コロナ禍で経済への打撃は甚大。2020年度の国内総生産(GDP)も前年度比4・6%減で過去最大の落ち込みとか。おかげで税収も減るかと思ったら、

「20年度の国の一般会計の税収は、過去最高の60・8兆円になる見通し。見込みより5兆円超も上振れした形です」(経済部記者)

 おや、不景気なのに税収増とはこれいかに。そのカラクリをニッセイ基礎研究所准主任研究員の佐久間誠氏が読み解くには、

「まず法人税収が想定を大幅に上回ったからでしょう。昨年度中に自動車、半導体といった製造業で海外輸出が回復を見せました。国内でも巣ごもり需要があり、家電量販店やホームセンターの売り上げ増にそれは現れている。ゲーム分野でも任天堂やソニーが潤って好決算を叩き出していますね」

 基幹3税を見てみると、法人税収は昨年末の想定より3・2兆円も多い11・2兆円に達しそう。所得税収も前年度と変わらず19・2兆円を記録し、消費税収は19年10月から税率を10%に上げたせいもあり、前年度比2・6兆円増の21兆円に。これは想定より1・7兆円上振れしている。

 まぁ、国はさぞや嬉しかろうが、元内閣官房参与の藤井聡・京都大学大学院教授(公共政策)いわく、

「私はこの数字を見てゾッとしました。名目GDPが1%伸びれば税収も数%伸びるという税収弾性値という概念がありますが、GDP減なのに税収が伸びているのは、既存の税収理論を覆すものだからです」

 そこに覗くのは、とても喜べない社会構造の二極化だという。

「低所得層の人の税負担はもともと少ないですが、コロナ禍による減収や失業増でその層からの税収はより減っているはず。それでも消費増税による増収分を差し引いても全体の税収がほぼ同じだったのは、そうして減った分を補ってあまりある“入り”があったということ。現在の不況下でも3割ほどの企業が黒字ですが、これら企業に限ってはむしろより儲けたはず。個人レベルでいえば、企業経営者や一部投資家などのお金持ちが“より所得を増やした”としか考えられない。そこからの税金の“入り”が莫大だったわけですが、コロナ禍にあって富める者はますます富み、貧しい者はより貧しくなったことが透けて見えますね」

 なるほど、事態は深刻だ。

「GDPはコロナで24兆円も減ったといわれます。それはそのまま“貧しき層”が被った損害の額をも表すものです」

 とは藤井教授。

「コロナ対策で迷走している政府が、結果的に税収増という果実を享受している。これぞドロボウに追い銭と言うべきでしょう」

 忘れかけていた「減税」を、今こそ議論すべきだと藤井教授は言うのである。

「週刊新潮」2021年7月15日号 掲載