かつては1%を切っていた男性の育児休業(育休)取得率も最近では12%(令和2年度)を超えるようになってきた。わが国でもイクメンが定着してきたと思ったら、まだ全然足りないのだという。

 小池百合子東京都知事が育休に代わる愛称を「育業」に決めたと発表したのは6月29日のことである。

 事務方である東京都子供政策連携室の担当者が言う。

「今年の4月に改正育児・介護休業法の施行が始まり、育児休業をスムーズに取得できるようになりました。都でも後押しするべく愛称を提案することになったのです。4月末から愛称を公募し、8825件が集まりました。ここから既に商標登録されているものなどを除いて、選考委員の方に選んでいただいたわけです」

 委員の面子はタレントの杉浦太陽氏や元代議士の金子恵美氏、連合の芳野友子氏ら9人。愛称は最終的に八つにまで絞られ、1人が別の案を支持しただけで、残り全員が「育業」を選んだという。お披露目の当日、小池都知事は育業と書かれたボードを掲げると、

「“育休を取らせてください”と謝るのではなく、“育業してきます!”と胸を張って言える社会にしていければ」

 そう言ってニッコリ。都では合わせて、男性の育休取得率50%以上の都内企業を「パパ育業促進企業」に登録、タツノオトシゴを模したマークを交付する制度を開始。中小企業制度融資も受けやすくする。

育休という言葉が既に定着しているのに…

 どこか出来レースのような香りも漂ってくるが、事あるごとにキャッチフレーズをぶちあげてきた小池都知事の得意技ともいえる。

 気になるのは、この「育業」がどこまで都民に浸透するかだ。

 元都庁幹部の澤章氏曰く、

「小池さんは自分がクールビズや3密という言葉をはやらせてきたのが自慢なのです。一方で不発だったことも少なくありません。最近も夏場の電力使用を抑えるため『HTT』(減らす、創る、蓄(た)める)というキャッチフレーズを発表しましたが受けはイマイチでした。育休という言葉はすでに定着しており、育児休業も法律用語になっているので、後から“育業”と付けてもはやるとは思えません」

 案の定、この発表がニュースになったのは翌日ぐらいで、その後はさっぱり聞こえてこず。年末の流行語大賞は望むべくもない。

「週刊新潮」2022年7月14日号 掲載