よもや、年末の多忙な時期を狙ったわけではあるまい。東京都は昨年12月25日、2020年度の都職員採用試験から、受験申込書の性別記入欄を廃止すると発表した。都人事委員会は、LGBTなどの性的少数者へ配慮してのことだと説明している。

 全国紙記者によれば、

「ここ数年、行政への提出書類で性別欄を廃止する自治体が増加しています。これに伴って、職員採用試験でも性別を問わない自治体が増えているのです。都道府県レベルでいえば、最初に廃止したのは愛媛県。1978年度の募集から“年齢区分はあるが、行政職の仕事に男女は関係ない”との名目で申込書から性別欄をなくしました」

 愛媛県に佐賀県と熊本県が追随し、東京都は4例目になるという。とはいえ、このタイミングで発表したのはなぜか。

「実は、東京五輪開催が控えているからです」

 こう明かすのは都庁の幹部職員だ。

「14年12月に開催された国際オリンピック委員会の総会で五輪憲章が改正されて、“LGBTなど性的指向への差別を許さない”との項目が追加されたのです」

 これを受けて都議会は18年10月、LGBTへの差別禁止を盛り込んだ人権尊重条例案を可決、成立させていた。

「人権尊重条例に基づいて、都は昨年からLGBTへの差別につながるような案件を見直していました。その一つが受験申込書の性別欄だったわけです。つまり、都が独自にLGBTの方々に広く意見を聞いて廃止したわけではなく、あくまでも東京五輪開催のためのポーズにすぎません」(同)

 だから、こっそり発表したのだろう。

 哲学者の適菜収氏の考えは、

「性的少数者への差別はよくないが、性別記入欄廃止との関連は理解できません。そもそも採用試験の結果は、能力の問題であって性別は関係ないのではないでしょうか」

 これでLGBT差別がなくなるわけでもあるまい。

「週刊新潮」2020年1月16日号 掲載