはずして少しまくったり、やや崩した服装が多い。

 自分はどちらのエリアで受け入れられるか、よく考えて、アドバンテージを意識して参加したほうがいい。僕が参加した恵比寿のパーティーは、JR山手線や東京メトロ日比谷線の恵比寿駅の近くだった。登録している結婚相談所の主催だが、会員でなくても参加できる。

 会場は清潔なビルの2階。エレベーターを降りると受付があり、美人スタッフが迎えてくれた。

 進行は青山のパーティーと同じだった。参加者は男女とも7人で、計14人。男女横並びで5,6分会話をして、スタッフの合図で男性参加者は次の女性のもとへ移動する。

 このパーティーの特徴は、ひと組ずつ個室で分けられていること。各ブースは白いパーティションで3方向を囲われている。ほかのペアの声は聞こえるが、姿は見えないので、会話に集中できる。そして、参加者のプロフィール確認や気に入った相手のセレクト、連絡先の交換などの作業は、参加者全員に1つずつ渡されるタブレットで行う。この10年間で、パーティーはソフトもハードも進化した。

 ここで出会った3人の女性とは、パーティー後に食事をすることに成功している。いや成功と言っていいのか……その顛末をお話ししよう。

元女優と出会う

 恵比寿のパーティーで、隣の席の女性を見て思った。スタッフにアテンドされた個室には、すでに女性がいた。顔がとても小さい。アイドル歌手のような容姿だ。“素人”ではないな……。そう思った。

「こんにちは。よろしくお願いします」

 努めて明るくあいさつした。

「こちらこそ」

 彼女はにっこりと微笑んでくれた。発声が明瞭だ。完璧なナチュラルメイク。細身にモスグリーンのスーツ。こういう色は常に身なりに気を遣っている女性でないと似合わない。ショートヘアが知的なイメージを演出している。

 パーティーが始まった。

「マイです」

 隣の女性は名字でなく、名前で自己紹介をした。マイさん(仮名)は40歳の契約社員で、職場は外資系の金融企業の総合受付。イベント会社にも所属していて、1カ月に2、3回、週末に司会やナレーションの仕事もしているという。20代のころは劇団に所属していて、小さな役ながら、NHKの大河ドラマにも出演していたらしい。

 40歳の華道の先生ユキコさん(仮名)は、職業には似つかわしくない服装で参加していた。黒のネイビーのスーツの下の白いTシャツの襟は大きく開き、胸の谷間がくっきりと見えていた。そして、ひらすら明るい。人懐こい性格なのだろう。初対面なのに、ボディタッチも交えて、終始笑顔で話し続ける。

 ほかには、保育園の先生、看護師、日系の航空会社のキャビンアテンダント、あと2人は会社員だった。婚活パーティーには、保育園や幼稚園の先生か看護師の女性はよく参加している。女性が多い職場で、出会いに恵まれないのだろう。

 恵比寿だからなのか、運がよかったのか、マイさん、ユキコさん、そして大手電気機器メーカーの秘書室の女性から電話番号やLINEのIDを教えてもらうことができた。

社内不倫生活を逃れるために婚活

 パーティーの後はマイさんと食事をした。会場から徒歩で行けるニューヨークテイストのカフェレストランだ。

「マイちゃんさあ、プロフィールには婚歴なしって書いたけど、ほんとうは2回結婚してるんだ」

 肉の盛り合わせを頬張りながら打ち明けられた。一人称は“私”ではなく“マイちゃん”。パーティーのときとはまったく違う口調だ。こちらが素なのだろう。

 バツイチは気にならない。人と人には相性があり、人生に失敗はつきものだ。そもそも自分もバツイチだ。しかし、バツニはちょっと警戒する。パートナーとの相性ではない何か問題があるのかもしれない。1度目の失敗で学習していない可能性もある。

 マイさんは20代のころに所属していた劇団内の恋愛で心を病み、アメリカ西海岸へ渡り、そこで出会った日本人男性と結婚。しかし、1年で別れた。その2年後に帰国し、勤めた会社で社内恋愛をして結婚。また1年で別れた。離婚の理由は、本人によると、2度とも相手の束縛がきつかったからだという。妻がきれいだと、夫は不安で束縛したくなるのかもしれない。

