口から出まかせを並べ立てて欺くのが一般的な詐欺師だが、この男はどうだったか。株式投資などを行う「匠マネジメント」の代表取締役で、杉本学武(まなぶ)から改名した杉本道秀(どうしゅう)容疑者(61)。その手口とは――。

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 架空の債権の売買代金名目で現金を騙し取ったとして、11月4日、神奈川県警に詐欺容疑で逮捕された杉本。県警担当記者によると、

「一昨年、“新たな株を買う金を出してくれたら別の運用で利益が確定した2100万円を支払う”と嘘をつき、千葉県の債権買い取り業者の男性から1780万円を騙し取った容疑です。杉本はこの一件だけではなく、数え切れないほどの詐欺行為を重ねているんですよ」

 本誌(「週刊新潮」)は2年前、この被害者の中に俳優の塩谷瞬がおり、3千万円を騙し取られた事実を報じている。

 その後、タレントの手越祐也が500万円、有名セクシー女優が800万円詐取されていることも判明した。

 ともあれ、民事訴訟を起こす被害者は後を絶たず、2年前の判決では、杉本容疑者の不法行為が認定されていた。この裁判の原告代理人、加藤博太郎弁護士の話。

「杉本容疑者は、月利1・5%以上の利回りをうたって数十人から数十億円の出資金を集めました。リスト化された分だけでも、出資額は17億円に上ります」

大和証券時代のコネ

 それだけの被害者が騙された背景には、

「“大和証券元支店長”の肩書があります。被害者からすれば、元支店長なら運用面で信用できるし悪いことなどしないと思いこんでしまう。加えて、地味な風貌なのに、芸能人が経営するレストランに出資しているなどと言葉巧みに話し、洒落た店に顧客を集めて芸能人や有名アナウンサーが来店するのを実際に見せたりしていました。あとは、はじめはきちんと配当を出すことでも信頼を得ていましたね」(同)

 数カ月は配当が出るが、しまいには配当も連絡も途絶える。この点は投資詐欺お決まりのパターンだが、昨年、本誌が杉本容疑者本人に取材したときには、

「ブラジルレアル建ての投資信託で失敗し、出資者への支払いは8億円前後が滞ってしまっています。テゴやん(手越)も塩谷くんも同じ人の紹介で知り合いました。テゴやんからは“返してくださいよ〜”ぐらいは言われますが、揉めてなんかいません。塩谷くんは……ちょっといろいろ言われています」

 とうなだれていたが、自身の経歴の話になると、

「私は立川支店で支店長に就任後、支店の総合評価をビリからトップに押し上げたんです。誰も落とせなかった大口顧客も落としました。全国の支店から注目される、40歳の最年少支店長でした。次長、エリアマネージャーとしても最年少でした」

 饒舌だが物腰は柔らかだ。では、実際の被害者はどんな印象を抱いたのか。

 7年前、会社の同僚を通じて出資した男性は、

「元本保証というので短期で出資し、結局1千万円以上戻ってきていません。“大和証券支店長時代の関係先で特別なファンドを運用しているから高配当を出せる”という言葉を信用してしまったんですよね」

 4年前に知人の紹介で杉本容疑者と知り合った女性は、

「“2カ月だけ出資してくれれば、大和証券時代のコネでJR九州の新規公開株を買える”とのことで、実際に月5%の配当が出たので、延長して計1600万円出資しました。大和証券時代には宗教法人など数々の顧客を抱えていたと聞き、大和証券の元役員という方も紹介されたので……」

 どこからが嘘か判然としないが、職歴と真面目で朴訥(ぼくとつ)なイメージもうまく使っていたようだ。

「週刊新潮」2020年11月19日号 掲載