大企業のみに適用されてきたパワハラ防止法が、4月から中小企業(製造業で従業員300人以下、サービス業で100人以下など)も対象となる。全企業でパワハラ予防や事後対応の措置が必要となるわけだ。

「2月ごろから事業者の問い合わせが増えています」

 と話すのは、東京労働局雇用環境・均等部指導課。

「大半は、懲罰規定を就業規則でどこまで文書化すべきなのかとか、相談窓口の設け方といった制度設計に関するものです」

 だがそもそも、日本企業の99.7%を占める中小の事業者に周知されているのだろうか。昨夏、日本・東京商工会議所が行った調査では、法の名称・内容を知っていると答えたのは全体の42.5%にとどまった。

 軽んじてはいけない。非正規職員やパートにも無論、パワハラはダメ。仕事後の懇親会で部下に延々と説教を垂れるのもNG。逆に部下から上司への嫌がらせも問題とされる可能性が。

 また、従業員に対する顧客からのカスタマーハラスメントにも会社は対応を迫られる。宿題が山積みだ。

パワハラを意識できない経営者

 中小企業の場合、最も懸念されるのは、じつは経営者そのものらしい。『パワハラ問題―アウトの基準から対策まで』の著書がある井口博弁護士が言う。

「中小企業経営者、特にワンマン経営者は創業者でもあることが多く、自らのパワーで会社を大きくしてきているせいで、そのパワーが社員に対しても向けられることが多い。このような経営者はパワハラをしていることをほとんど意識できていません。社員に対して『パワーを示さないと会社経営はできない』という意識が先立ち、パワハラの何が問題かという“確信犯”になるおそれも。典型的なのは、ミスを大声で叱り飛ばす、気に入らない報告をしてきた社員に書類を投げつける、営業成績の悪い社員を会議などさらし者にする、といった例ですね」

 こういった“いかにも”なパワハラ以外にも注意しなければいけないポイントが。

「また今後、特に気を付けないといけないのは、パタニティ(父性)ハラスメント。育児は女性がやるものだというバイアス(偏見)から、男性社員が育休を取ろうとした時に『育児は奥さんにやらせとけ』などと発言するようなケースです。やはりパワハラになります」

まずは弁護士、司法書士に相談

 パワハラ防止法には罰則はない。とはいえ、パワハラによって社員のメンタルヘルスに不調が生じた場合、高額の損害賠償義務を負う可能性がある。また、人材流出やブラック企業としての風評が立つといったリスクも高い。さりとて従業員数人の企業では、パワハラ対策まで手が回らない。

「まずは経営者自らがパワハラをしていないか自己点検すべきです。小さな企業は相談窓口を作るなどの余裕はないので、弁護士や司法書士らに頼むのがいいと思います。相談窓口の委任だけなら高額にならないでしょう。もしくは公的な相談先を従業員に知らせておくことです」(同)

「週刊新潮」2022年4月21日号 掲載