孤独死などで遺体が長期間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、現場で発見されたお骨について聞いた。

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 高江洲氏は、特殊清掃の現場で、お骨を50体ほど目にしてきたという。例えば――。

「3LDKのマンションで、死後1カ月経った60代の男性が発見されました」

 とは、高江洲氏。

「私はいつものように、見積もりのためにその部屋を訪れました。廊下を進んだ先のリビングのテーブルの上に、真新しい白い布に包まれた箱があるのを見つけました。それがお骨であることがすぐにわかりました」

 元々、この部屋には亡くなった男性とその母親が住んでいたという。

お骨を12体預かって

「母親は、その1年前に亡くなったそうです。ところが、男性には精神疾患があったため、遺体は半年ほど放置されてしまったんです。それがこのお骨だったのです。孤独死する人は、経済面や人間関係で悩んでいたり精神疾患を患っていたりと、何らかの問題を抱えていることが多いものです。家族が亡くなり、そのお骨を供養しないまま、残された人も孤独死してしまう、そんなケースは珍しくありません」

 実は高江洲氏の会社では、これまで特殊清掃の依頼主からお骨を12体預かったという。

「生活保護を受けていた70代の男性がワンルームのアパートで病死し、2週間経って発見されました。大家さんから依頼を受け部屋を清掃したのですが、押し入れを整理していると、お骨が2体出てきたのです。亡くなった男性の両親のお骨でした。生活保護を受けている本人のお骨は行政が供養することになりますが、両親のお骨まで行政が面倒をみる義務はありませんからね」

 処分に困った大家は、お骨を高江洲氏に預けたという。

「他にもこんなケースもありました。70代の男性がアパートで孤独死し、その娘さんから特殊清掃の依頼がありました。男性は荼毘にふされてお骨となったのですが、娘さんは『墓を用意できない』と言うのです。事情を聞くと、男性は数十年前に蒸発したということでした。その理由はわかりませんが、男性が亡くなって、警察から娘さんの元へ連絡があったそうです。彼女は、数十年も会っていない父のためにお金を使いたくないといわれ、私がお骨を預かることになりました」

 中には、お骨を産業廃棄物として処分して欲しいと言われたこともあったという。

「しかし、お骨の廃棄は法律で禁じられています。寺院や霊園で永代供養するにしても数十万円はかかり、その費用を負担できる遺族や大家は多くありません。そのため、私が依頼主に代わって現場から出てきたお骨を預かっているのです」

沖縄に慰霊碑

 これらのお骨は、海洋散骨を行うことを条件に預かることにしているという。

「2年前から海洋散骨を始めました。今では死後、自然に還ることを望む人が増えてきました。実は私自身、死後は海に葬られたいと思っています。それは、たまの墓参りの時だけ故人を偲ぶよりも、海を見たら思い出す方が素敵だと思うからです。私は普段から子どもたちをよく海に連れて行って、『海を眺めたら父ちゃんと母ちゃんを思いだせ』と話しています」

 お骨をパウダー状に砕く『粉骨』をして、海洋散骨を行う。

「その粉を私の故郷である沖縄の海に撒いています。セレモニーは行わず、散骨する時期も場所も任せてもらう分、料金は3万円(税別)で請け負います。そうすれば、お墓を建てたり、永代供養したりすることが経済的に難しい場合でも、多くの人が供養できるでしょう。一般の方からも海洋散骨を請け負い、これまで計30体の海洋散骨を行いました」

 高江洲氏は将来、海洋散骨した人たちの慰霊碑を沖縄に建てることも計画している。

「亡くなった人たちの名前を慰霊碑に刻み、誰でも訪れられる場所にしようと考えています。せめて死後は、亡くなった人が孤独な思いをせずに済めばいいと思っています」

デイリー新潮取材班

2021年8月31日 掲載