新しい生活様式としての「ウィズコロナ」が提唱される一方、皇室では今も“足踏み”が続いている。先ごろ、天皇皇后両陛下が主催される秋の園遊会は中止が決定、また今夏のご静養も取りやめとなった。このままでは、皇室が国民からいっそう遠ざかってしまいかねない。

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 毎回およそ2500人の各界功績者らを招き、春と秋に赤坂御苑で催されてきた園遊会。が、最後の開催は平成30(2018)年秋にまで遡る。令和の初年度は、春秋いずれも御代替わりの儀式と重なって開催が見送られ、翌年からはコロナ禍によって取りやめが続いているのだ。

「第7波が収束する気配は見えませんが、現在のところ行動制限は伴っていない。宮内庁は今回、開催の可能性を検討してきたものの、実現には至りませんでした」

 とは、宮内庁担当記者。中止の発表は、8月10日になされていた。

「12日に行われた定例会見で、西村泰彦長官は『現在の感染状況では開催はきわめて難しい』と前置きし、『飲食をやめたり人数を絞ったりすれば、華やかな場である園遊会の意味がない』『感染が拡大している中、あのような行事を皇室が主催されるのはいかがか』などと、中止の理由を強調していました」(同)

“皇室がコロナの感染源になってはならない”という思い

 むろん、こうした決定は役所だけで下せるものではない。最終的には会の主催者であられる陛下のご意思によるわけだが、

「陛下には何をおいても、“皇室がコロナの感染源になってはならない”という強い思いがあります。すでに99歳の三笠宮妃百合子さまをはじめ、複数の皇族方が感染されている。また宮内庁でも、先日はナンバー2の次長の感染が判明するなど、職員の感染者数はのべ100人を超えています。陛下はこれらの状況に鑑み、大規模な催しは困難だと判断なさったわけです」(同)

 これと並行し、陛下はもう一つ重要な決定をされていた。

「コロナ前は恒例となっていた夏のご静養です。3年ぶりに行動制限のない夏休みとなり、両陛下と愛子さまが8月下旬に栃木県の那須御用邸でお休みになる計画が進んでいました。ご一家のご健康を考え、側近らはこぞって準備を進めており、同行者の人数を絞った上でお車での移動が予定されていたのですが、こちらも陛下のご意向を受け、取りやめとなりました」(同)

幻となった令和初の園遊会

 コロナ禍が両陛下のご活動に不具合を生じさせているのは明らかで、実際に、東京以外への「リアル」な行幸啓は2020年1月以来なされておらず、この間はもっぱらオンラインを活用されてきた。一方で、両陛下のご活動が停滞している間隙(かんげき)を縫うかのように秋篠宮家は、4月から地方ご訪問を再開。ご夫妻や佳子さまは泊まりがけのご公務もなさってきたのだが、

「陛下が万が一コロナに感染なさった場合、秋篠宮ご夫妻をはじめとする皇族方と比べ、その影響は甚大になります」

 そう指摘するのは、皇室制度に詳しい小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授。

「陛下が地方に行幸なさるとなれば、警備や随従する職員の数だけでなく、現地で出迎える市民の数も、他の皇族方の時よりはるかに多くなる。こうした点を考慮され、お出ましを控えてこられたのでしょう。ただし、オンラインを通じて国民に寄り添おうとされるのは大切ですが、実際に現地ご訪問がなされなければ、等身大のお姿は伝わりにくい。存在感が希薄になれば、国民から敬愛の念も生じにくくなってしまいます」

 そんな中で令和初の園遊会、また3年ぶりのご静養は幻となってしまったのである。

リモート受講徹底の背景

 さる宮内庁関係者が言う。

「お立場を考えれば致し方ないことではありますが、陛下は一昨年以来、ことのほかコロナウイルスを警戒なさっているように拝察いたします」

 それは例えば、愛子さまの学生生活にも少なからず影響を及ぼしているといい、

「学習院大学3年生となられた愛子さまは、ご入学以来、一度も対面授業を受けられていません。3月に行われたご成年の会見では『感染防止の観点から』通学はされず、すべての科目をオンラインで受講されていると話しておられた。ご自身の登校により両陛下が感染されるようなことがあってはならないとお考えで、登校なさりたいお気持ちとの間で揺れながらのご判断でした」

 会見で仰っていたように、学習院大では対面授業を再開している教科について、対面とオンライン両方の受講が可能となるハイブリッド方式が採られている。ご入学から2年余り、ご学友とのふれ合いがかなわないのはさぞお辛いだろうが、

