コロナ禍の昨今、総務省は国勢調査にインターネットでの回答を呼びかけている。そうはいっても、各戸を訪ね歩く調査員はやはり必要で、今年の調査員は約61万人。だが、彼らに支給された手提げ袋が「メルカリ」に出品され……。

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 その手提げ袋には〈令和2年 国勢調査〉〈総務省統計局〉と記されていた。千円也。だが、鉄道や警察のマニアが制服やバッジなどの備品を欲しがるのはまだしも、国勢調査員の備品を求めるマニアなどいるのだろうか。むしろ、各家庭の情報を入手して悪用したい輩が舌なめずりしそうなシロモノである。ジャーナリストの徳岡孝夫氏は、

「その袋を持った人が家に来たら、高齢者などは調査員と信じてしまうかもしれません。銀行口座やクレジットカードの情報が必要と言われて教えてしまえば、詐欺に発展しかねない。警官の格好をした人には手帳を見せてもらえば身分確認できますが、国勢調査員は分からないでしょ」

 そうした事態を想定した総務省の通報で、メルカリは出品禁止にしたのだが……。

「国勢調査員全員が善意で働いているわけじゃないですからね」

 と、元参院議員で野球評論家の江本孟紀氏。

「今回の手提げ袋のように、何か物を配布したりするときは善意が悪用される可能性も考えなくてはいけない。甲子園の土のキーホルダーもそうじゃないですか」

累計出品数15億

 このキーホルダーは、コロナで甲子園の夢を絶たれた球児を励ますため、阪神の矢野監督らの発案で、全国の球児に「甲子園の土」を封入して贈ったもの。が、9月、メルカリに相次いで出品されていることが発覚した。江本氏が続ける。

「キーホルダーを受け取った球児全員が善意を100%受け止めたとは限りません。売買の場を提供しているメルカリさんだって商売。難しいところです」

 そのメルカリは、2年前に東証マザーズに上場。創業社長の山田進太郎氏などは上場で約1千億円を手にしたともいわれる。

 Jリーグのチームの経営権も取得し、タモリをCMに起用するなど、広告費も膨大だ。利用者はいまや月間1500万人を超え、今年1月には累計出品数が15億を突破。一人勝ちで、笑いが止まるまい。ITジャーナリストの三上洋氏は言う。

「拳銃や薬物といった明らかに違法な物や、ライブのチケットなど利用規約で禁じられている出品は削除されます。自動検知システムと約250人の目視で、24時間体制で出品物を監視していますが、売ること自体が違法とされていない物は対策しようがないのです」

 今回の袋のように犯罪助長の可能性がある物は、

「事前にメルカリがチェックすべきですが、一つひとつ調べることなど到底できません。総務省が転売禁止を明記した上で、直接依頼して規約違反物に登録させるしかありません」

 メルカリさん、大儲けした分をもっと出品監視に使ってはいかがですか。犯罪の温床とならないためにも。

「週刊新潮」2020年10月1日号 掲載