「私、今、付き合っている人もいるんだ、一応」

 そんなことも打ち明けられた。

 あなたと違って私には交際相手はいると明言して、対等ではないことを主張しているのだろう。マウントポジションを確保したいのだ。

「じゃあ、なんで婚活パーティーに参加したの?」

 素朴な疑問を投じる。

「今の彼とは別れたいの」

 交際している相手は、自分が受付をしている会社の40代の役員だという。2年前に付き合い始めた。マイさんは本気の恋愛だった。

 デートは1週間に1度のペース。終業後、彼女は会社の近くにあるチェーン系ビジネスホテルにチェックインする。部屋で待っていると彼が現れて、2時間ほど滞在する。忙しい彼は会社に戻り、彼女はホテル内の大風呂を楽しんで帰宅する。

 ところが半年前、彼が結婚したことを知った。相手は同じ会社の20代の社員だという。女性のお腹にはすでに子どももいた。ふつうの恋愛だと思っていたら、いつの間にか自分は愛人になっていたのだ。半年前からLINEのレスポンスが滞るようになり、その後受付の仲間から結婚したことを聞いたそうだ。本人に確認したら、あっさりと結婚したことを認め、「気にするな」と言われた。

 週に1度2時間の平日デート、食事はなし、セックスのみ、リーズナブルなビジネスホテル、週末デートはなし……。おかしなことはいくつもあったはずだ。

「怪しいとは思わなかったの?」

 これもごく一般的な質問だ。

「彼が忙しいからだと思ってた」

 その後も週に1度の交際は続いているという。

 彼から毎日LINEで届くという写真を見せてもらった。スマホの画面で、夏でもないのに日焼けした上半身裸のマッチョな男が大胸筋を強調させ、ボディビルダーのようなポーズで写っている。

「今日のオレ」

 写真とともにコメントされていた。それ以外、ご機嫌うかがいや近況報告のような文はない。彼は自分のことが大好きなのだろう。

 彼女がスマホをスクロールすると、前日も前々日も同じアングルで同じポーズの写真が届いていた。やはり「今日のオレ」とある。

「今日の“今日のオレ”も、昨日の“今日のオレ”も一昨日も同じに見えるけど」

「彼によると胸の張りが違うんだって」

“今日のオレ”の画像はマイさんだけでなく、複数の女性に送信されていたのかもしれない。

 既婚者になった彼といまだに会っている理由は、ベッドでの相性がいいこと、一緒にいるときは優しいこと、そして、別れたら、会わなくなった時間を埋めるものがほかにはないからだという。

「マイちゃん、今の生活を変えるために、婚活パーティーに参加してるんだ。でも、まだ彼よりも魅力のある男の人には会えていないの」

夜ごと送信されるセミヌード写真

 マイさんの結婚や恋愛がうまくいかない理由はすぐにわかった。翌日から毎夜、彼女からLINEでメッセージがきた。

「今、何してまちゅかあ?」

 なぜか赤ちゃん言葉だ。用件はない。

 こちらは原稿に集中している時間が長いので、気づかないことも、レスポンスできないこともある。すると、電話がかかってくる。

「なんでマイちゃんのLINEに返事をくれないわけ?」

 交際しているわけでもないのに、攻めるような口調だ。既読スルーしたら、激怒の電話がくる。

「どういうことなの!」

 あとでレスポンスするつもりだった、などと言い訳をすると、怒りはエキセントリックに増幅する。

「この麗しいマイちゃんが、ひと回り以上年上のオジサンにLINEしてあげてるのに! あり得ない!」

 しかし、あらためて書くが、マイさんとは交際しているわけではないし、手もつないでいない。バツニの理由について、彼女は夫の束縛がきつかったと言ったが、相手は彼女の「今、何してまちゅかあ?」攻撃に耐えられなかったのではないか。

 やがて彼女は自分の写真を送ってくるようになった。微妙なヌードだ。裸だということだけがわかる。ただし、肝心なところを隠していたり、バスルームの湯けむりでくもった鏡に映ったぼやけた全裸だったり。

 写真の後、すぐに彼女は電話をかけてくる。

「興奮した?」

「なんで裸の写真をくれるの?」

「べちゅにい〜。もっと見えるのがほしい?」

「ぜひ」

「どうしようかなあ……。送ろうかなあ……」

「お願いします」

「やっぱりやめておきまちゅ」

 そんな不毛なやり取りを重ねた。

 容姿がよく結婚の意志もあるのにシングルという女性には、それなりの理由があるのか……。

石神賢介(イシガミ・ケンスケ)
1962(昭和37)年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターになる。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。30代のときに一度結婚したが離婚。

2020年9月5日 掲載