「日本医師会は開業医の利益を守るための圧力団体」

 日本医師会の中川俊男会長(69)が昨夏、高級寿司店で女性とデートしていたことを、5月20日発売の「週刊新潮」は報じた。さらに今回、中川会長の尽力により、お相手の女性は“医師会一番の高給取り”になったことも判明した。

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 医療が逼迫するなか、不休で働く最前線の医師たちの言葉は、尊重されなければなるまい。たとえば、大阪府内で治療に当たるという救命救急医で歌人の犬養楓さんの、〈一日は かくも長きか 口と皮膚 覆われ今は 肩で息する〉という短歌には、切羽詰まった状況が端的に表されている。

 だからこそ、日本医師会の中川会長が、感染が拡大すれば「緊急事態宣言の発令を躊躇している場合ではない」と強く訴え、宣言解除の基準は、東京都の1日の感染者数が「100人以下だと思う」と厳しく主張すると、少し前まで、ネット上には理解を示すコメントが多かった。

 もっとも、それは中川会長が、最前線に立つ医師たちの代表だ、という勘違いが多かったからだろう。

 現実には、17万3千人の日本医師会会員に、新型コロナの指定病院で体を張って治療に当たっている医師はほとんどいない。日本医師会は新型コロナ患者を受け入れていない開業医が中心の団体で、さる病院の勤務医は、

「日本医師会は開業医の利益を守るための圧力団体で、一部の公的病院に負担が集中する現状を維持したいのが本音。感染者が増えて開業医に火の粉が降りかかるのを阻止するために、国民の危機感を煽ってきた」

 と断じる。そうであれば、中川会長自身が、「緊急事態宣言の発令」を「躊躇」するなと訴えた前日の4月20日、自身が後援会長を務める自見英子(はなこ)参議院議員の政治資金パーティーに発起人として出席していたのも、不思議ではない。

3密の高級寿司店で女性とデート

 では、「週刊新潮」5月27日号で報じた“寿司デート”はどうか。詳細をご存じない方のために、デートの模様を簡単におさらいしておきたい。

 昨年8月25日18時すぎ、中川会長は日本橋高島屋前で専用車を乗り捨て、百貨店の1階を突き抜けて、裏側でタクシーを拾った。いったん八丁堀の酒店前でタクシーを待たせ、ワインらしき物を買い込むと、向かった先は1人当たりの単価が2万〜3万円という寿司店で、客席間にアクリル板もない満席の店内には、40代のショートカットの女性が待っていた。その後、二人は1時間半ほど、酒店で買ったのか、シャンパーニュを飲みながら、寿司に舌鼓を打ったのである。

 その後、タクシーで女性を自宅に送り届けて帰宅した中川会長だったが、“デート”の直前にも「人との接触を控え」て「三つの密を避け」ろと言い、「我慢のお盆休み」を求め、「国民一人ひとりの行動にかかっている」などと強い言葉を発していた。だから怒った人たちが「上級国民」のレッテルを貼り、ネット上には〈辞任する以外ない〉などの声があふれたのも頷ける。

「日本医師会は医学界の権威ではなく、政治組織」

 国際政治学者の三浦瑠麗さんも言う。

「人間らしい点は、私にはむしろ中川さんの好感につながりました。聖人君子は、かえって人間性への洞察が足りなくなる。お酒など飲まなくても権力を行使するだけで充足感を得るリーダーのほうが怖いし、言行一致して奢侈品バッシングするような人のほうが害がある。中川さんは今回の報道を受け、感染制御に関して極端なことを仰らなくなりました。突かれるとシュンとするくらいのほうが健全で、自分の欲が客観的に見えて、社会のことも洞察できるようになるものです」

 事実、すでに記事が流布していた5月19日の定例会見では、話好きの中川会長がマイクをわずか3分弱で譲り、16分ほどで退席。シュンとして逃げてしまったようである。

 三浦さんは続けて、

「日本医師会は医学界の権威ではなく、政治組織であることを認識する必要があります。ところが、その会長がすべての医師の代表のように見え、その言葉が力を持ってしまったのは、メディアが虚像を作り上げてしまったからです」

 と話す。

 ところで、中川会長と寿司デートをともにしたショートカットの女性は、日本医師会総合政策研究機構主席研究員、山田陽子さん(仮名)であった。日本医師会に詳しいノンフィクション作家の辰濃(たつの)哲郎氏によると、

「1997年に発足した日医総研は、“人にやさしい医療を目指して”を理念に掲げていますが、実態は厚労省、財務省に対抗する組織と言ったほうが正確でしょう。日医には2年に1度の診療報酬改定を、会員に有利に進めるという役割がある。その際、特に改定率を決める際に根拠になるデータを独自に集め持っている厚労省に対抗すべくできたのが日医総研です。よりよい改定率を実現するため、このコロナ禍では、どれだけの医療機関が減収になっているか、どの科が減収傾向にあるか、といった研究を発表しています」

「いろんな噂は有名」

 さる日本医師会幹部が打ち明ける。

「中川さんが日本医師会の常任理事になったのは2006年で、副会長に昇格したのが10年。横倉義武前会長の前、10〜12年の原中勝征会長時代に、“山田さんのがんばりは群を抜いているので特別に給料を上げるべきだ”と、会長に直訴したと聞いています。事実、彼女の年収は昨年時点で1800万円。元来、日医の職員で最も高給だったのは、厚労省からの天下りポストである事務局長で、年収1500万円ほどでしたが、山田さんが最も高額になっています。彼女は優秀な研究者ですが、上昇志向、権力志向が強い。中川さんとは“非常に親しい間柄”という話も聞いていて、中川さんの後ろ盾があるからか、山田さんのパワハラによって複数の女性職員が辞めたとも聞いています」

 日医の複数の理事と付き合いがある関係者も、

「中川さんが山田さんの給与を上げるように会長に直談判した、という話は当時から聞いています。“中川さんの後押しで山田さんが厚遇されている”“二人はできている”とも、複数の理事から聞きました。彼女は以前、“私は利用できる男は利用する”という趣旨の発言をした、という話も聞きました」

 と話す。そこで前々会長の原中氏に尋ねてみた。

「中川さんと山田さんの関係ですか? 個人的なことにも関わるので、言わないほうがいいと思います。もちろん、いろんな噂は有名でしたから、知らないことはない。給料を上げるように直訴された? それはあんまり言えないな。会の会長には、辞めたからといって、言いたくても言えないことがあるんですよ。ただし、質問の趣旨はわかりますよ。記事を書くことでなにかが動いて、それが国民の幸せにつながるのが一番だと思っています」

 一方、中川会長は自宅マンション前にジョギング姿で現れた前回と異なり、シュンとしてなのか姿を現さない。そこで文書で質問すると、日本医師会が、山田さんの給与云々は「人事に関することで公表していない」、パワハラは「把握していない」、中川会長と山田さんの関係は「会長に確認したところ、噂にあるような事実はないとのこと」と回答。山田さんについては「年収は06年当時から横ばいで推移」と答えた。

「週刊新潮」2021年6月3日号 掲載