本来であれば大いなる前進、喜ばしいニュースに違いない。先ごろ宮内庁は、SNSを用いた情報発信を来年度から検討すると発表した。が、ただちに皇室が身近になるかといえば、さにあらず。当面は「誤った情報」の是正が主となる見通しなのだが、はたして前途は……。

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 その一報がもたらされたのは、先月30日のことだった。

「宮内庁ではこの日、来年度予算案の概算要求についての説明が行われました。出席した皇室経済主管と秘書課長によれば、新設の参事官ポスト1人、広報の専門職員2人、計3人の増員を要求したとのことで、今後は宮内庁ホームページ(HP)の改訂とともにSNS活用の検討を始めるといい、積極的に情報発信を進めていくと明かしたのです」(宮内庁担当記者)

表向きは秋篠宮様のご意向とは無関係としているが…

 新ツール活用の検討は、早ければ来年度初めから進められることになるのだが、振り返れば昨年秋、宮内庁は眞子さんが一連の結婚報道によって「複雑性PTSD」を発症したと発表していた。その原因として「週刊誌やSNSなどでの誹謗中傷」を挙げ、11月のお誕生日会見で秋篠宮さまは、この件に触れながら、

〈反論を出す場合には一定の基準を設け、それを超えた時には反論するなど、宮内庁と相談しながら考えていくことは必要〉

 などと言明。これを受けて翌月、西村泰彦・宮内庁長官も会見で、

〈(一定の基準については)秋篠宮殿下とご相談しながら研究を続けていきたい〉

 そう述べていたのである。

「宮内庁は、HP改訂を含めた今回の“広報強化”について、表向きは秋篠宮さまのご意向とは無関係であるとし、あくまで外部からアドバイスを受けたとしています。ですが、これまで度々SNS活用の重要性が叫ばれていたにもかかわらず、全く動こうとせず、今回ようやく重い腰を上げた背景に眞子さんの騒動があったのは明らかです」(同)

ネガティブなSNSが受け入れられる?

 いわば秋篠宮さまから出された“宿題”に応えた格好なのだ。さる皇室ジャーナリストも、こう指摘する。

「発信の場を充実されるのは大いに結構だと思います。ただし、その趣旨が“誤った情報が広まっている中で、正しい情報を発信していく”というのは、大きくずれている。本来であれば皇室の魅力を国民に伝える場であるところ、こうしたネガティブなSNSが、広く受け入れられるとは思えません」

 これまで宮内庁のHPには「皇室関連報道について」との項目があり、そこには“あまりにも事実と異なる報道がなされたり、更にはその誤った報道を前提として議論が展開されているような場合には、必要に応じ宮内庁として、正確な事実関係を指摘することといたしました”と記されている。もっとも、

「宮内庁がこの欄で報道内容について見解を打ち出すにあたり、記事の対象となった皇族方を差し置いて行うことはできません。その上で、ある記事に対してどのような意見を述べ、あるいは訂正を求めていくかについては、平成の時代から新聞・テレビだけでなく週刊誌についてもくまなく目を通してこられた美智子さまが、もっぱら所管なさっているといわれています」(同)

誤りを正す作業は大事だが…

 実際にこの欄で論(あげつら)われた報道をみると、上皇后さまに関する記述が多く登場する。むろんご自身が直に発言なさるわけにはいかず、側近がご意向を酌んで“正確な事実関係を指摘”する形をとっているのだが、

「今回のSNS活用は、ともすればこの“美智子さまのコーナー”の機能拡大で終わってしまうのでは、と危惧しています。誤りを正す作業はむろん大事ですが、せっかく情報発信を始めるのだから、皇室の方々のお過ごしよう、ご公務でのオフショットなどを紹介すれば国民の理解はいっそう深まるはず。それが報道への“対抗措置”強化に終始するのであれば、国民は鼻白むばかりです」(同)

 というのだ。

双方向ならば…

 皇室制度に詳しい河西秀哉・名古屋大学大学院准教授は、

「眞子さんと小室圭さんとの結婚では、ネットなどで誹謗中傷もありました。結婚問題は国民の反発を招いたわけですが、もし日頃から情報発信がなされていれば、お二人への理解が得られた可能性があり、世間の反応は違ったものになったのではないでしょうか」

 としながら、

「“誤った情報をただす”といっても、実際には一つ一つの記事やネット上の情報について“これは違う”といった細かい反論はできないでしょう。宮内庁としてより積極的に『公式情報』を発信していくことになるのだろうと思います」

 が、これでは皇室の魅力も伝わるまい。公的セクター広報論が専門の北村倫夫・北海道大学大学院特任教授が言う。

「そもそも現在、宮内庁という行政機関のHP内に皇室のサイトがあることに違和感を覚えます。情報発信の本来の目的は、国民から愛される皇室を目指すこと。それには国民とより良い関係を築く『広報』が必要です。皇室の広報には発信だけでなく“聴く”ことも求められるはずで、国民と双方向のコミュニケーションができれば理想的です」

「個人のアカウントが望ましい」

 これが宮内庁のHPとなると、

「行政機関の広報となってしまい、皇室と国民との間に心理的距離が生じかねません。第一、皇室の『公』はカバーできても『私』の発信は限られてしまう。本来であれば皇室のHPから、国民が親近感を抱けるよう必要に応じて『私』に関わる情報も発信すべきです」

 今回の動きについても、

「宮内庁がSNSアカウントを持って発信しても、総務課などの組織名でなされた場合には組織対一国民という構図になり、心の通ったコミュニケーションは望めないでしょう。初めは宮家ごとでもよいので、最終的には皇族方が個人のアカウントをお持ちになるのが望ましいところです」

 その際には、

「ツイッターやインスタグラムは匿名性の高いサービスですが、フェイスブックは利用者の実名登録が原則となっており、“誹謗中傷”も少ないので始めやすいでしょう。もし秋篠宮さまがご自身のアカウントをお持ちでしたら、あるいは父親としてのお気持ちを表現できていたかもしれません」

 秋篠宮さまのみならず、国民と双方向のやり取りとなれば、今後のご活動が注目される佳子さまもまた大いに話題を呼ぶことだろう。もっとも、

「佳子さまはこれまで一貫してメディアへの不信感をあらわになさってきました。眞子さんの騒動では佳子さまにも批判の目が向けられたのは記憶に新しい。ご自身は、むやみに日々のお過ごしようを発信なされば、またも“炎上”を招きかねないことなど先刻ご承知です。仮にご自身が発信なさるとしても、ご公務に関する当たり障りのないテーマにとどまることでしょう」(前出・皇室ジャーナリスト)

「週刊新潮」2022年9月15日号 掲載