いじめが原因の子どもの自殺が後を絶たない。文部科学省から発表された平成28年度のいじめの認知件数は32万件を超え、昭和60年度の調査開始以来、過去最多を記録。学校という身近な場所で起きているはずのいじめに、大人はどうして気づかないのか。そして、どうすれば最悪の事態を避けることができるのか。7月9日、長年教育問題を取材してきた岸田雪子さん(日本テレビ元報道局キャスター)がラジオ日本「岩瀬惠子のスマートNEWS」にゲスト出演し、子どものいじめ被害に気づく「きっかけ」について語った。

9割の子どもがいじめを受けている

 番組パーソナリティの岩瀬さんからいじめの現状を聞かれた岸田さんは、国立教育政策研究所の調査結果を紹介し、「(小中学校では)仲間外れ、無視、陰口といういじめを経験した子どもが実に9割います」と話した。これは、子どたちが日常的に暴力を伴わないいじめを経験していることの裏付けでもある。さらに岸田さんは、「いじめに無関係な子どもはいないし、常に(子どもたちは)いじめのある日常に生きてるということを知ってほしい」と強調した。

 なぜ、それほど頻発しているはずのいじめに大人、特に親が気づかないのか。実は子どもたちは親のことを気遣っているからこそ、いじめ被害について話したがらないのだという。岸田さんはこう解説する。「親御さんに恥ずかしいところを見られたくない、心配もかけたくないという思いもあって、自分からなかなか言えないんです。『いつでも話を聞くよ』と親の側は思っていても、子どもの側からすれば、『いや、そんなこと言えない』と」。

 いじめが発覚しづらいもう一つの理由として、番組で岸田さんが挙げたのはSNSだ。
「SNSでグループを作り、誰かを仲間外れにするいじめが、操作として簡単にできてしまう。また、匿名や集団でやることで、加害者意識も低い。このいじめは、誰かが実際に言葉として発するわけではないので、グループ以外では誰も気づかず、水面下に潜ってしまうのです」。大人の視界から消えたネットいじめは激化することが多く、実際に起きてしまった自殺事件の調査でも、後日、被害者のスマホからSNSに書き込まれた悪口が発見されるケースは少なくない。

7月はいじめが深刻化する時期

 ならば、どうすればSOSに気づくことができるのか。「それでも(子どもにはサインに)気づいて欲しいという気持ちもあります。だから、日常生活の中のふとした瞬間に、何らかのサインが出てくることはあると思うんです」と岸田さんは言う。

 岸田さんは著書『いじめで死なせない』(新潮社)の中で、大人が子どものわずかな変化に気づくための、「きっかけ」を紹介している。「友だちづきあいに、変化はないか」「身体にアザやケガが増えていないか」「持ち物が壊れたり、落書きされていないか」「金がなくなる。金の使い方が変わる」「電話で呼び出されている。塾や習い事を、黙って休む」など……。こういった変化は、思春期特有の反応とも重なるため、いじめかどうかの判断は慎重に行う必要があるが、とにかく普段から子どもの行動に目を配って、変化を見逃さないことが重要だ。

 番組中、何度も話題に上がっていたのは、いじめが始まり、深刻化しやすい時期が夏休み前の6月から7月であること。これには様々な理由があるようだ。岸田さんの説明によると、4月にクラスが替わり、子どもたちもしばらく様子見だったが、連休を挟んだ5月あたりから、徐々にクラス内の人間関係に変化が生じてくるのだという。「例えば、担任の先生が誰かだけを贔屓したり、逆に誰かだけの扱いが良くなかったりすると、子どもたちがそれを真似てしまうことがあるんです。そういった人間関係の中で〈ターゲット〉が決まっていくのが6月ぐらい。夏休み前の7月には深刻化してしまう」。

 夏休み前の子どもの変化に警鐘を鳴らす岸田さんの著者には、サインに気づいた後に子どもから詳しい話を聞く際の心得「カウンセリングマインド」や、見つけづらい「ネットいじめ」への対応策が提案されている。番組でも、「子どもの自殺のピークが9月1日であることは、ずいぶん知られるようになりました。夏休みもネットいじめが続くわけで、だからこそ、この7月の大人の目配りが大切なんです」とリスナーに繰り返し呼びかけた。

デイリー新潮編集部

2018年7月13日 掲載