本部の合意を得ないまま時短営業を続けていたセブン−イレブン(以下セブン)東大阪南上小阪店は19年末をもって契約解除されたものの、今も“個人商店”として営業を続けている。在庫がなくなり次第閉店するというが、セブンの看板は今も掲げたままだ。今後、店にはどんな事態が待ち受けているのか。『セブン−イレブンの真実』などの著書があるフリージャーナリストの角田裕育氏が取材した。

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 松本実敏さんが経営するセブン−イレブン東大阪南上小阪店は、昨年2月から24時間営業を中止していた。その大晦日も、例年と違って静かなものだった。本部から一方的に契約解除通知されたため、閉店を余儀なくされたのだ。

 もっとも、セブン&アイ・ホールディングス広報センターに「何か対応をするのか」と尋ねたが、広報責任者は、「何もありませんよ。別に普通ですよ」と返すのであった。

「こんな大晦日が来るなんて去年は考えられなかったですよ」

 12月31日の23時過ぎ。松本さんは苦笑しながらこう話していた。店内は従業員も客もおらず、静まりかえっている。それでも店に出たわけは、セブンの関係者から、

「強引に店舗が解体されるかもしれない」

 という不気味な噂が松本さんの耳に入っていたからだ。

「何かやればマスコミの脚光を浴びるから本部は何も出来ませんよ」

 とタカを括ってはいた。しかし、同時に私に対し、元本部社員は、

「看板をこっそり夜中に外しに来ると思います」

 とも話していた。

裁判所の許可をとり…

 結局、大晦日は何事もなかった。松本氏は1月2日から店舗を独自に再開し、レジに立っている。

 だが、セブンの看板を強引に外す、というのはありえない話ではない。かつてコンビニ業界は、反抗的な加盟店の強引な解体作業を行うことで有名だった。たとえば1998年には、京都のサークルKを、本部がクレーン車で解体を強行しようとしたこともあった。もちろんオーナーに無断であり、このときは京都府警が出動する大騒ぎになった。

 そこまで強引ではないにしろ、セブンでも同様のことが幾度もあったと、元本部社員は言う。

「30数年前でしたか、何度か店舗の解体を手伝いました。解体にあたっては、店を担当するOFC(店舗経営相談員)と呼ばれる社員や会計チーフ、建設担当の社員、本部の法務部社員など10数人が立ち会ったうえで、2〜3人位の業者を手配して解体作業をやりました。店舗内の商品を社員が撤去して業者が看板などを外します。大体朝9時くらいに開始して、昼の12時〜13時くらいには終わる作業ですね」

 では、合意が得られなかった場合には、どうなるのだろうか。

「電気を止めてしまえば、冷蔵庫やレジも使えないし、営業できないですからね。裁判所の許可を取ったうえで、解体となります。松本さんのお店も、裁判所の許可を得て立ち退きになるでしょうね」

 現在ではやり方は異なるだろうが、松本氏の店への対応ノウハウを、セブンはきちんと持っているというわけだ。

 松本氏は、250万円程度の出資金から開業可能なタイプの店舗契約を結んでいる。こちらは開業資金が安く済み、本部が土地・建物を地主から契約して用意してくれるが、そのぶん本部に収めるチャージが高く最高で70%を超える。もう一方の契約タイプは、オーナーが自前で土地・建物を用意するというもの。初期投資が数千万円かかるが、チャージは43%と安い。

 松本氏が結んだ契約タイプでは、店舗はいわば賃貸物件であり、松本氏の自己所有ではないのだ。そのぶん、解体にあたっても本部が強気に出てくる可能性は高いと言える。

「本部は1月初めの役員会議で何らかの決定をするのではないか。ゾーンマネージャー(部長級の社員)程度の裁量では決められないと思う」(元本部社員)

 これだけ看板に“泥”を塗られたわけだから、セブンにとって松本氏の店の解体は、大プロジェクトになっていることだろう。そのあたりを本部側に尋ねると、

「今の状況では何も申し上げられない。私には情報がない」(先のセブン広報)

 との回答。松本氏の店舗が解体される日は、そう遠くないようだ。

角田裕育(すみだ・ひろゆき)
ジャーナリスト。兵庫県神戸市出身。北大阪合同労働組合青年部長、ミニコミ誌記者などを経てフリーに。著者に『セブン-イレブンの真実〜鈴木敏文帝国の闇〜』(日新報道)、『教育委員会の真実』(宝島社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月6日 掲載