「愛子さまは、このご方針を決してお一人で決められたわけではありません。リモート受講を徹底されるそのお姿には、陛下の強いご懸念が反映されています。万が一の時には、ご一家にとどまらずご高齢の上皇ご夫妻にもリスクが及びかねない。そうした点まで陛下はお考えを巡らしておられるのです」(同)

「かなり慎重」

 とはいえ、ご一家と国民とのふれ合いはすっかり遠のいてしまった。コロナ禍にあって3回目の夏を迎え、平成から継承されてきた「国民に寄り添う皇室」「開かれた皇室」のあり方が危ぶまれているのは否めない。

 皇室制度に詳しい名古屋大学大学院の河西秀哉准教授が言う。

「感染者数が高止まりしている状況下で、完全な対策を講じることは困難です。今回の那須御用邸でのご静養については、普段の皇居での生活以上に側近の人々が密になったり、長時間にわたって同じ部屋にいることで接触する可能性があります。もしそこで感染者が出た場合、地域医療に迷惑をかけてしまうことになりかねないため、陛下はお出ましを控えられたのでしょう」

 それでも、

「陛下は、かなり慎重だと思います。かりにご自身が感染されて手厚い医療が提供されたとしても、公務などによる結果であり、皇室への批判が大きなうねりとなるとは思えません。コロナに対しての経験を重ねてきて、国内でも一定数の人が罹っている現在において、“お二人(両陛下)が悪い”などという声は上がらないのではないでしょうか」

「工夫をしつつ人々と直に交流できれば…」

 ご静養がかなったとしても、現地でのお過ごしようはイレギュラーな形となる可能性があったのだが、

「陛下が“国民と苦楽をともにする”という象徴の務めを果たすには、地方の人々と触れ合うことも重要です。オンライン交流では、リアルに及ばないこともある。その意味でも御用邸へ行かれ、工夫をしつつ人々と直に交流できればよかったと思います」(同)

 さらに、令和の代で一度も実現していない園遊会についても、

「開催が難しいことはわかります。それでも参加人数を絞るなど、もう少し検討してもよかったと思います。というのも中止の決定は、行動制限もなく、まさに世間が『ウィズコロナ』に向けて動き出しているタイミング。そのような状況下で日本国の象徴である陛下が開催を取りやめられたとなれば、その整合性を気にする人はいるかと思います。これを機に、今後のご公務全体のなかで園遊会のあり方自体をどうするのか、考えるべきかもしれません」(同)

英王室の創意工夫

 海外の王室に詳しい関東学院大学の君塚直隆教授が言う。

「英国では園遊会が年に4回催され、うち3回はバッキンガム宮殿が会場となり、毎回8千人以上が招かれます。今年も5月に開かれ、エリザベス女王は欠席しましたが、チャールズ皇太子以下、王室ファミリーはマスクを着けずに参加していました」

 6月には、女王の在位70年を記念する「プラチナ・ジュビリー」が盛大に催されたのも記憶に新しい。

「英国の園遊会の参加者は、日本のように政財官界やスポーツ界の功績者だけでなく、各地方の首長が推薦した一般人も多い。彼らは、地域のために長く貢献してきたボランティアの人たちなどです。今後は日本でも多様な分野から招待し、回数も増やせばいいのではないでしょうか。国民と皇室が近づく手立てはいくらでもあると思います」

 その上で、こう提唱するのだ。

「皇室もSNSやユーチューブを活用すべきです。エリザベス女王は1952年の即位以来、ラジオやテレビなどでメッセージを発信し続けてきました。王室側もまた、メディアから映像を借りるなど発信に趣向を凝らしており、この手法を北欧やベネルクス三国の王室も倣(なら)ってきたのです」

「事実上、全国民が観た」

 圧巻は20年4月だった。

「コロナのまん延下、女王はBBCのニュースで“必ずまた皆会える”と国民に団結を訴えました。その放送はユーチューブにも接続され、2400万人がリアルタイムで視聴し、オンデマンドでは事実上、全国民が観たといわれています」

 ところが宮内庁といえば、

「陛下の新年のメッセージなどをホームページにアップしていますが、単なるアリバイ作りとしか思えません。役所ではなく、皇室のHPを新たに設けて発信しなければ全世代に向けたメッセージにはならない。あらゆる点で宮内庁は出遅れており、陛下が国民の前にお出ましできない状況について、本当に深刻に感じているのか大いに疑問です」

 創意工夫のない役所の不作為で「開かれた皇室」が閉じられかねないのだ。

「週刊新潮」2022年9月1日号 掲載