忘年会シーズンを迎えたにもかかわらず、営業時間短縮を要請された飲食店は軒並み大打撃だが、数多くのゲイバー、レズビアンバーなどがある新宿二丁目も例外ではない。コロナ以前は、世界一のLGBT街として、当事者はもちろんのこと、ノンケ客も含め、世界中から多くの観光客も訪れていたのだが――。

 新宿二丁目でゲイバー「A Day In The Life」を営み、街の歴史を詳細に追った『新宿二丁目』(2019年刊)の著書もある作家の伏見憲明氏は、

「以前、うちの店は新規のお客さんと、馴染みの客とが半々ぐらいで来てくれていたのが、今は新規客というのが、ほとんど入らない感じですね。今来てくれてる馴染み客は、店のことを思ってわざわざ足を運んでくれているわけで、潰れないでねってお賽銭というか、お布施を頂いてるようなもの」

 と嘆息する。金曜日の夜ともなると、路上にまで溢れていた観光客の姿は一切消えたままだ。

「ただ、コロナ以前から、若い世代ではアプリでの出会いが主流になりつつあったので、二丁目に来ていたのは、単なるマッチング以上の何か、会話だったり、世代を超えた交流などを求めていた人が多かったんです。」

 そうしたニーズは今もあり、人出がないわけではないという。現在、伏見氏の店では入口に手洗い場を設け、アルコール消毒はもちろん、アクリル板をカウンター席に設置。窓、ドアを開けての換気も欠かさない。

街は生き物、時代に合わせて姿が変わる

「うちは小さい店だから何とかなってる。クラブや大箱の店は軒並み厳しいですよね」

 しばらく前には営業が憚られるような空気もあったそうで、時短要請中はそうしたムードが戻って来るのか、と懸念されてもいるが――。

「昔の二丁目を知ってる側からすると、何だか一昔前に戻ったような気もするんです。今みたいにオープンじゃなかった時代は、店も営業してるんだかしてないんだか分からないくらい、看板も灯もなくて、でもドアを開けるとお客もきっちりいて『早く入って!』って言われたりしてね。『新宿二丁目』のために取材をしてつくづく思いましたが、街は生き物ですから、その姿が時代に合わせて変わるのは当たり前なんですよね」

今だからできることもある

 世界一のLGBT街として賑わう前の、人目を忍ぶひっそりとした二丁目の姿を覚えている人々もまだ多いのだ。そして、

「何もしないではいられません。今だからできることもあるはず」

 と語る伏見氏自身、文藝賞受賞の作家とあって「A Day In The Life」では、フリー編集者のママ(水曜日勤務)を部長に、新たに「二丁目文芸部」を立ち上げたという。部員登録したら、どんな作品を作りたいか部長と打ち合わせし、作品を提出後、部員と合評会が行われ、作品が集まったら冊子『二丁目文学(仮)』の制作を目指すそうだ。

「このご時世ですから、合評会などはどんな形で開催するのかは、臨機応変になりますけど、今だから生まれるものもあると思うんです。ネット中心に運営するにしても、やはり最後は紙の同人誌を作りたい。気軽に参加して頂きたいですね」

 水曜日の「A Day In The Life」で部長に直接申し込めば参加可能とのこと(https://twitter.com/noriakikoki)。思えばトーマス・マンの『ベニスに死す』も、疫病下のベネチアで美少年を追う老作家が主人公。新たな名作が生まれるかも?

デイリー新潮編集部

2020年12月2日 掲載