カタギとなったナンバー2
山口組の分裂から7年余。2022年は例年以上にヤクザ界に大きな動きがあった1年だった。元山口組系義竜会会長の竹垣悟氏(現在は暴力団組員の更生を支援するNPO法人「五仁會」を主宰)に2022年を振り返りつつ、2023年を展望してもらった。
「2022年は激動という言葉がしっくりくる、目まぐるしい1年でした。そもそも、親分に弓を引いた神戸山口組の設立があってはならないことであり、掟に反することでしたから、組織を存続しようとすればそれだけ無理が出てくる。あり得ないことが頻発したのは、その結果とも言えるわけです」
と、竹垣氏。あり得ないことの代表が、神戸山口組の寺岡修若頭(侠友会会長)の脱退、その後の「3社連合」結成、そして入江禎副組長(2代目宅見組組長)の脱退ということになるだろう。
「寺岡前若頭は神戸山口組の解散論を主導してきましたが、井上邦雄組長への説得が不調に終わり、自身は組織を抜けることに。年末には6代目山口組の高山清司若頭に直接詫びを入れ、本人はカタギとなりました」(同)
3社連合→2社連合
寺岡前若頭の脱退後、今度は入江副組長がリードする形で、神戸山口組と池田組(池田孝志組長)とが「五分の親戚」、すなわち「対等の連合」を結ぶことになった。池田組は神戸山口組の結成に参画していたが、その後に脱退して独立組織となっていた。
入江副組長と池田組長とはこの間も緊密な関係を続けてきた。その一方で、池田組と絆會(織田絆誠代表)は運命共同体の間柄にあることから、3社の面々が積極的に交流し、同盟のような結びつきに発展していく可能性を秘めている――とされた。
織田代表もかつては井上組長の出身母体である山健組の副組長を務めるなど、その最側近とされたが、神戸山口組の振舞いについて口を極めて痛烈批判して脱退、独立組織となっていた。
もっとも、他ならぬ井上組長の口から、「神戸山口組は池田組としか連合していない。織田との間の溝は埋めがたい」との言葉が漏れ伝わっていた。連合は3社ではなく2社というわけだ。
意気軒高な井上組長
「神戸山口組は織田代表許すまじということで、2017年9月にヒットマンを放ちました。その結果、織田代表のボディガード役が射殺されましたねそういった経緯があるため、神戸山口組と絆會との関係修復は不可能だというのがもっぱらの見方でしたが、今年のボディガードの命日供養に、神戸山口組の最高幹部も弔問に訪れました」(同)
自身が狙われ、ボディガードを亡くした織田代表にとっては、この最高幹部らの弔問が今後のために最低限必要な儀式だった。しかし、この“セレモニー”が井上組長の逆鱗に触れ、結果として、3社連合の中核を担った神戸山口組の入江副組長が脱退することになったわけだ。
「6代目側はこれまで同様かそれ以上に、抗争終結のために”あの手この手”を繰り出していくでしょう。一方で井上組長は依然として”最後の1人になっても降参しない”と意気軒高の様子。そこまで追い詰めるのは6代目側にとっても、なかなかハードルが高いことだと思います」(同)
特定危険指定への危惧
6代目側が神戸側の幹部を襲撃し続ければ警察も黙っていない。ETCパーソナルカードを巡る詐欺事件として高山若頭・竹内照明若頭補佐のドライバーらが逮捕されたのは、その最たる例だとされている。
「事件としては不起訴になりましたが、まさに見せしめのような事件でした。6代目側としても抗争状態を一刻も早く終結させたいという名目はあるものの、その流れの中で襲撃が繰り返されるなら、警察当局から『特定危険指定』され、工藤會並みの締め付けが待っている可能性があります」(同)
差し当たって、本部である篠原本家では行事が執り行えず、本部機能は分散されている。特定危険指定されると、そのあたりの解消も水泡に帰すことになる。
他方、2023年には別の問題も注目が増すという。
「2023年1月で6代目の司忍組長は81歳になります。これまでもそうでしたが、さらに後継者問題がクローズアップされることでしょう」(同)
我慢比べ、という言葉が似合いそうな1年となりそうだ。
デイリー新潮編集部