ゴールデンウィークの到来だ。10連休を取った人は、待ちに待っていただろう。だが、海外旅行はまだ不安、と見送った人は多いはず。各国で水際対策が緩和されてきたが、コロナ禍の海外旅行は準備することが多くて厄介極まりないのだ。一足早く、4月27日からフィリピンに飛び立った30代会社員に、これまでの海外旅行にはなかった準備書類や出国・入国時の手続きについて話を聞いた。

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2年間待った海外旅行

「いやぁ、南国は楽しいですよ。2年ぶりの海外旅行ですから、テンション上がりっぱなしです」

 IT企業に勤める吉永将さん(仮名・30代)は、リゾートホテルのプールサイドでカクテルグラスを傾けながらZoom取材に応じてくれた。旅行期間は4月27日から5月4日までの7泊8日。タイ在住の友人も合流し、ホテルでの食事や市内観光を楽しんでいるという。

 海外旅行が趣味だったが、コロナ禍で2年間お預け。まだかまだかと待ち望んでいたが、3月に日本政府が水際対策を大幅に緩和したタイミングで、決行を決意した。それまで日本政府は、ワクチン接種の有無にかかわらず、帰国後7日間(当初は14日間)の自主隔離を義務づけていたが、3回接種した人は、原則、空港での検査が陰性だった場合に限り、隔離が免除になったのだ。

3つの書類

 水際対策を緩和している国は増えつつある。ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、タイなどの選択肢から、フィリピンを選んだのは”近さ”。だが、ここに来るまでの道のりは大変なものだったという。

「今までの海外旅行とは、まるで違うものでした。準備段階で、面倒くさくなってもうやめようかと思ったくらいです」

 いったい何が違うのか。まず出国の際には、フィリピン政府が要請する3つの書類を用意しなければならない。

1、ワクチンの接種証明書(2回以上)
2、陰性証明書(PCR検査の場合は出発前48時間以内、抗原検査の場合は出発前24時間以内)
3、新型コロナウイルス感染症治療のための海外旅行保険加入証明書(最低補償額3万5000米ドル)

 一番厄介だったのは、陰性証明書だったという。

「都内に海外渡航者向けの陰性証明書を発行してくれる業者はたくさんあるのですが、値段がピンキリなんです。3万円のところもあれば、1万円のところも。PCR検査より抗原検査のほうが安いんですが、抗原検査で大丈夫なのか。しかも、抗原検査には抗原定性検査と抗原定量検査の2種類あったりして、違いがよくわからないのです」

費用がピンキリな「陰性証明書」

 ネットでリサーチを続けると、タダで取得できる「ウラ技」情報まで出てきた。

「東京都の登録業者である『木下グループ』の検査センターです。都民ならば無料で受けられるのですが、ここで発行される証明書は海外渡航者向けのものではない簡易なもの。日本語と英文が入り混じっていて、パスポートナンバーの欄もありません。ですが、氏名欄にパスポートナンバーを強引に書き込めば、それで代用できるとネット上で言われているのです。審査が緩いアメリカ渡航ではまったく問題ないとされているのですが、フィリピンでも通用するかは真偽不明で……」

 陰性証明書は、日本帰国時にも求められる。現地のクリニックなどで搭乗72時間以内に取得しておかねばならないのだが、日本政府は厳しく、抗原検査はNGでPCR検査のみ。しかも採取方法が「鼻咽頭ぬぐい液(Nasopharyngeal Swab)又は唾液(Saliva)」と限定されている。実際、それを知らずに規定外の証明書を持って空港まで向かったものの、航空会社のカウンターで「これでは帰国できない」と言われ、搭乗できなかった人が続出しているのだ。

「木下グループ」で突破できるのか

 帰国できないリスクだけは避けたい。吉永さんは帰国時の陰性証明書に関しては、カネに糸目をつけず安全な方法を選択した。5890ペソ(約1万5000円)で日本語サポートがついたマニラの業者を予約。だが、日本出国時の陰性証明書については節約したいと考え、悩みに悩み抜き、結局、「木下グループ」の無料検査を選択した。

「木下グループで最も不安だったのは、検査日は明記されているのですが、検査時間が書かれていないこと。アメリカ政府は1日前でOKなんですが、フィリピン政府は24時間以内とされているんです。一抹の不安がありましたが、最後はなんとかなるだろうと考えました」

 これらの書類は、すべてフィリピン政府が求めるアプリをダウンロードし、アップロードしておく必要がある。念の為、プリントアウトもして、いざ出発。だが、成田空港に到着すると、カウンター前には長蛇の列が……。

「航空会社の職員が書類に不備がないかチェックするのに時間がかかるのです。2時間前で余裕だろうと思っていましたが、ギリギリでした。これから行かれる方は、3時間前を心がけておいたほうがいいと思います」

すべてを忘れます

 ニノイ・アキノ国際空港に到着後は、入国審査前に、別室で書類に不備がないかのチェックを受けた。1時間くらい待たされたが、結局、木下グループの陰性証明書は問題視されず、無事、入国できたという。

「入国審査を抜け、南国の温かな風を感じた時の開放感はたまらなかった。すべてを忘れて遊び倒すんだ、とタクシー乗り場に向かって走り出しました」

 だが、忘れてはならないのは、数日後にやってくる帰国に向けての準備である。クリニックに赴きPCR検査を受けるだけでなく、翌日、わざわざ結果を取りに行かねばならないという。

 万一、陽性が出てしまったら即隔離となり、帰国はお預けだ。「その時はその時で考えようと思います」と語る吉永さん。果たして、無事帰国できるのか。

デイリー新潮編集部